生薬百選32 大棗(タイソウ)
信州の秋も深まり、研究所の見本園にあるナツメの実も徐々に色づいてきました。ナツメは五果「桃・栗・杏(あんず)・李(すもも)・棗(なつめ)」の一つとして中国では古くから珍重されてきました。
ナツメの熟した実は甘酸っぱく少しボケたリンゴ?のような味がします。この実を乾燥したものが生薬の「大棗」です。日本には奈良時代には渡来しており、「万葉集」や「延喜式」にその名が出てきます。
大棗の有効性分は糖類、有機酸、トリテルペン、サポニン、ベンジルアルコール配糖体などです。主な薬効は緊張の緩和、強壮、鎮静、利尿、滋養、補血などで、筋肉の急な緊張による疼痛をやわらげ、神経過敏を静め、咳、腹痛などの痛みを取ります。
漢方では、最もポピュラーな処方の一つである葛根湯や桂枝湯に配剤される重要な生薬です。
また、韓国では薬膳料理の参鶏湯(サムゲタン)などにも使われています。
ナツメの実は甘みが強いのでジャムやお菓子の材料などにも利用されています。一方、ナツメの葉には面白いことに甘味を感じなくする成分(ジジフィンZiziphin)が入っており、葉を口の中でよく噛んでから砂糖をなめると砂粒をなめているように感じます。この効果は30分ほど続くので、ナツメを見かけたたら一度試してみてはいかがですか?とても不思議な感覚を味わえますよ。
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大棗(タイソウ)