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学び上手な人は「学びの事後性」を理解している
何かを学ぶことにとても長けている人がいる。そういう人は、この前まで初心者だったのに、あっという間に習熟してしまい、「あれ、もうこんなにわかってるの?」と思わされる。そういう人たちに共通しているのは「学びの事後性」を理解していることだ。
学びの事後性とは何か。一言で表せば、「やってみた後にようやくわかる」ということである。学びには、事後性の低い学びと事後性の高い学びがある。例えば、学校の勉強や資格の勉強などは事後性の低い学びだ。勉強する前から、「もし勉強したら何がわかるようになるか」が予めある程度は明確である。
一方で、例えば料理の修行は事後性の高い学びだ。修行をする前は、「修行をすると何がわかるのか」がわからない。とにかく修行に勤しむ。何年かすると、師事している人が言っている意味がわかってきて、修行の成果が急に現前するようになるのだ。実践を通じて学ぶことの多くは、実は事後性の高い学びである。
事後性の高い学びは存在する。しかし、私達は事後性をなかなか理解できない。なぜなら、私達の頭は常に因果による説明を求める癖があるからだ。事後性の高い学びは、学ぶ前の段階では「これを学んだ結果として何が獲得できるのか」が明確にわからない。つまり、「努力と結果の因果」を描くことができない。故に、頭がその努力を正当化できないのである。
ところが、学び上手な人はこの構造をメタ認知して、「この学びは事後性が高いタイプだから、まずはとにかくやってみよう」とスイッチを切り替える。事前に「努力と結果の因果」を理解できないことを十分に認識して、そういうものだと考えてどんどん学んでいく。結果として、普通の人よりも早く、深く、事後性の高い学びを獲得していく。
ここで重要なのは「誰についていくか」「どこに身を置くか」を間違えないことだ。事後性の高い学びはその定義からして事前には効果検証できないので、学びを得る対象となる人や環境を適切に選択するしかない。
人や環境を選択するときの重要な指標は、「その人や環境が高い結果を出していること」「その人に師事したり、その環境で学んだりした人が、その後活躍しているか」である。何を学べるかは事前にはわからないが、何かを学んだ人がどのような状態にあるかは事前にわかることである。
上述したポイントをまとめると「事後性の高い学びは、人や環境を適切に選んだら、後はつべこべ言わずにやるだけ」ということなのだが、これは頭の癖に逆らうことなので想像以上に難しく、意識的な努力が必要である。しかし、この事実をメタ認知しておけるかどうかが、事後性の高い学びを獲得できるかどうかの分かれ目である。
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