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アメリカのテック企業で契約社員として働いてみた
初めまして。きなりこと申します。
今日は、アメリカのテック企業で契約社員として働いていることについて書いてみようと思います。
契約社員になったきっかけ
2021年にアメリカに来る前は、同じアメリカテック企業の日本支社で正社員として働いていました。
家族の都合で、アメリカに来ることになり、アメリカ本社で引き続き働けないかを上司に相談したところ、本社の契約社員として、2ヶ月間、日本の業務をサポートする、ということになりました。
私としては、アメリカですぐに仕事を探せるかわからなかったので、とりあえずの収入源が確保されてホッとしました。
この選択が、後々にまで、こんなに影響するとはこの時は思いませんでした。
アメリカに来るための引越しや娘の学校のことなどで、すでにいっぱいいっぱいになっていたので、仕事があるだけありがたい、という気持ちでした。
また、そのために資格をとったりして準備していたつもりだったので、契約が切れても、何か仕事は見つかるだろう、と楽観的な気持ちもありました。
2ヶ月契約終了、新たに1年契約
日本の業務サポートの2ヶ月はあっという間に過ぎました。
年末も近くなり、さて、この後どうしようかと思い、日本にいたときに声をかけてくれた他のテック企業の方に声をかけて、こちらで面接をやってもらったりしたのですが、なかなか進まず。
社内の他の部署に応募してみたりしましたが、面接までも行かず。ダメもとで、他の部署に「人を探していたら教えてほしい」と声をかけたところ、たまたま「契約社員で人を取ろうと思っている」ということで、面談を設定してもらい、そこでのポジションを滑り込みで得ることができました。
とりあえず、新たに1年契約となりました。
この時、アメリカで仕事を探すのは結構難しいのかもしれない・・・と気づきました。
私は日本では、Fランだけど一応4年制大学卒、留学経験もあり英語も業務で使う分にはさほど困らない、ある程度一定したキャリアも途切れなくあり、「やりたい仕事」で「お給料アップ」もそれなりに叶えてきた自負がありました。
それがアメリカでは何の役にも立たない、ということを現実として突きつけられました。
契約社員と正社員の違い
さて、契約社員としてアメリカ本社で働き始め、仕事もだんだん覚えていくと、だんだんと契約社員と正社員との違いに気づいてきました。それは、知らないで済んでいたら良かった、と思うようなことばかりでした。
アメリカのテック企業なので、正社員向けの福利厚生は充実している方だと思います。
特に、日本支社にいたときの福利厚生は、他のどの外資系企業で働いた時よりも充実していると感じました。
契約社員になり、それがすべて無くなりました。特に、福利厚生が充実している会社で、かつ元正社員としてそれを経験していたからこそ、これが全くなくなったことはすごく悔しかったです。
その上、契約社員は有給休暇がありません。祝日で休みだと、手取りが減るのです。正社員のみんなが連休だー!と嬉しそうなのを、いいな、、、と思いながら見ていました。新卒で派遣社員として働いたときのことを思い出しました。
病欠だけは、sick leaveというのがあり、有給です。
ただし、年間40時間以上は取ることができません。(州ごとの法律によりますが)
それを知らず、年末までにすでに40時間を使い切っていた私は、年末に病院の予約や体調を崩して休んだ分、$500程度もらえると思っていた分が入ってきませんでした。
意外に、1年で40時間というのはあっという間です。
あと、精神的に堪えたのは、正社員しか呼ばれないミーティングや、正社員にしか送られてこないメールがあることでした。
会社の業績を発表するミーティングには契約社員は呼んでもらえません。
メールもリーダーによっては正社員にしか送らないものも結構ありました。
同じチームで同じように仕事をしているのに、私だけが知らないこともあり、悲しい思いをしました。
自尊心が
これらの外的要素によって、だんだんと私の自尊心が削られていく気がしました。
「絶対正社員になってやる!」ということだけを目標に、与えられた仕事は質もスピードも100%でこなし、自分から手を上げてプロジェクトに参加したりしました。
契約社員はゴール設定もありません。自分で何かしら支えになるものが欲しかったのだと思います。
上司にも、「正社員になりたいから、機会があったら教えてほしい」と1on1で伝えていました。
契約更新
1年が経とうとする頃、上司から話がありました。
「正社員にすることは今はできないけれど、契約を1年延長する承認がおりた」
その頃私は、契約が終了となって仕事がなくなったらどうしようと、半年間くらいかけて、いろいろなところにLinkedInなどから応募していました。
リクルーターからも、連絡があったりして、面接を受けたりもしていました。
しかし、自分から応募したところも、リクルーターから連絡が来たところも、合わせて10社以上ありましたが、2次面接まで漕ぎ着けたのは1社のみで、そこは自分から断ってしまいました。
すでに背水の陣でした。
そんな折に、契約延長の話があったのです。
それなのに、仕事を失わないで済む、というホッとした気持ちはほんの少しで、正社員になれない悔しさでかなり落ち込みました。
こんなに頑張っているのに、何がいけないんだろう。
上司は私の仕事ぶりを認めてくれている。
それはうわべだけなのかな?
私がフルリモートだから?
おそらく、全部そうだったのでしょう。
そんなわけで、2023年、契約社員としての2年目がスタートしました。
上がらないモチベーション
そもそも、あまりテックの仕事に自分の興味はありませんでした。
ましてや、所属はファイナンス。
それも、興味もない上、不得意な分野でした。
ではなんでその仕事をやっていたか?生活のため、としか言いようがありません。私が家族の大黒柱だったからです。
興味がない仕事でも、それなりに自分のスキルが活かせたりする業務はあります。そこでなんとかモチベーションを保っていました。
あと一つ、上司から学べることがとても多くあったことも支えになりました。とにかく、コミュニケーションがずば抜けてうまいのです。
アメリカでの仕事のやり方は、同じ会社でも、日本支社にいた時とだいぶ変わりました。
それについては、また別のnoteに書いてみたいと思います。
正社員になれない不満が募り募っていた頃、夫の仕事が変わったり、私も副業にチャレンジしてみたり、少しずつ状況が変わってきました。
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契約社員の良さに気づく
カリフォルニア州の法律か何かで、この会社での契約社員は最長2年まで、と決まっています。
そのため、2年目の終わりを目前にして、さて、どうしよう、と思い始めました。
他の会社に応募しても、採用まで行く自信は全くありませんでした。
少し前にチャレンジした副業も、自分に全く向いていないことに気づきました。
自尊心は地の底に落ち、自分が好きでない仕事を続けるのも限界が来ていました。
わらをもつかむ思いで、自己理解プログラムをやってみることにしました。
そうしたら、少しずつ、自分の思い込みや長所や短所のパターンが見えてきました。
だんだんと正社員に対する呪いみたいのが解けて来て、「実は契約社員も悪くないのではないか?」という思いが湧いて来ました。
幸い、夫が仕事を代わったおかげで、夫の仕事の福利厚生がよく、健康保険もカバーしてもらえます。
副業でチャレンジしたファイナンスの仕事のおかげで、リタイアメントに関しても少し知識がつき、自分でなんとかできる気がして来ました。
そして、契約社員のいいところは、手取り給与が良い、ということに気づき、その手取りで自分でRoth IRAにお金を入れて増やしたりしていけばそれでもいいや、と思えるようになりました。
実はこの頃、また契約を半年延長してくれていました。
上司が、「どうしても正社員にしたいから、あと半年欲しい」と言ってくれていました。ありがたい話です。でも、期待すると叶わなかった時に落ち込むので、さほどもう期待していませんでした。
契約社員でもいいや、この延長が終わったら、日本に長めに一時帰国して、国内を旅行したり、ゆっくりしよう!と決めました。
その後、また契約社員でどこか探すか、自己理解プログラムで見つけた「本当にやりたいこと」に向けて動き出そう、と思っていました。
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ついにこの時がきた
もうネガティブに引っ張られることがなくなり、だいぶ気持ちが楽になりました。
そんな矢先に、上司との1on1で言われました。
「やっと、社外から人をとる分の正社員のhead countが取れたから、応募してほしい」
2年以上、喉から手が出るほど欲しかった正社員の座が、ようやくおとづれたのです。
ただ、自動的に正社員に昇格、というわけではなく、社外的に募集を出し、そこに応募する形で選考される、というシナリオのようでした。
こうすると、私以外の人も応募してくることになり、私が正社員になる確率は100%ではありませんが、私はすでにその職務で2年以上働いているので、有利ではあります。
こんなにも嬉しいはずのニュースでしたが、どうみても、私より、上司の方が嬉しそうでした。
この先どうしようかな
まだ選考の途中なので、私が正社員になれたかどうかは、わかりません。
でも、正直、この仕事は向いていないし、興味もないし、続けるのはもうしんどいです。
正社員へのこだわりもなくなった今、本当にこの仕事をしたい人に明け渡した方が良いとさえ思っています。
そもそも、今の会社で契約社員になれたのだって、たまたま私が日本支社で働いていたからで、契約社員になることすら、アメリカでは、私のような経歴では難しいと思います。特に、私のやっているような、専門職ではないオフィスワークでは。
そのことを痛いほど痛感しました。
アメリカの学位か、MBAなどを持っていない限り、狭き門だと思いました。
でも、アメリカ企業の本社で、アメリカ人に囲まれて、いろんな人と働けたことは、私にとってとても貴重な経験だし、アメリカに住む中で、アメリカのことを知るにはとても恵まれた環境でした。
毎日仕事があるだけでも、ありがたいことです。
こんなふうに思えるようになって、自分の思い込みや先入観にも気づきました。
この先はまだ未定ですが、今、このように考えられるようになって、本当に良かったなと思っています。