ベビーカーを手放したら涙が止まらなくなった話し。
私は割と物を捨てられる人間だと思っている。
転勤族の夫と結婚する前から、何度も引っ越しを経験して来た。そんな事もあって、捨て癖が出来ているのか、その都度しっかり不要な物は捨てて来た。そのため自分自身の荷物はそこまで多くなく、物を管理するのが苦手な私にはちょうど良かった。
…がそれは自分のもの限定である。娘達の物になるととたんに思考が鈍ってしまう。
こんまりメソッドをご存知だろうか?有名だから知ってる人も多いと思うが、そのメソッドの一つに触ってみてトキメキを感じるものを手元に残すというものがある。素敵な考えであるが、それでいくと娘達のもの全てが愛おしい私には何も捨てれなくなる訳だ。何故ならトキメクどころの話しではないからだ。娘達の衣服や玩具、初めて切った爪や髪まで残している。
育児グッズなんて過酷な子育てを一緒に戦った戦友達で有る。一つ一つ手に取れば、娘達との思いでが蘇ってくる訳で…そんな事もあり私は全て手元に置いて置きたいと思ってしまうのである。
最近コンビのベビーカーを手放した。3万ちょっとするベビーカーで、当時のうちではチャイルドシートの次ぐらいに高い買い物だった。夫が早く手放したかったらしく、率先して動いてくれた。もちろん私の了承済みでだ。だが、内心かなり渋っていた。ベビーカーには沢山の思い出が詰まっていたからだ。いくらもう使っていなくても、手放したくなかった。
このベビーカーは私が夫の転勤先に帯同し始めた頃に買った物だ。その時長女はまだ3ヶ月だった。
飛行機から降りたったとき、9月の末とは言えない、刺すような日差しとむせ返る程の暑さに戸惑ったのを覚えている。
土地感も知り合いもいない南の島に置かれ、かなり心細かった。頼る当てはなく(今考えればそんな事もないかもしれないが)何をするにもハードルが高かった。加えて夫は南の島の部署についてからは、今まで以上に多忙だった。朝早く出社し夜遅く帰宅する日が多く、休日出勤も毎週あり出張も続いた。平日一緒に過ごせず(後に夫の部署は残業上限ギリギリで本社から苦言を言われている)この時あまりにも娘と2人だけで過ごしていたため、マンションの他の部屋の方から私達はシングルマザーと思われていたようだ。
3ヶ月の娘は夜泣きが酷く夜中に2回〜3回毎日起きていた。時より深夜に起きだした長女の対応に3時間は寝ずに付き合っていた事もあった。昼寝も抱っこでしか寝なかった。降ろせばギャン泣きで常に私のお腹の上で寝ていた。毎日疲れていた。家事も出来す、自分の事ももちろん出来ず、どんどんおかしくなって行きそうな恐怖感があった。そんな時に購入したのがこのベビーカーだった。長女は抱っこ紐拒否だったし、私もお下がりの頂き物抱っこ紐が自分に合っておらず、使いにくいのもあって常に素抱きで早朝の散歩をしていた。のでベビーカーに乗ってお散歩したり外出できたらいいなと思い買った。
購入して初めてベビーカーに長女を乗せた時、最初は何だか不快そうな顔をしていた。が、乗せて動き出すと、グズグズが弱くなっていき瞼が少しずつ落ちて行った。終いには眠りについた。勝ったと思った。希望の光が見えて来たと。たかたが15分か20分の散歩である。だが私にはそれだけでも嬉しかった。車に乗る時以外は肌身離さず私にくっついていた娘が機嫌よく寝てくれた。その事実だけで私は肩の荷が少し降りた。
そこからは乗ったり乗らなかったりを経験しながらも、ベビーカーと一緒に色んな所にいった。海にも山にも外食にも。思い出と共にあった。
だが、そんな日々も長くは続かず、少し早めの10ヶ月に入る前に娘は歩き出し、そこからベビーカー拒否が激しくなり娘は全くベビーカーに乗らなくなった。そして、ベビーカーはしばらく車のトランクでお役ごめんとなった。
1年ほど寝かされていたベビーカーは次女の出産により再び日の目を見ることとなる。次女の2週間検診にて再び動き出したベビーカーはまだまだ新品の様に綺麗であった。次女はすんなり受け入れまたベビーカーとの新しい日々が始まった。ただここに来て誤算があった。長女がまた再びベビーカーに乗り出したのだ。幸い次女用に買った抱っこ紐は私にも次女にもあっていたので、次女は抱っこ紐でだっこし、長女はベビーカーというスタイルで外出する事が多くなった。(なんなら2人で交互に乗ることもあった笑)
次女が1歳になる前に歩き出した。時に歩くのが楽しいのか次女はベビーカーを拒否を始めた。
もう潮時だった。ベビーカーは再び車のトランクにいくことになった。そんなタイミングで夫はベビーカーをメルカリに出品したいと言い出した。しょうがない事だと思う。今は誰も使わないし、今後使う予定もない。場所は取るし、何より転勤族である。しばらく賃貸は続く。(なんなら定年まで続く)物をたくさん保有はしてはいられない。
ベビーカーを出品したら、1週間もせず購入者が現れた。私はベビーカーの幌やシート部分の取り外しが出来る所を洗い日陰に欲した。そして骨組みの部分を除菌シートで丁寧に拭いた。取り外していた部品を全てつけ、とっておいた説明書をジップロックに入た。後は夫に任せた。夫は梱包を済ませすぐに宅配便で送ってしまった。
これで良かったのだ。もう誰も使わない。家にこれ以上あってもきっと邪魔になるだけ。ならば他の赤ちゃんに譲ろうと、そう思い自分を納得させた。そして娘達にバレない所で泣いた。きっともう2度と娘を乗せ推すことはない。それがたまらなく悲しかった。あの辛かった日々を助けてくれたベビーカーに感謝の気持ちもあった。
物への執着といえばそれまでだが、
確かにあれはあの時の私の戦友であった。そして、娘達の大切な安らぎだった。
もう戻って来ることはないあれが手放してしまうとなお愛おしくてたまらなくなった。毎日助けてくれてありがとう。次の場所で元気に働いてくれてたら幸いである。