【読書記録】知念実希人『レゾンデートル』こんなアルジャーノン効果あるか
知念実希人『レゾンデートル』読了しました。
デビュー作ということで、ストーリーは粗削りな印象。末期がん患者が一時的にパワーアップして、スーパーマンみたいに活動する設定にはさすがに無理がある。「こんなアルジャーノン効果があるか!」とレビューでツッコんでる人を見かけて笑いました。私はこのハチャメチャなノリは嫌いじゃないです。
あらすじ(Amazonより引用)
幻のデビュー作!
サスペンス×ミステリー
私がジャックです――
殺人者の〈存在理由〉とは?
末期癌を宣告された医師・岬雄貴は、酒浸りの日々を送っていた。
ある日、不良から暴行を受けた岬は、復讐を果たすが、現場には一枚のトランプが――。
そのカードは、連続殺人鬼「切り裂きジャック」のものと同じだった。
その後、ジャックと岬の奇妙な関係が始まり……。
最注目作家、幻のデビュー作!
2年連続本屋大賞ノミネート、知念実希人の魅力が凝縮!
(『誰がための刃 レゾンデートル』改題・改稿)
【目次】
プロローグ
第一章 否認
第二章 怒り
第三章 取引
第四章 抑うつ
第五章 受容
エピローグ
”死の受容”に沿った章分け
精神科医エリザベス・キューブラー・ロスは死を受容するまでの段階を5つに分けて認知しました。
第1段階:否認と孤立
第2段階:怒り
第3段階:取り引き
第4段階:抑うつ
第5段階:受容
はい、そのまんま小説の構成です。ちょっとだけグリーフケア分野を齧ったことのある私は、目次を見た時点で大興奮。そもそもレゾンデートルという表題自体も「存在意義、存在理由」という意味の哲学用語です。
お医者さんが考えたグリーフケアの物語ってどんなものなんだろう?とワクワクしながら購入しました。……思えば、ここで期待値を上げ過ぎたのかも知れません。
末期がん患者がチート医学の力で大暴れ……?
無理がある。お医者さんが書いたからオールオッケーにはならんやろ。こんな粗削りなアルジャーノン効果があってたまるか。第5段階:受容にあたる章なんてバチバチにラストバトル中で、しっとり死を受け入れる描写が弱い。
……だけど不思議と読了感は悪くなかった。後にジュニア向けの「天久鷹央」シリーズが跳ねたと聞いて納得。あのノリはもっと若い子にふさわしい。
あと思うのは、物語進行上の都合でヒロイン沙耶がバカな女になってるのが気になる。凶器の隠し場所にいつまでも気付かないとか、あっさり人質にされるとか……。デビュー作ならではの味といえばそうなんだけど…ウーン🤔
でもなぜか嫌いになれない
なーんか好きなんですよね、この作品。残りわずかな命を、大切な女性の為に燃やし尽くす…熱い恋愛ストーリー…。私には不得意な分野のはずなのに、妙に惹きつけられてしまいます。私って実は恋愛小説イケるんだ?という発見を得た読書体験でした。