【視聴記録】映画『最強のふたり』各々が最強
映画『最強のふたり』アマプラで見ました。
フランソワ・クリュゼとオマール・シーの演技が絶妙。障碍者や人種への偏見を逆手に取った皮肉に一瞬ドキッとするのに、この映画は軽快に笑い飛ばせるジョークとして伝わってくる。「被差別者が手を取り合ってひたむきに生きていて感動した(涙)」みたいなこと言う不届き者を蹴散らしてくれるパワーがあります。
このチョコレートは健常者用だ
フィリップ(フランソワ・クリュゼ)は、趣味のパラグライダーでの事故が原因で、後天的に首から下が麻痺状態になりました。フィリップは資産家で金銭に余裕があるため、住み込みの介護人を雇います。が、まったく定着しない。ドリス(オマール・シー)が面接にやって来た時の他の面々は、フィリップを一人の人間として見ていない。歴代介護人の解雇理由はこれです。
ドリスはハナから失業保険目当てで面接に挑みましたが、フィリップはあえてドリスを採用します。「するな」と言われたことには抵抗したくなるお年頃。仕事ぶりは素人だし雑だし口も悪い(見出しはドリスのセリフ)けれど、フィリップは障碍者に対してフラットな姿勢を見せるドリスをいたく気に入ります。
ドリスは痛快なジョークでフィリップの鬱憤を吹き飛ばす。
フィリップはオーケストラを聴かせる等、文化的な刺激をドリスに与える。
異文化交流を経て、彼らは唯一無二の「最強のふたり」になるのです。
感動ポルノをやっつけちゃって
私が一番印象に残ってるシーンは、恋の問題で落ち込んでいるフィリップにドリスがパラグライダーをさせる場面です。
パラグライダーは、フィリップが半身不随になった原因。今でもPTSDに悩まされていて、恋の問題も障碍が引き金だと言うのに。普通そんなんする?
A.ドリスという男はする。でもそんなドリスだから、フィリップはドリスと一緒にならパラグライダーにもう一度乗っても良いと思えたのです。
障碍者のチャレンジ企画は大抵の場合「障碍者でも出来たね^^」みたいな感動ポルノとして消費されます。信頼できる介護士さんとの絆が~とか、皆の愛の力で~とか言い出す。感動ポルノが見せようとするストーリーは、介護者と被介護人の共依存です。
それに対して『最強のふたり』はパラグライダーチャレンジを薄味で終え、二人の精神的自立を目指す対話のシーンにウェイトを置きます。『最強のふたり』が見せるストーリーは、健常者が主人公の物語の時と同じ、主人公の自立を目指す成長物語です。
最強”の”ふたり
『最強のふたり』と聞いて私は日本語に違和感を覚えました。「なんで”の”なんだ?」と。『ふたりはプリキュア』って言うし、山本譲二は「二人で一つの人生を」って歌ってる。うん、分からん。
ただ少なくとも、フィリップとドリスが各々に最強だという意図なのは確かです。どちらかが欠けても最強だし、二人揃うとなおのこと最強です。
……ところでなんでバトル作品でもないのに”最強”?タイトルを日本語訳した人、なにを思ったんだろう。
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