メロウなルインズ?超高速化したゴッドヘッドサイロ?ゼロ年代のはじまりに降臨した鬼神の如きドラム&ベースデュオ、LIGHTNING BOLT。
「世界でいちばん声に出して言ってみたくなる名前のドラマー」ことブライアン・チッぺンデイルと、ベース担当ブライアン・ギブソンとのドラム&ベースデュオ、LIGHTNING BOLT(ライトニング・ボルト)。
ダブルブライアンですが、兄弟とか親戚ではありません。
ライトニング・ボルトは1994年、ロードアイランド州プロビデンスのデザインスクールに通っていたブライアン・チッペンデイルが、「2つ年下にベースギターの天才が居る」という噂を耳にし、その当人だったブライアン・ギブソンを誘って結成された。
結成当初はボーカル/ギターのヒシャム・アキラ・バルーチャが在籍する3人組だったが、1996年にヒシャムが脱退(その後Black Diceを結成)し、チッペンデイルがボーカルも兼任する2人体制となる。
最初期の数年間は2人の頭の中に「レコーディング」の概念が無く、ライブだけを生業にする「即興演奏デュオ」して活動していたが、彼らのライブの評判を聞きつけた地元のインディーレーベルLoad Recordsのアプローチによって1999年にセルフタイトルのデビューアルバム『LIGHTNING BOLT』をリリース。
その後はコンスタントにオリジナルアルバムを発表し続け、新たなアルバムのリリースの度に世界中のインディー系メディアから絶賛され、ゼロ年代を代表するUSオルタナティブロックバンドとして不動の地位を獲得する。
Ride The Skies (2001)/ LIGHTNING BOLT
Wonderful Rainbow (2003)/ LIGHTNING BOLT
Hypermagic Mountain(2005) / LIGHTNING BOLT
Fantasy Empire (2015)/ LIGHTNING BOLT
Sonic Citadel (2019)/ LIGHTNING BOLT
エフェクターで歪みに歪んだギブソンの高速ファズベースと、破裂音のようなチッペンデイルの高速ドラミングの応酬。
ドラム&ベースデュオの先輩にあたるルインズをメロディアスにし、ただでさえ速いゴッドヘッドサイロをさらに高速化したような人力トランス/ノイズファストコアは、凄まじいハイテンションと熱量で聴く者の心拍数とアドレナリンを上昇させる。夜中に聴いたら寝れなくなる。
ドラムのチッペンデイルはライブの際は常にマスクを被り、マスクの中に仕込んだコンタクトマイクを咥えながらボーカルも担当する。
歌っていると言うより大半はディレイの効きまくった叫び声なのだが、声を出しながら超高速の複雑なドラムフィルを叩き続けてるってだけで正気の沙汰ではない。チッペンデイルはバンドマンのくせに腕も太いし胸板も厚い。ミュージシャンと言うよりはもはやアスリートである。その癖、ライトニング・ボルトの印象的なアルバムアートワークは全て彼のイラストレーションである。その前腕の太さで絵も描けるんかい。何刀流やねん。大谷翔平もビックリである。
ベースのギブソンは、多数のエフェクトペダルに囲まれながらアホみたいな速度のフィンガーピッキングおよびタッピング奏法で楽曲をリードする。独自のチューニングとあらゆるエフェクトのせいで彼をギタリストと間違える人がいるが歴としたベーシストである。ギター&ドラムデュオが聴きたかったら同時代に同じような音楽性で活躍したHELLAもオススメ。ちなみにギブソンもゲームデザイナーとの二刀流である。
とにかく速くてうるさくて激しい音楽を聴きたい人や、一時的にそんな気分の人にはライトニング・ボルトの音楽はバッチリハマるだろう。それを裏切らないほど速くてうるさくて激しい。
ボーカルとベースはエフェクター全開なのに、スネアの鳴りは妙に生っぽい乾いた響きでメタルっぽさをあまり感じないので、ファストコア入門者なんかのメタルが苦手な人にも自信を持ってオススメできる。
メタル的な技巧追求よりも出力するサウンドそのものへの質的探究の人達だろうと思う。スティーヴ・アルビニのインテリジェンスなオルタナティヴマナーを根底に感じる。きっと彼らはビッグ・ブラックもレイプマンも、バストロも擦り切れるほど聴いたはずだ。
インタビュー等ではボアダムスやサーファーズ・オブ・ロマンチカ、メルツバウ、インキャパシタンツなどジャパノイズからの影響を語っており、また本人たち曰く作曲自体のインスピレーション元はサン・ラとフィリップ・グラスとのこと。
もう出てくるアーティスト名がぜんぶ高尚すぎて偏頭痛が起きそうである。
ライトニング・ボルトはスタジオアルバムの完成度も素晴らしいのだが、業界内や音楽ファンの間ではとにかくライブが評判である。
最後に、オランダの音楽フェスLe Guess who?2019にてライトニング・ボルトが披露した鬼神の如きライブパフォーマンス映像をどうぞ。
ノイズ、パワーヴァイオレンス、プログレ、マスロック、スラッシュメタル、グラインドコア...この世の全てのエクストリームミュージックを絡め取るかのような勢いです。ヤバいです。