経営に活かしたい先人の知恵…その6
◆学習⇔思考⇔行動のサイクルを忍耐強く回す◆
学習することで知識は増えても、考えなければ知恵は出てこない。孔子は「学んで思わざれば、則(すなわ)ち罔(くら)し」と言っている。いくら学習しても、考えることがなければ、活かすことはできないとの教えだ。
しかし、いくら学んで考えて、知恵が出てきても、行動に移さなければ、それは単なる思いつきに過ぎない。『荀子』に「どんなに近い場所でも、その方へ向かって歩かなければ行き着くことができないし、いかに小さなことでも、直接手を下さなければできない」とあり、孟子は「できないというのは、多くの場合、やらないからである。何事もやろうと思えばできるはずである」と言っている。
こうした中国古典の教えは、米沢藩を再興した上杉鷹山の、『為せば成る、為さねば成らぬなにごとも、成らぬは人の為さぬなりけり』という言葉に通じるものがある。
考えることで出てくる知恵は完成したものではなく、行動に移すことで、その知恵に磨きがかかり、生きた知恵になると考えたい。
行動を起こしたとしても、簡単に成果を手にすることはできない。成果が出てくるまでやり続けなければならないが、これが難しい。帝王学の書として知られる『貞観政要』にも、「知ることが難しいのではなく、行うことが難しい。行うことが難しいのではなく、それをやり抜くことが難しい」とある。
では、やり抜くためには何が必要なのか。先人の言葉に従えば、我慢、忍耐力になる。
弁護士から企業家に転じ、プロのスポーツ選手のマネジメント会社「IMG」を設立して成功を手にしたマーク・マコーマックは次のように指摘している。「私たちのビジネスで、成功例の90%は何らかの形で忍耐力が必要だったし、失敗例の90%は忍耐力の欠如に一因があったと思える」
成功も失敗も90%は、忍耐力で決まるとマコーマックは言うのだ。堀場製作所の創業者、堀場雅夫も同様の指摘をしている。
「大切なのはすぐにあきらめないで我慢してやっていくことです。スピーディな処理が大事なことは言うまでもありません。しかし、我慢するということとスピーディに処理をするということはまったく別問題なのに、そこが一緒になってしまっているのが問題なのです。失敗に終わったものも、我慢して最後までかじりついてやっていればうまくいったのではないかと思えるのが、振り返ってみるといっぱいあります」
勉強熱心な事業家は数多くいるが、勉強熱心なだけでは会社を発展させることはできない。学習することで身につけた知識をベースに、考えて知恵を出し、行動に移し、忍耐強くやり続けることで成功を手にすることができるのだ。余談ながら、経営者だけが勉強して、社員教育を疎かにしている会社も発展しない。