Krystian Zimermanの凄さがわかった
SparkyLinux 6.7 on MacBook Pro after Retina
Complete Piano Concertos : Krystian Zimerman(P)Simon Rattle / London Symphony Orchestra (ドイツグラモフォン)より
ピアニストKrystianl Zimerman。1956年ポーランド生まれ、1975年の第9回ショパンコンクールの優勝者です。
これまで彼の録音された音源を聴いてきて、どうやっても彼の良さが理解できませんでした。聴いていて何だか面白くないんです、つまらないんです。タッチの繊細さ、曲想の表現などがあまり感じとられず、聴いていたら眠たくなってしまうのです。しかし、彼の演奏の素晴らしさは世の認めるところです。いわば常識。これまでわたしは何をどうやってみてもこのギャップを埋めることができていませんでした。
CDを含め彼の音源はいつくか所有しております。一度だけ、彼の演奏するラフマニノフピアノ協奏曲第2番を聴いて、迫力があるな と感じたこともありました。しかし、それはかなり以前、通常のCDプレーヤーを使って我が家のオーディオセットでかなり音量を上げて再生して聴いた時の話です。何となく聞き流しているとどうやっても眠たくなってしまいます。
最近、我が家のオーディオセットをSparkyLinuxと2017年式のMacBook Proで再生して聴き、音場の広がりの素晴らしさに感動したことは先にも述べた通りです。それでこのシステムは今やわたしのスタンダード設定となっています。
デスクトップ環境でこのSparkyLinuxで聴きますと、中音域が張り出して主旋律がよく聞こえるので音楽を面白く鑑賞することができています。これを今度は音が硬めである2014年式Retina MacBook Proを使って聴いてみました。すると2017年式のMacBook Proと似た傾向の音となり、音場の広がりと余韻が素晴らしく聞こえるのです。そこで今現在、この
MacBook Pro Retina 2014でSparkyLinux 6.7
システムでいろいろな音源を聴いてみております。
そうしますとこれまでXubuntuCoreでは聴き取れなかった微妙な音も聞こえてくることがあります。例えば指揮者の唸り声とか床の靴音とか。これで聴くと確かに音自体は多少キンキンして微妙な感じもしなくはないですが、でもこれはこれでとても面白いんです。
ならばここは一丁、これまで面白いと感じたことのなかったZimermanの演奏を聴いてみようとチャレンジしてみました。
最初に聴いたのはこの音源です。Qobuzを使って聴きました。
Debussy Preludes (Live) (1993) by Krystian Zimermanmです。1991年、ドイツのKassel City Hallで録音されたとあります。ドイツグラモフォンからの発売です。「Live」というので生演奏なのでしょうが、会場の雑音はほとんど聞こえません。
これをSparkyLinuxで聴きますと透明感と音場感が目の前にグッと広がります。ごく小さな音もしっかり聞こえてきます。XubuntuCore Audioよりも少しスッキリ感があります。ビールで言えばSparkyLinux Audioはアサヒスーパードライ、XubuntuCore Audioはキリンラガーといったところでしょうか。演奏している彼の唸り声も結構聞こえてきました。こんなに唸り声を上げているなんてこれまでまったく気づきませんでした。
音源再生をスタート。初音の響きが鳴り響きます。前奏曲第一巻初曲、Danseuses(デルフィの舞姫たち)です。録音されている音が全般に小さい。しっかりと音量を上げます。リズムはとてもしっかりしていて一定リズムの中に揺らぎをもって演奏に感情を込めているのがわかります。しかし、決してリズムを強調して引っ張ったりはしません。敢えて言えばほんの少し機械的にも聞こえます。この辺りが聴いた時になんとなく少し物足りなく感じる要因なのかもしれません。全てが正確です。計算し尽くされています。ピアノのキーを叩いて出てきた音の一つ一つが、彼の演奏する曲のリズムの「頭」の部分できっちりと寸分違わずタッチされます。録音されている音全般が小さいのでさらに音量を上げます。
バックグラウンドノイズがほぼゼロに近いため聴きやすいようにと音量を上げたSparkyLinuxではピアノの音の響きが耳の奥を刺激します。時に頭全体に音が響きます。使っているピアノの響きも素晴らしいのでしょう。しかしそれ以上に感じたのは彼のタッチの鋭さです。鋭いタッチによって強い響きが出ているのがよくわかります。透明な空間の中でちょっと金属的とも言える、しかし心地よい響きです。印象としては全体の線がやや細めにさえ感じられます。しかし、実際には決して細い音などではなく、鋭いタッチがゆえであることがわかりました。そして全ての音は音量とタッチのバランスがコントロールされています。明らかなミスタッチなどわたしには全くわかりません。透明な広い空間の中で柔らかくそして鋭く響くピアノの音と響き。もちろんペダルを使って響きを止める瞬間もちゃんとリズムです。
そして遂にわかりました。やっとわかりました。いや、わかった気になりました、彼の本当の素晴らしさが。
それは上記のような超絶技巧に加え、ピアノをその名の由来のごとく「ピアノフォルテ」として、これ以上は得られないであろうほどに強弱をつけることのできる彼のタッチです。これほど響きを伴ったピアノとフォルテの音量の強さに差が出せるのは彼しかいないと思いました。フォルテがさらに強くなるフォルテッシモになりますと正直、耳の奥が痛くさえ感じます。ものすごい音量と響きです。でも同じヴォリュームの位置で第8曲、亜麻色の髪の乙女はとちょうどいい音の大きさです。
ピアノの語源である「ピアノフォルテ」をまさにピアノとフォルテで弾くことのできる正確無比な鋭い、そして時に柔らかいタッチと正確に頭を打つ自身のリズム
このことをSparkyLinux Audio on MacBook Pro after Retinaで聴き、それを初めて感じ取ることができました。
ここで別のピアニストの音を聴くとなんだか物足りなく感じたのはわたしだけでしょうか。
こんなふうに音源に新たな発見をすることのできるSparkyLinux Audio on MacBook Pro after Retina。皆様もおひとついかがでしょう。お手持ちの音源にきっと数多くの新発見があると思います。
2024/5/23
追記)
Krystian Zimermanの演奏は一言で言えば『一音入魂』です。一音一音を聴くに気を抜くことができません。それゆえ同じ曲の演奏録音を2つも3つも販売することはしない、『できない』 のだと思います。彼の演奏を聴くのはまさに真剣勝負です。
ま、なんとなく聴いて眠くなるものいいのかもしれませんけど‥。
2024/5/27