自分が自分で「本当の自分」を育て直す
私の鍼灸院には、めまい・不眠・うつ・パニック障害など、自律神経やメンタルの不調を抱える人らが、多く相談に来られます。
そうした方々のお話をよくお聴きすると、こんな信じ込みが隠れていることが分かります。
「人生、思い通りにいかないから、つまらない」
「いつも何かに邪魔されているようで、うまくいかない」
こうした信じ込みの更に奥には、「そもそも、生きることが困難だ」という信じ込みが隠れています。それで、人生=困難という公式によって、生きることに消極的になって、「喜び」よりも「苦しみ」を感じやすくなってしまうのです。
すると、なかなか「生きる価値」を見出せず、人生そのものに義務感を感じやすくなってしまいます。そして、主体的に生きることで得られる喜びを感じにくくなると、心身共に疲弊して、自律神経やメンタルの不調に陥ってしまうのです。
特に、今、「人生に疲れている」世代は、40歳~50歳代の方々です。
「四十にして惑わず、五十にして天命を知る」
これは、孔子が『論語』の中で、学問の姿勢や心の変化を述べた記述の中で、後世の人々に最も影響を与えたと言われる言葉です。
孔子のような偉人でさえも、迷いなく、自分を知り天命が明確になったのが40歳、50歳というのですから、多くの人が人生に対する意味を見い出せないのも当然なのかもしれません。
でも、現在の日本の状況をみると、そうは言ってられません。
2023年の国連が公表した世界幸福度ランキングによると、日本は137ヶ国中47位、主要7ヶ国中で最下位という結果でした。
この幸福度の低さは、自殺死亡率にも、そのまま反映されています。
また、年齢階層別の幸福度は、先進国、発展途上国、ともに40代後半が最も低いとうのが、世界共通の課題になっています。
また、40代後半の幸福度の低さは、自殺率の年齢階級別にも現れており、2022年は50歳代4,093(18,7%)、40歳代3,665人(16,7%)と上位1・2位を占めています。
日本での自殺の原因・動機として挙げられるのが、2位以下を大きく離して、健康面の問題です。
こういった40歳後半以降の幸福感の低さと自殺率の高さといった現状に対して、私たちは何を考える必要があるでしょうか?
“中年の危機” を自覚した時点で、早め早めに対処することが、今、急務になってきています。
でも、今、仮にあなたが、中年の危機の状況だったとしても、あなたは決して悪くはありません。なぜなら、中年の危機とは、中年世代の約80%が「自分とは何か?」と自我を問い直す、第二の思春期のようなものだからです。
これほど多くの人が、自我を問い直す理由として、「身体面の変化」と「環境の変化」、2つの側面が挙げられます。
40歳~50歳は、更年期症状、40肩、50肩などのように、何かしらの健康上のトラブルが起きやすい時期です。身体面の衰えで、かつて出来ていたことが出来なくなってしまうと、「以前はこんなでなかったのに…」と自信を失いやすくなります。
それに加えて、仕事や家庭など、自分が置かれた環境での立場や役割が、変化する時期でもあります。
たとえば、職場で人の上に立つようになると、それまでの自分では対処できない事態が、多く発生しています。
▶周りとの調和を重視して、ものごとを慎重に進めてきた人が、即断即決を求められる
▶理論的な説明や分析に長けている人が、取引先や部下の気持ちを惹きつける「共感力」を求められる
といったように、リーダーとして新たな「スキル」が求められるようになります。
中年世代の方は、環境の変化に伴って、何かしらの自己変革に迫られます。それにより、「これまで思っていた私」について疑念が生じ、改めて「自分とは何か?」と自我を問い直す機会が増えてくるのです。
ここまで、“中年の危機”を例に、人生の困難の背景について説明してきましたが、実は、私自身に、 “中年の危機”が訪れました。
では、次のパートで、私が、どのように、心と体も窮地に追い込まれてしまった“中年の危機”を乗り越え、お陰様で、人生を再生させられたのか、その物語に、しばし、お付き合いください。