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今、世界で一番「エロくてオシャレ」な音楽をつくる男、トム・ミッシュが再始動している。

2024年、トム・ミッシュ(tom misch)が再始動している。

今年になってから本人名義での楽曲をいくつか発表していて、2枚目のアルバムがそのうち聴けるだろう。星野源との対談で語っていたクルアンビンの影響か、サイケ感が増している。どっちに転ぶのか、いずれにせよ期待しているぜトム。

Insecuqre(2024)


Cinnamon Curls(2024)


余談だけどクルアンビン(Khruangbin)もめちゃくちゃカッコイイから未チェックの人は聴いてみてね。



というかトム・ミッシュ、現世代のポピュラーミュージック界のトップランナーの一人という印象だったので、まだ1枚しかちゃんとしたフルアルバムを出していなかったのか、と逆に驚く。

スタイリッシュなギターとダンサブルなタイトビート、甘美な歌声で、世界中の音楽ファンを虜にしたデビューアルバム『Geography(2018)』。

ランチタイムの青空を思わせる軽快な曲も、ディナータイムの紫煙を感じるアダルトでムーディな曲もバランス良く詰め込まれたテン年代を代表する傑作であり、そのたった1枚のアルバムでイギリス、どころかワールドワイドの次世代スターとしての名声を掴み取った。

精神科医兼アマチュアヴァイオリニストだった父親のもと、クラシックとオペラにまみれて育ったトム・ミッシュは、幼少期からヴァイオリンとギターに触れ、15歳の頃にD・ディラの音楽に出会った影響でLogicでのビートメイクを始める。音楽学校でジャズギターを専攻しつつ、その後自身の楽曲をSoundCloudで発表し始め、あれよあれよという間にデビュー。そして爆発的なヒット、各所での手放しの賞賛。まさにネット時代を体現するシンデレラボーイである。

トムのギターは、トム本人が影響を公言するジョン・メイヤーのトラッドでロッキンなスケールよりむしろジャズ要素が強くて、ケニー・バレルっぽい響きに近い。めっちゃムーディ。ムーディ勝山。ごめん。右から左に受け流してください。

そして歌声の魅力。
歌唱力を誇示するようなハイトーンボイスではなく、頭蓋骨に響くような心地よいチェストボイスでさりげなく訥々と言葉を紡ぐタイプの歌唱。高い声も低い声もとろけるように甘くて、でも力強くてクリア。これはたいていの世の女性はヤラレる。男の俺がヤラレたんだから。

そこにトムみたいな現代っ子が友人の家で、学校で、街角で、自然に触れてきたであろう横ノリ系のビートミュージック/ブラックミュージックのエッセンスがたっぷり詰まっている。

It Runs Through Me (feat. De La Soul)


Lost In Paris (feat. GoldLink)


Disco Yes (feat. Poppy Ajudha)


ジャズギター、ブルーアイドソウル、ディスコ、ファンク、サルソウル、ハウス、ネオソウル、ヒップホップといった新旧グッドミュージックの見本市みたいなトム・ミッシュの音楽性は、難しいことを言わずに総括すると、今、世界で一番「エロくてオシャレ」である。
しかしながら、ひとたびサングラスを取ったトムはネオアコっぽい上品さと清潔感があるし、音楽のエロさが下品さに足を踏みれない程度のバランスを保っていて、そこは英国人特有って感じがする。人種的な偏見とかじゃなくて、アメリカ人はそこら辺はもうエロさに針を振り切っちゃうのが良さだから笑。


驚くべきはトム・ミッシュが『Geography』を22、23歳そこらで完成させていることである。早熟も早熟。

いずれにせよ、もうすぐ30代に突入するトム・ミッシュ。
コンセプチュアルなアダルトを通過し、次はアクターとしてではなくリアルなアダルトジェネレーションとしてどんなグッドミュージックを聴かせてくれるのか、今から楽しみである。

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