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読んだ本のことだけで終わったらいかんやろうもん。

先日玄関から外に出ようとしてると、「お出かけですか?良い天気でいいですね。どうぞお気をつけて行ってらっしゃいませ」と、ご丁寧なお見送りをされた。こんな団地であんな親切な、心のこもった挨拶をされたことに驚いた。「は、はい。行ってまいります」と、こちらも丁寧に挨拶を返して出かけた。

人間というのは挨拶の仕方ひとつで、ある意味、人間性までを感じさせてしまうんだと思ったしだいだ。その上、彼女は同じ棟の同じ階段を利用している間柄なのだ。小柄で愛くるしい出で立ちだった気がする。


人間とすれ違っただけでも、こうした思いを感じるのだから、本を読んだら、中身のことだけでなく、その本との出会いまでを感じさせてくれたって……と思う。


先日手にした「暮しの手帖」の花森安治初代編集長しかりである。
われわれ雑誌編集者にしてみれば、全てにおいて神の領域にある方である。この方が作られたものを真似しているだけのような気さえする。雑誌づくりの全てにおいて、そう言えるのだ。それを75年も前に実践した方なのだ。

紙質然り、ページ構成然り、特集と基本ページのバランス然りである。その後に、編集内容があるのだ。どんな記事で誌面を埋めていくかである。それを考えるのが編集者の仕事である。

近年の週刊誌には、それが全く感じられない。あんな紙質、ページ構成で誰が読んでくれるのか。

また、花森精神を見事に踏襲し、立派に屹立としている現在の編集部の方々の努力である。本当に頭が下がる。


ああ、またいらんこと言ってしまった。ここまで言わんかったら、本当にいい爺さんなんやろな。ほんまに。

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