「花腐し」 女優 さとうほなみの魅力
男女の性愛を描くのに長けた荒井晴彦監督の演出によって、さとうほなみの輝きがスクリーンに照射される。モノクロの画面に心中してしまった祥子が、雨に腐る情けない二人の男の記憶の中でカラーの画面で生きた女としてよみがえる。荒井監督の好きな大滝詠一「君は天然色」の歌が効果的に使われている。
「顔、ぶたないで。私、女優なんだから」薬師丸ひろ子「Wの悲劇」の台詞が引用される。「ヒミズ」の二階堂ふみや「タイトル、拒絶」の伊藤沙莉のときと同じように、私はこの映画で女優さとうほなみを発見した。
白いドレスを纏った祥子がアパートの階段を登っていく。その横顔が鏡に写り、映画のミューズは部屋の中へと消えていく。彼女を讃えるかのように、この映画はつくられているように思う。
かつて歌手で女優だった山口百恵の「さよならの向う側」が随所に流れ、情けない男と祥子、さとうほなみがカラオケで熱唱するエンドクレジットで映画的喜びに包まれる。
テアトル新宿 2023年12月7日
トークショー 荒井晴彦、さとうほなみ、吉岡睦雄、柄本佑、川瀬陽太
柄本佑さんは背が高く、荒井監督は囁くように映画への愛を語り、さとうほなみさんは何よりチャーミングでした。