見出し画像

植物を育てる(20)by立花吉茂

樹木の種子発芽
 樹木と限らず野生植物の種子の発芽はたいてい遅く、不揃いで、低率でしか生えない。これは、生き残るための自衛策のひとつであると考えられてい
る。筆者の実験データのうち、先号ではウルシ科の植物について記した。今
回は野生のマメ科樹木についての結果を報告しよう。

マメ科植物
 ここでは緑化によく使われる4種類のマメ科植物について述べる。種子を
そのまま蒔いたのではいずれも30%以下しか発芽しないが、濃硫酸で処理す
ると非常に促進された(図1)。すなわち、1分処理ではキハギはかなり促進
されて40%、ニセアカシアは20%であったが、ネムノキとイヌエンジュは
ほとんど効果がなかった。しかし、15分~4時間の処理でいずれも90%を超える高率で発芽した。6時間以上処理すると害があらわれ、発芽率は急速に低下した。

キハギの種子発芽
 キハギは種子の成熟度によって種皮の色が違う。それぞれの発芽のパター
ンは異なっており極めて興味深い(図2)。しかし各種の発芽促進処理をおこなうといずれも高率で発芽した。野生植物の種子発芽はこのキハギが示すように1種の同じ株からとった種子でも一様でないから、自然の回復作戦には周到な予備知識が必要である。
(『緑の地球』第89号 2003年1月掲載)

いいなと思ったら応援しよう!