桜の塔 感想(ネタばれ)
正義とは何なのかをみんなに考えさせる秀作だった。
そもそも「正義」という言葉が視聴者を混乱させる。わざとだと思うが。
みんな、子供のころに「正義の味方」「悪の味方」で善悪がはっきりしたキャラクターのアニメやドラマで育ってきたから、正義、とは唯一無二の正しい道だと理解している。そんなにたくさん正義があってたまるか。
だから利害が対立したり、目的が違っている2者、3者がみんな正義、正義と言い始めるとみているほうが悩んでくる。千堂は上條の父を犠牲者にすることが自分の正義だし、上條は千堂の娘を犠牲者にすることで自分の正義を進めた。
このストーリー、正義、という言葉を「自分が正しいと思っている執着」と読み替えると割とスッキリ理解できる。このドラマの登場人物は単に自分のエゴを通しただけなのだ。
そう考えると、犠牲になった父の無念をとことん追いかけた上條より、自分の娘が殺人犯として逮捕された千堂の方が最終回でニコニコかつてのライバルに笑顔を振りまいていて、爽やかなヤツなのかもしれない。法律の世界は別として、誰が悪者かなんて、各々のエゴだけが判定できるのだ。