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【エッセイぽいシナリオ】シモキタの深夜ファミレスにいた女神

○代々木上原・カフェ(夜)
0時過ぎ。カフェだがBarカウンターもあり、白を基調としたテーブルはレストランのようにも見える。海外客もおり、約30席は満席の店内。
仮男(26)、学生時代の友人A,B,Cとコーヒーを飲みながら、話している。
仮男M(心の呟き)「すでに僕の終電がなくなって30分が経っていた」
楽しそうに話している4人。
仮男M「彼らにはまだ終電がある」
楽しそうに話している4人。
仮男M「彼らには妻や恋人がいる」
楽しそうに話している4人。
仮男M「僕は郊外の実家住みのため、終電が彼らより1時間早い」

○同・店前(深夜1時)
会計が終わり出てくる4人。
友人A「(仮男に)終電ないなら言えよ~」
仮男「今日は逃してもいいと思ったから」
友人B「どうすんの?」
仮男「下北って近いっけ?」
友人C「20分くらいで着くよ」
仮男「そしたら下北まで歩いて、ネカフェで泊まるわ」
×     ×     ×
「うい」、「じゃ」、「また~」と別れ、代々木上原駅へ向かう友人A,B。笹塚方面へ歩いていくC。下北沢方面へ歩いていく仮男。

○道(深夜1時頃)
スマホのGPSを利用しながら、下北沢へ向かっている仮男。
仮男M「下北だと始発は5時過ぎ。あと4時間近く待つ…」
人は全く歩いていない住宅街。路地で立ち止まる仮男。スマホを出し、
仮男M「彼らにはネカフェで過ごすと言っていたが、僕の気持ちは表向きにはネカフェと口にしていた段階で、別の選択肢が確定していた」
仮男、スマホで「下北 デリヘル 安い」と検索。
×    ×     ×
さっきの場所から数百m先の路地裏。スマホでクーポン利用で最もお得なデリヘルを探している。手が止まる仮男。
仮男「ここか…?(と呟く)」
スマホ画面には、「快楽速達便 初回お急ぎ便 50分9,000円!」のページ。
発信ボタンを押し、お店に電話する仮男。ワンコールで電話は繋がり、
男(電話口)「お電話ありがとうございますー」
仮男「あのー、クーポン見て…」
男(電話口)「どちらのサイトのクーポンですかー?」
仮男「えっと、破格絶頂掲示板ですかね…」
男「破絶のお急ぎ便ですかー?」
仮男「の、初回9000円のコースって、全部込みでその値段…」
男「ホテル代別ですよー。今どちらいます?」
仮男「今、下北の近くで…」
男「そしたらまずホテル入っていただいて、20分後とかで大丈夫ですかー」
仮男「あ、すいません、一回考えます」
男「はい、お待ちしてまーす」
電話切れる。
仮男「(考えている)」
×     ×     ×
さっきの場所から数百m先の路地裏。
仮男「ここか…?(と呟く)」
スマホ画面には、「精夜位痴夜物語 初回第1章一節コース 50分8,500円!」のページ。
発信ボタンを押し、お店に電話する仮男。ワンコールで電話は繋がり、
男(電話口)「はいもしもしー」
仮男「すいません、サイト見て50分8500円のコースお願い…」
男(電話口)「どこのサイトですかー?」
仮男「えっと、破格絶頂…」
男「破絶ですね、何分後くらいでしょうか?」
仮男「これってホテル代も込みで8500円ってことですよね…?」
男「そうですよー」
仮男「あ、じゃあお願いします」
男「今どのあたりいますかー」
仮男「もう少しで下北沢駅に着くと思い…」
男「下北?ウチそこはエリアじゃないですよー。ウチ品川にありますからねー」
仮男「え…あ、そうなんですか?」
仮男、スマホの画面を再度確認すると、精夜位痴夜物語は品川エリアと記載されてる。
「すいません」などと言い、電話を切る仮男。
仮男M「なんで下北で検索したのに、品川の出てんだよ…」
目の前に下北沢商店街が現れる。

○下北沢・ネットカフェ
自動機械で受付をしている仮男。
仮男M「あのあと粘ってもう一店舗に電話をしたが、店舗指定のレンタルルームなら安くご案内できると言われ、さすがに店舗指定のレンタルルームは怪しいと思って、諦めた」
仮男、必要事項を記載し、確定ボタンを押すと、「現在満室」の案内表示が出る。
仮男M「満室なら、入力する前に教えてくれ…」
立ち尽くしている仮男。

○下北沢・ファミレス(深夜3時前)
入店する仮男。自動機械で受付し、席を案内される。店内には勉強している20代女性、また別の席ではうつ伏せで寝ている20代男性。仮男を含めると、客は店内に3名。
×     ×     ×
タッチパネルでコーンスープを注文する仮男。スマホで時間を確認すると深夜3時。
仮男M「始発が5時6分。あと2時間か…」
仮男、見渡すと配膳ロボットがうつ伏せ男性のテーブルの前に来て、
配膳ロボット「料理が届いたよ!料理が届いたよ!(と繰り返す)」
しかしうつ伏せ男性は寝ており、気づいてない。
配膳ロボット「料理が届いたよ!料理が届いたよ!(と繰り返す)」
真摯に同じトーンで伝え続ける配膳ロボット。
すると近くの席の20代女性、参考書にペンを挟んで立ち上がり、配膳ロボットの前に行く。
仮男「?」
女性、配膳ロボットが持ってきたパフェを男性のテーブルにそっと置く。
配膳ロボットの頭をやさしく撫でる女性。「ご注文ありがとうございました!ごゆっくり楽しんで下さい!」と言いながら厨房に戻っていく配膳ロボット。
女性は席に戻り、再び参考書やノートを開いて勉強をする。
仮男M「かっけえ…」
女性、参考書とにらめっこするように悩んで、ペンを動かす。
仮男M「受験生ではない。ちらっと見えた参考書は学校の科目的なものではなかった。そしたら資格とか?就職とか?僕と同じ年か、少し下の年齢かな?荷物はリュック一つ。僕と同じく終電を逃したのか?それともこの時間にこの場所で勉強するのが彼女のルーティーンなのか?」
時折、息抜きなのか、文庫本を読む女性。
仮男M「今日はここで正解だった気がした」
仮男、彼女に感化され、バッグから演技メソッドの本を取り出し、読み始める。
×     ×     ×
5分後。
本を枕にし、うつ伏せで寝ている仮男。うつ伏せで寝ている20代男性。勉強している20代女性。
×     ×     ×
10分後。
うつ伏せで寝ている仮男。パフェを食べている20代男性。勉強している20代女性。
×     ×     ×
1時間半後。
仮男「おお…ウァア~(と伸びをし、起きる)」
目をこすり、周囲を見渡すと客席には誰もいない。20代男性の席には食べ終わったパフェの皿。
仮男、スマホで時間を見ると「5時16分」。
仮男M「始発逃した…」

○下北沢駅・改札口(朝)
駅前にはさよならが名残惜しいのか、改札前で喋っている男女グループがいくつも。
仮男「(それを見て微笑ましくなる)」
改札口に入っていく仮男。

おわり


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