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植物を育てる(24)by立花吉茂
ドングリ類の種子発芽
ドングリは俗称、殻斗果という。皿のような部分を殻斗という。シイノキ
は皿がなくて外皮に包まれているが、クリとブナを除くこの仲間をドングリ
と呼んでいる。日本に20種あまり分布するが、その発芽について調べたデ
ータはほとんどない。そこで筆者の実験の結果を報告しよう。予備実験で、
ドングリ類はカラカラに乾いてしまうと発芽しないことが解っていた。十分
熟して落下した直後の種子を集めるのは意外に大変な仕事であった。
発芽床
実験の発芽床は、昔の人がやっていたように、箱に川砂をつめて1種100
粒ずつ蒔いた。そして毎週1~2度水分の補給をした。いろいろな温度条件
の場所に置いたが、自然条件での発芽の結果を図に示す。
発芽率とその経過
16種のドングリは、図のように3つの群にわかれて発芽した。落葉性のミ
ズナラとコナラは発芽がもっとも早く、年内に発芽(正しくは発根)した(A群)。常緑性のカシとシイは年内には生えず、翌春いっせいに発芽(発根と発芽)した(C群)。その他の4種の落葉性種は、両者の中間で、年内から翌春にかけてダラダラと発芽(発根)した(B群)。
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結果と考察
落葉性の種類は、ドングリが熟して落下したらすぐに発芽(根)をはじめるが、常緑性の種類は翌春暖かくなってからいっせいに、根と芽を伸ばした。ただ1種ウバメガシだけは常緑性であるが、落葉性種と似た発芽のパターンを示した。
ドングリ類の苗の育成には、成熟期にすばやく集めて水洗し、乾燥しないように砂に埋め、翌春、芽の出た小苗を取りだして苗畑に植えるのがもっとも実用的な方法であることがわかった。その後の調査で、拾ったドングリをビニール袋に入れて、冷蔵(5~6℃)するのもよい方法だとわかった。
(「緑の地球」93号 2003年9月掲載)