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七月二十九日、未明のこと
家の一番近くのコンビニに牛乳はなかった。二番目に近いところへ行くと、あった。店の前に自転車を止めて誘蛾灯が絹を裂くような音を立てていた。睡眠の質を上げてくれる飲み物とあたたかなアイマスクを買うそばから欠伸が出る。自転車をこぎながら飲む牛乳、ワッフルの味なんてアパートにつくころには忘れている。誘蛾灯が絹を裂く音が、いや違う裂かれていたのは体だった。太陽に消される前にキッチンの消し忘れた明かりが僕たち
もっとみる【掌編小説】佐々君のとんぼ
浮くみたいにして空へ昇っていった。
遠くで羽ばたく鳥の羽ばたきが気だるげなのは暑さのためだろうか。かろやかに上がったものは落ちる時もことも無げで、それでいて、もう二度とは上がらない。
佐々君は緑のリュックを取りげて、リュックからペンケースを取り出して、ペンケースからナイフを取り出して、鈍く光る刃を露わにした。そしてガリガリ君の棒に刃を当てると割くように細い木片を切りだし、二本の指につ