させていただく症候群を治す方法
目上の人にメールを送る際、自分の敬語が適するものであるか何度も確認した経験はないだろうか。
「他人にどう思われているのか」を酷く気にしてしまう私は、毎回確認しては、少し慣れない表現を用いようとする度に ”○○ 敬語” と検索エンジンにかけてしまう。
これに関してしばしば言及されるのが、「させていただく」語だ。
芸能人や学校・仕事でも、敬語を使うべきシーンで多様してしまう人も多いのではないだろうか。
この「させていただく」を筆頭に、過剰な謙譲語を、コピーライターの橋口幸生氏は、「卑屈語」と表現している。
橋口氏の主張は、「卑屈語」ばかりを用いていると、本当に伝えたいことが伝わらないリスクや、そもそも意思疎通に時間がかかるというものだ。
これは、私も以前から違和感を感じていたことである。
「発表させていただきます」
「結婚させていただきます」
「ご連絡させていただきます」
そもそも、「させていただく」とは、使役の助動詞「させる」+恩恵を意味する動詞「もらう」の謙譲語である。
相手が私にある行為をさせる。そのことを「私」が有難く思っている時に、「相手」に感謝の意を伝える時に用いるのが正しい使い方であり、
言い換えれば、相手の許可によって、初めて私が行為することができる時に、使う言葉のが適する言葉である。
上で挙げた例に関しては、発表も、結婚も、連絡も、別に相手からの許可が必要な行為ではないだろうし、その有難さ自体も感じていないにも関わらず、多用してしまっているのが現実なのではないだろうか。
橋口氏は、この卑屈語が蔓延する要因について、今日の社会は、多くの人が「誰かに嫌われないこと」を目的化してしまっている点を挙げている。
これは、非常に的を得た主張に思える。誰もが嫌われることを恐れて、相手に失礼がないことを何よりも優先してしまっているのではないか。
「嫌われる勇気」なんて本も流行ったが、嫌われるとまでは行かずとも、伝えるべき内容よりも、伝える言葉の言い回しに脳のキャパシティを割くことはあまりにも勿体ない。
では、如何にして「させて頂く症候群」は治るのか。
橋口氏も述べていることであり、私も日々心がけていることは、
〇〇させて頂く→〇〇致す への変換だ。
自分が行動主体の時は、他人にへりくだるのではなく、自信をもって、〇〇致します。と使うように心掛けてはいかがだろうか。
言葉遣いは、その言葉を発する本人を映す鏡のようなものだ。
きっちりと身支度をして、その姿を毎日鏡で見れば自分がきっちりした人だと思えてくるように、主体的な言葉を心掛ければ、主体的な人になれるのではないだろうか。