#65_道徳授業「いつわりのバイオリン」
中学校の超有名教材。
初めて授業をしたが、なかなか面白かった。
導入:あなたには誇りがありますか?
ある、と答えた生徒は約30%。
考えたこともない、という生徒が多かった。
また、誇り=特技や結果、成果と捉えている生徒も意外と多い。
「いつわりのバイオリン」を見て考える。
フランクには、ずっと誇りがあったのではないか、という意見が出た。
誇りがあるからこそ、バイオリンをすり替えたのでは?という意見もあった。
今振り返ると、子どもたちは「誇り」と「プライド・意地」を混在して考えていたのかもしれない。
わたしはこの意見をきいて、「バイオリンのラベルを替えたのはいいこと?悪いこと?」と問い返した。
多くの人は悪いことだと捉えた。
「人のものを勝手に替えたから。」と、普段ほとんど発言しないFくんが答えた。
「じゃあ、自分の誇りのためなら悪いことをしてもいいの?」
ちょっと戸惑いの空気が流れた。
誇りと意地の違いを明らかにするための発問。
「評判を上げるのは難しいけど下げるのは簡単っていう考えをもとにしてるんだけど。」とSくん。
彼は発言を抽象化して束ねるのがとてもうまい。
「できが悪いバイオリンを渡したら相手にも迷惑がかかるから、しょうがないんじゃないか。」
あー、、、発言を受けてのわたしの反応がよくない。
もっと「発言してよかった!」と思えるリアクションをしていかないと。
この意見を受けて、3つの道を描いた。
1つ目は評判になって有名になる道。
2つ目は評判が悪くなる道。
3つ目はバイオリンをつくらない道。
子どもたちは、著名なバイオリニストに頼られたという状況でのフランクの気持ちにめっちゃ寄り添っていた。
フランクにどっぷりシンパシーを感じていたという状況だったのだろう。
フランクに対して批判的な意見はほとんど出てこなかった。
フランクがラベルを貼り替えたことに気付いていたロビン。
気付くことを予想しながらも、ラベルを張り替えてしまったフランク。
頭が回らなかった、闇落ちした、と子どもたちは発言していた。
みなさんも病んじゃうことありますか?と問い返すと「あります。」と返ってきた。
完全に同化だ。
授業をしながら、子どもたちの反応が薄いなーって思っていたけど、動画を見たら、子どもたちめっちゃ頭を働かせて考えている姿が見えた。
4月は寝ていた子。
手悪さをしていた子。
成長をともに、内言が増えてきたのだろう。
気付いていないことばっかりだ。
「フランクは幸せ?」という問いに、首を振る子どもたち。
「フランクにとっての誇りって何だったのだろう。有名になること?」という問いに対して、子どもたちはめっちゃ呟いていた。
「自分がつくった、一番いいバイオリンを弾いてほしかった。」
これを発言したのがGくんだったことに、わたしは感動した。
そして満を持して指名したSくん。
彼は2分ほど黙っていた。
待つかどうか迷ったそのとき。
「自分のバイオリンをつくること。」
彼の「自分の」に大きな意味があると考えていた。
自分がつくること。為すこと。
そこに大きな意味を見出すこと。
そこに気付いてほしかった。
最後に、自分にとっての誇りって何かを考えた。
明日の子どもたちのノートの記述が楽しみだ。