#206_脳科学から見る自由度と学力との関係

学力の要の一つ、記憶力。
これを司る記憶中枢は、脳の大脳新皮質という部分にあります。

記憶には長期記憶と短期記憶があり、短期記憶の一部だけが長期記憶用のデータとして保存されます。
この短期記憶から長期記憶にデータを移すときに通るのが「海馬」。
記憶の門番とも呼ばれる部分です。

この門番は結構厳しくて、記憶のほとんどを長期記憶に移さずに消してしまいます。
これが「忘れる」という現象です。

最優先で記憶に残るのは「命に関わること」「感情が揺さぶられること」。
つまり、記憶という機能は個体が生き抜くための仕組みなのです。
学校で学ぶ学習内容の多くが記憶に残りにくい理由がこれです。

海馬の近くには、感情を司る「扁桃体」があります。
感情が揺さぶられると、この扁桃体がぶるっと震えます。
生活の中で「なにこれめっちゃ面白い!」と感じたことが記憶に残りやすいのはこの仕組みがあるからです。

小単元「火山と岩石」の授業をしたあと、ある子が書いてくれたふり返りを紹介します。

火成岩や火山灰などを顕微鏡でじっくり見られて楽しかったです。じっとみていくうちに「このキラキラは何だ!?」「磁石に引きつけられる意志あるじゃん!」などといろいろな発見と疑問を自分の手で見つけられて、宝探しをしている気分でした。また先生が持っている蛍石や黒雲母など、鉱石を実際に見れて、写真だけではわからなかった特徴や細かい見た目が見れて、鉱石にとても興味がわきました。いろんな鉱石を見ているうちにお気に入りも見つかりました。(石英と琥珀)いつか自分で手に入れてみたいです。

この中にある「いろいろな発見と疑問を自分の手で見つけられて宝探しをしている気分」という記述。
教育の本質を突いた言葉です。

発見と疑問は学びの原点です。
子ども自身が自分で学びを深めることに面白さと手応えを感じられたら、生涯学び続ける人になるでしょう。
学び続ける子、問い続ける子を育てることは、学校教育の大切な使命です。

授業の自由度を上げることは、その子自身が授業の中で個の学びを深める時間を保障することになり、生涯学び続ける人を育てることにつながるのです。


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