植物を育てる(9)by立花吉茂
里山は復活できるか
里山はどうなる?
里山復活論がでている。もともと里山は原生林を切り払ったあとの二次林である。西日本の照葉樹林のような原生林は暗くて利用しにくい。そこでアカマツ・コナラ林のような利用しやすい二次林に手を加えて里山とした。現在のように里山にすら入らない状態ではこの維持は大変むずかしいだろう。遷移が起こって樹種が増え、原生林へと戻っていくだろう。しかし、それにはずいぶんと長い年数がかかるはずである。その長い年数のあいだには、人による干渉や山火事など思いもかけぬ事故が起こって、いびつな森林になるかもしれない。
農業を営むために利用した里山が農業形態の変化で手入れをしなくなったのであるから、農業形態が元のようにならない限り里山は復活しない。町に住む者が定期的に手入れに行ってもそれは長続きはしないだろう。山や森林相手の仕事は、気の遠くなるようなゆったりした活動であるからである。
自然か、手入れか?
環境林と言われる緑地は自然林を残したり、若干補植をしたりした場所が多い。筆者の住む近くの枚方市の香里団地には自然林(アカマツ・コナラを優占種とする二次林)が公園として保存されている。20年以上も観察しているが、遷移はすすんでいない。それは、公園であるから頻繁に人が立ち入るためである。元里山はこうはならないだろう。ほとんど人が立ち入らないからである。公園の場合、樹木が枯れたり倒れたりすれば補植される。元里山の場合、補植よりも間引きが必要になるかもしれない。
造園学には修景という言葉がある。これは文字通り景色の補修である。里山は完全に自然で放置する場所と、修景的な場所とにわけて保全を図ることが現実的であろう。
(緑の地球77号 2001年1月掲載)
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