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最近読んだ本(7)|「君の話」 #10

三秋縋の「君の話」を読みました。
来月6年ぶりの新刊が出るということで、折角だからそれまでにこれまでの三秋作品を復習しておこうと思い、いちばん新しい2018年発行の本書を読むことにしました。

《あらすじ》

二十歳の夏、僕は一度も出会ったことのない女の子と再会した。架空の青春時代、架空の夏、架空の幼馴染。夏凪灯花は記憶改変技術によって僕の脳に植えつけられた〈義憶〉の中だけの存在であり、実在しない人物のはずだった。
「君は、色んなことを忘れてるんだよ」と彼女は寂しげに笑う。「でもね、それは多分、忘れる必要があったからなの」
これは恋の話だ。その恋は、出会う前から続いていて、始まる前に終わっていた。

三秋縋.君の話.早川書房,2018,裏表紙より

この本の舞台も「夏」なので、まさに今の季節に読むべき本でしょう。

「近年開発された記憶改変技術によって人々に架空の過去の記憶を植え付けたり、あるいは忘れたい過去を記憶から消すことができる」というのが話の大枠です。

本書を買った時、私は大学生でしたが今すぐにでもこの技術を開発してもらって、その薬を買わせてくれと切実に思いました。
主人公が六歳から十五歳までの記憶を消すことを望んだように、できることなら私も現実の両親に関する記憶を完全に消去し、〈義憶〉によって別の両親から十分に愛され、温かい家庭で幸せに育ったという過去を手に入れたいと望みました。
(勿論、それは今でも思っていますが)

思うに三秋作品は、家庭環境に恵まれず、友人に恵まれず、恋人に恵まれず、といったような現実に欠落の多い人間に嵌るのではないかと個人的に思っています。
現実が満たされていなければいないほど、虚しければ虚しいほど輝きを増すような、そんな気がします。

なにはともあれ、来月の新刊の発売が本当に待ち遠しいです。


気になった方はぜひ読んでみてください。

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