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不安と絶望と少しの希望【マチアプ⑦】
「ご両親にはいつ会える?」
という渾身のジャブを打った私。
答えは、"新型コロナワクチン予防接種1回目を打ってから"
打ってからって・・・・いつよ?!!どうする!私!
前回の話はこちら。
未曾有の事態の真っ只中、目に見えないウィルスに対する対処法は講じておきたい。それは私側の両親も同じ想いだった。
誰も責めることはできない。
でもいつになったら次のフェーズへ行けるのだろうか。
焦る気持ちを必死に抑えながら、週末はフジオカさんに会いに私はせっせとタブー視されていた越県を繰り返していた。
ついに来た「今後の話をしよう」
いつも通りフジオカさんと楽しい時間を過ごし、そろそろ休憩をしようかとお店に入った。
忘れもしない、あれは〇〇のタリーズ。
私は完全に、フジオカさんのご両親にご挨拶をする日程を決めるものだと思ってウキウキしていた。お付き合いを打診してきたあの時のように、彼はまた真剣な顔をして静かにこう言った。
「実は、結婚する事自体迷っているんだよね」
「え?」
信じていた彼の口から、信じられない言葉が出てきた。
もう何も信じられない。
もう何も聞こえない。
一気に目の前の世界から色がなくなった。
そして楽しかった日々が走馬灯のようにゆっくり脳裏に浮かんだ。
結婚という名の覚悟
まあまあ人のいるタリーズで、こんな話をするとは思わなかった。
涙を必死に堪えたけれど、到底無理。
嗚咽を我慢できた事を褒め称えてほしいくらいだ。
彼は私との未来を色々考えた結果、私との結婚を迷っているのではなく一人の人間の人生を背負う事に大きな不安を感じ、結婚を迷っているという事だった。
彼の不安材料 "もし結婚したら"
・こたるの仕事は?希望する職種はないよ?こっちの仕事でもいいの?
・住む場所はこの辺になるけどいいの?都会と違って不便な事もたくさんあるよ?適応できる?
・車の運転練習出来る?長年ペーパードライバーなんだよね?
・子供が出来たらどうする?
ポジティブな私と、堅実な彼
彼が感じている不安を払拭するには、明確な答えを返す必要がある。
でもどれも確かな返事が今は返せない。やっていけるかもしれないし、やっていけないかもしれない。だってやってみないと分からないもの。
私が言えることは「フジオカさんとなら、どこに行っても何を仕事にしてもきっと大丈夫だと思う」その一言だけだった。
私の精一杯の言葉を聞いても、彼の顔は曇ったままだった。
絶望のフレーズNo.1「少し時間をください」
タリーズでの話し合いの最後、フジオカさんは静かにそう言った。
不意に落とされた絶望のどん底。
パンパンに腫れた赤い目を伏し目がちにしながら、とりあえず夕飯をどこかで食べようと店を出た事はうっすら覚えている。
ここに来るのも最後なのかなと思いながら二人で夕食を済ませ、時折彼に「どうしたの?」と言われ(どうしたもこうしたもないよ・・・)と内心思いながら無理やり笑顔を作り、私は彼と別れ新幹線に乗り込んだ。
もし彼がこのまま決心できず、とりあえずお付き合いを続けることになったら・・・・・
私から別れを告げよう。
今決心出来なかったら今後も大事な決断は出来ないだろう。
連絡先も消して、彼を忘れて、実家に帰ろう。
帰路の新幹線の窓から、寂しげに光る月を見ながらそう決意した。
つづく。
次回の話はこちら。