【映画感想】『カメラを止めるな』撮影する人を撮影する映像

お久しぶりです、中島知花です。
上田慎一郎監督『カメラを止めるな』を視聴しました。きっかけはオモコロの原宿さんがなんかの動画(海老名のSAに行くやつ?)で「カメラを止めるな!」と叫んでいて気になったから。でも、劇中で「カメラを止めるな!」ってセリフあったっけ、「カメラは止めない、撮影は続ける!」ってセリフに覚えはある。

37分ノーカット生中継のゾンビドラマ、を撮影する人の話

 映画はいきなりゾンビドラマから始まります。わけも分からない状態で37分間つまらんゾンビドラマを見せられるのですが、この時に「退屈だな」と正直に思えば思うほど、後半のメイキングパートが面白くなる設計です
 ちょうど飽ききってスマホが気になりだしたあたりで、作中の視聴者がスマホいじってて笑っちゃった。そこも折り込み済みかい!
 観ていて「?」なところは、必ずメイキングパートで種明かしされるので、中盤からの爽快感がすごい。サスペンス好きな人っと、こういう快楽を求めてたりするのかな、クセになりそう。

一方向だけで人を判断してはいけない

 監督役を演じる監督(ややこしいな)の第一印象は最悪だ。俳優に詰め寄り、カメラを止めないことにメチャクチャ執着している。現場の空気を悪くしてるのはお前だろ!と毒づかれてそうな人。でも実際は、上位層に対してうだつが上がらない、こだわりの強い娘との関わり方に悩む、どちらかと言うと気弱なタイプに分類される苦労人。
 こういった監督のパーソナリティを知ってからゾンビドラマの冒頭を見ると「いいぞ!よく言ってやった!!」という印象に変わる。私はここに一方向だけで人を判断してはいけないという、マスメディアの自戒を感じます
 マスメディアによる偏見報道が糾弾される世の中。”監督”(映像を作る、発信者側の人間の象徴)を物語冒頭で偏見報道的に切り取って描き、メタ構造でマスメディアを皮肉っている……ような気がします。ウン、私が勝手に思っただけです。

 まぁ、人を多面的に捉えるべきというのは一つのテーマになっていると思う。俳優役もスタッフ役も、大体癖アリな人物像をしている。口の悪い凝り性な監督志望の子とか、アル中でどうしようもない俳優のおっちゃんとか……。だけど、身の置き場や状況次第では突如活躍できるのだ。というか「ワンカット撮影中」という袋小路に追い込まれたら、もはや活躍するしか ない

 今持っている能力やその場にいる限られた人材を使って、ギリギリその場を凌ぐ「現場ならではのドタバタ感」。私は演奏会(お芝居の舞台ではない)の舞台運営をしたことがあるが、何となく似た雰囲気を感じる。「現場ならではのドタバタ感」が愛おしい。

エンドロールは、撮影する人を撮影する映像

 エンドロールまでサービス満点。「撮影する人を撮影したんだから、その撮影者も見せてよ」という我々視聴者のスケベ心を満たしてくれます。
 メタ構造が大好物な人、舞台裏を経験したことのある人。そんな人におすすめの映画です。


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