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植物を育てる(21)by立花吉茂
クスノキ属植物の種子発芽
クスノキ属植物は日本に10種以上分布している。ここでは近畿地方に自
生する10種についての実験結果を報告しよう。
常緑の種類
実験に用いた常緑の種類は、クスノキ、ヤブニッケイ、カゴノキ、イヌガ
シ、タブノキ、シロダモの6種類であった。これらは奈良の春日山にゆくと
全ての種子が入手できる。しかし、種子の熟する時期は種類ごとに別々であ
るから、多くの種子を集めるのは大変な作業である。
落葉の種類
この小グループは本来は東北、北海道に分布するのであるが、近畿地方で
は500m以上の高い山に生えている。実験用にはおもに比良山系で採種した
シロモジ、クロモジ、アオモジ、ダンコウバイの4種である。
発芽の特徴
クスノキ属植物の種子は多肉質の果肉につつまれたやや大きい種子で、乾
燥すると発芽力を失う。また果肉のまま蒔いてもうまく発芽しない。果肉の
ある種子は、原則として動物に食べられ、排泄された種子が発芽するように
できている。したがって、発芽させるには十分に熟した果実を採取し、後熟
させてから果肉を除き、直ちに蒔くか、乾燥しないように貯えてから蒔く必要がある。実験では洗った種子をビニール袋に入れ、全部の種類がそろった時点で蒔いた。
発芽のパターン
発芽の結果は図に示す。すなわち、タブノキだけは採取後すぐに発芽した
が、その他の種類は翌年の春にいっせいに発芽した。タブノキには休眠期間
がなく、他の種類には休眠があると考え、冬も暖かい場所に蒔いたらヤブニ
ッケイとイヌガシが1~3月に発芽した。落葉生の種類は冬に暖めると多く
の種子は腐敗した。
以上のことから、クスノキ科の植物は、タブノキ型、常緑型、落葉型の3
通りあるようにみえる。
(『緑の地球』90号 2003年3月)
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