シン•エヴァンゲリヲン(ネタバレあり)
公開初日に行かなければ、どこかで情報が入ってしまうのでは、と早速「シン•エヴァンゲリヲン」を観てきた。
ある意味エヴァらしくない、小難しい考察はあまり必要なく、登場人物の描写も余す所なく見せ、爽やかなエンディングへと導いてくれるという、とても清々しい作品であった。
しかし、それは昔のTVシリーズや旧劇場版もしっかりと観ている人間からすると、だろう。
特に旧劇場版を観ていなければ、旧劇場版をなぞるようなシーンが時折り出てくるので、難解に思えるかもしれない。
あくまで、今までエヴァンゲリヲンを愛してきた人達に取ってみれば、過不足なく描き切った大団円で、満足度は高いのではないかと思う。
ただ、キャラクターやエヴァンゲリヲン特有の鬱展開にかなり傾倒している人達からすると、少し以外だったラストシーンや、あまりに綺麗なストーリーテリングに不満の評価もあり得るだろう。
つまりこの作品は、旧版でエヴァにハマり、大人となりライトファンになっていった自分のような人間にターゲットを合わせてきているように思えた。
「これくらいの展開を楽しむぐらいが丁度いいんじゃない」という庵野監督のメッセージではないか、とも。
それは、これまで多くのオタクを産み出してきたエヴァンゲリヲンだからこそメッセージになり得るのだと思う。
旧劇場版でも、オタクに対して「現実を生きよ」というメッセージがあったが、あの時ほど辛辣ではなく、ある程度寄り添いながら、それでも「辛くとも前を向いて現実を生きよう」と語りかけているさじ加減の違いが、庵野監督の心境の変化だろうか。
もしくは社会環境の変化か。
90年代の閉塞感はバーチャルな感覚があったが、現代は震災などで現実的に生きることが苦しい人が増えた。
実際、劇中の「ニアサー」後の世界は、震災復興と重なる。
この作品は、少し優しくなった庵野監督からファンへのプレゼントではないかと思う。
この「シン」でしっかりまとまったから前作「Q」の破天荒さが生きてくる。
前前作「破」もまた、エヴァらしくないカッコいいストレートなヒーローアニメだったので、そのまま「シン」だと拍子抜けしていただろう。
シリーズ一連の流れまで大肯定できるようになる「シン」は、シリーズ物の最終作として、名作であると言える。
ありがとう。
そしてさようなら、すべてのエヴァンゲリヲン。