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ガルマはホントは実力者!?アムロ「ガンダム、僕はもう疲れたよ」~機動戦士ガンダム 第6話「ガルマ出撃す」感想

前回第5話で、大気圏突入時にシャアの襲撃を受けるもなんとか逃げ切ったホワイトベース。しかし、安心したのも束の間、降下先はジオン軍の勢力圏内だった。ガルマ率いるガウ攻撃空母がホワイトベースに接近する。

ガルマ

ガルマ「よう、シャア。君らしくもないな、連邦軍の船1隻にてこずって」
シャア「言うなよガルマ。いや、地球方面軍司令官ガルマ・ザビ大佐とお呼びすべきかな」
ガルマ「士官学校時代と同じガルマでいい
シャア「あれが木馬だな?」
ガルマ「うん。赤い彗星と言われるほどの君が仕留められなかった船とはね」
シャア「わざわざ君が出てくることもなかったと言いたいのか?」
ガルマ「いや、友人として君を迎えに来ただけでもいい、シャア」
シャア「大気圏を突破してきた船であるということをお忘れなく」
ガルマ「ああ。その点から推測できる戦闘力を今、計算させている。君はゲリラ掃討作戦から引き続きだったんだろ、休みたまえ」
シャア「お言葉に甘えよう。しかし、ジオン十字勲章ものであることは保証するよ」
ガルマ「ありがとう、これで私を一人前にさせてくれて。姉に対しても私の男を上げさせようという心遣いだろ?」
シャア「フフッ、はははは、ははは!」
ガルマ「笑うなよ、兵が見ている」

ガルマはザビ家の末弟で階級は大佐、ジオン軍の地球方面軍司令官である。ガルマの立場をたとえるなら、同族会社の社長の息子が若くして重役に就任しているといったところか。

ガルマはコンプレックスの塊だ。ガルマ自身も自分が実力で今の地位に上り詰めたとは考えておらず半人前だと認識している。だからこそ、ホワイトベースを沈め手柄を立てることで一人前になりたいと躍起になっている。

そんなガルマにとって、実力で手柄を立てて少佐にまで上り詰めたシャアと比較されることはコンプレックスを刺激されるつらいことだろう。

そのシャアとガルマは士官学校時代の同期で、会話から察するにかなり親密な関係にある。

この2人の関係は少々不思議だ。

先ほど述べたように、ガルマにしてみればシャアと一緒にいるとコンプレックスを刺激されるはずで、あまり一緒にいたい相手ではないはずだ。

しかし、同期が「手柄を立てる=一人前になれる」絶好の機会を運んできてくれたという以上に、ガルマはシャアに親近感を感じているように見える。

他方、シャアは腹に何かを隠している。それはのちほど判明する。

リードとブライト

リード「ガンダムを出動させれば事はすむんだよ。このジオン軍の壁を突破するにはそれしかない」
ブライト「アムロには休息が必要です」
リード「しかし、今までの敵と違って戦力をそろえてきているんだぞ」
ブライト「敵の出方を待つしかありません」
リード「私が指揮するんだ。コアファイターが1機、ガンダムが1機、これで中央突破する」

前回第5話からホワイトベースに搭乗しているリード。現時点ではリードがホワイトベースの指揮官のようだ。階級や地位はリードが上なのだろう。

しかし、ブライトは第4話でパオロからホワイトベースを託された身だ。シャアを幾度となく撃退してきた実績とプライドがある。

ブライトとリードとはとにかく馬が合わない。ブリッジでまるで子供のような言い争いをする。

リード「ええい、やめないか、騒がしい!」
キッカ「うわわああぁぁぁ!」

リードはブリッジで騒ぐ子供たちを怒鳴りつけ、キッカが泣き出してしまう。

リードもルナツーから出撃して大気圏突入時にシャアの襲撃を受け、今またガルマの攻撃を受けている。気の休まる暇がなく気持ちに余裕がない。それを子供たちを怒鳴りつける描写で表している。

指揮官のいないホワイトベース

アムロ「ブライトさん、行きます」
ブライト「アムロ」
アムロ「事情はセイラさんから聞きました」
ミライ「大丈夫なの?」
フラウ「無理をすれば敵に隙を突かれるだけよ」
カツ、レツ、キッカ「自信あんの?アムロ」
アムロ「自信の問題じゃない。やるしかないんでしょ?ブライトさん」
ブライト「ああ」
リード「ブライト、ガンダムを行かせろ」
ブライト「ガンダムは空中戦用の兵器ではないことをお忘れなく。ましてアムロです」
ハヤト「あの、接近戦にはならないはずです。ガンタンクで狙撃するっての、どうでしょう、アムロの負担も少なくなるし」
アムロ「ハヤト」
ブライト「了解だ。ガンダムからガンタンクへ換装を急げ。コアファイター2機は迎撃要員として残せ。よろしいですね?」
リード「突破できるんだな?」
ブライト「わかるものか」

ブライトはガンダムを出撃させることに反対である。パイロットであるアムロが過労気味だし、空中戦用の兵器でないガンダムでガルマ率いるドップの編隊を撃退できるかも不明だ。

このブライトの意見も十分理解できる。しかし、ブライトに何か別に構想があるのかというと「敵の出方を待つしかありません」と作戦らしい作戦は持ち合わせていない。

結局ハヤトの提案でガンタンクで出撃することになった。

しかし、ガンタンクは2人乗りである。ハヤトとアムロでガンタンクを動かすことになったわけだが、これがあとあと効いてくる。

ホワイトベースには確固たる指揮官がいない状況だ。

形式的にはリードが指揮官だが、ブライトは素直にその指示に従わない。それは、これまでホワイトベースを運用しジオン軍を撃退してきたという自負があるからである。

しかし、そのブライトも、ガンダムやそのパイロットであるアムロとの関係もあってうまく運用できているとも言い難い。

素人集団だから仕方ないとも考えられるが、それ以上にブリッジの人間関係の悪化の方が深刻化しつつある。

トゲのあるミライ

ミライ「ブライト、敵が攻撃を控えているのはなぜかしら?」
ブライト「このホワイトベースを無傷で手に入れるつもりなのだろうな。高度を下げろ、ミライ」
ミライ「了解」

このミライの「了解」の言い方に少々トゲを感じたのは自分だけか?

普段のミライならもう少し丸みのある声だと思うのだが・・・。

食い違うアムロとハヤト

ハヤト「アムロ、ホワイトベースから出たらなるべく離れてくれ。敵の隊列を混乱させよう」
アムロ「賛成できないな、そうだろう、敵の狙いはホワイトベースだ、離れたら援護ができなくなる」
ハヤト「違うんだアムロ。ガンタンクなら敵の注意を十分に引けるから敵の戦力を分散させるために」
アムロ「ハヤトは敵を一機でも多く撃ち落せばいいんだ」

さっそく意見が食い違うパイロット2人。人間関係の軋轢を丁寧に描いている。

なお、このあたりからホワイトベース内の人間関係全体からアムロの心情に描写の中心が移っていく。

ホワイトベースの想定とガルマ地上部隊

ガルマ「山を盾にしようとてそうはさせぬ。地上部隊を前進させろ。敵艦を捕捉、占拠するぞ」

ホワイトベース側は空中戦を想定していた。そのため、高度を下げ山を盾にして敵の攻撃を防ぎつつガンタンクを出撃して地上からドップを狙撃する作戦をだった。

しかし、ガルマは地上部隊を展開。ホワイトベースを空と地上双方から攻撃し、捕捉・占拠してしまおうという作戦だ。

この時点でホワイトベース側はまだ地上部隊の存在に気づいていない。

右?左?

アムロ「ハヤト、どっちだ?」
ハヤト「右後方旋回」

ハヤトは左方を見ながら「右後方旋回」とアムロに指示する。

ハヤトに「右後方旋回」といわれたアムロはガンタンクをに旋回させる。

このシーンのセリフと作画の食い違いは単なるミスであろう。

リードvsブライト

ブライト「前部主砲、マゼラアタックを集中攻撃」
リード「きさま、後退せんのか」
ブライト「ホワイトベースに関しては初めて扱われるあなたよりは私達の方が慣れています」
リード「きさま、軍紀違反で」
ブライト「敵の包囲網を突破してご覧に入れればよろしいのでしょう?」

前方から地上部隊マゼラアタックが接近、リードは後退・転進を命令する。

しかし、ブライトは「ホワイトベースに関しては初めて扱われるあなたよりは私達の方が慣れています」、「敵の包囲網を突破してご覧に入れればよろしいのでしょう?」と言い切り、ホワイトベース主砲での攻撃を指示する。

ここまで言うからには作戦成功は絶対条件である。ブライトも自分の首をかけた発言だ。はたしてブライトにどんな作戦があるのか。

「一人の方が戦いやすい」

ハヤト「アムロ、敵は僕達がホワイトベースの前にいる以上、規則的な攻撃を強めてくるばかりだ」
アムロ「ホワイトベースを離れるわけにはいかない、このまま突っ込んで脱出路を作るんだ。」
ブライト「アムロ、ブライトだ、君に頼みたい。マゼラアタックに対してガンタンクは小回りが利かない。ガンダムで、ガンダムでやってくれるか?」
アムロ「ブライトさん」
ブライト「頼む。ガンタンクの方はリュウに操作させる」
アムロ「ブライトさん」
ハヤト「アムロ、ブライトさんの言う通りだ、マゼラアタックは」
アムロ「(一人の方が戦いやすいか。)了解です。ガンタンクはカイかセイラさんに操縦させてください。セイラさんならできるはずです」

相変わらず合わないハヤトとアムロ。そこにブライトからガンダムに乗ってほしいとの通信が入る。アムロも「一人の方が戦いやすい」と思ってこの命令を受け入れる。

表面上は、ブライトの指示に従ってガンダム出動の流れだが、実際にはハヤトとの共同作業から逃げるようにガンダムに乗り込むアムロ

クルー同士もバラバラの状態だ。

ひと休み

フラウボウ「飲んでって、栄養剤よ。こんなことしかできないけど」
アムロ「ありがとう」
フラウボウ「頑張ってね」

オーバーワークのアムロを気遣うフラウボウ。ホワイトベース内のぎすぎすしたやりとりが続く中、こういう描写が一服の清涼剤になっている。

重苦しいシーンの連続で視聴者も食傷気味になっているところに、ホッと一息付けるシーンだ。

イライラもピークに

セイラ「リュウ自信がなければいいのよ」
リュウ「やむを得んでしょう。発進します」
アムロ「僕だって自信があってやるわけじゃないのに」
セイラ「アムロ何か言って?」
アムロ「いや、アムロ、ガンダム発進します」
セイラ「急がないで、ガンタンク発進までスタンバイです」
アムロ「もう、これだ、すべてこれだ」

愚痴をこぼすアムロ。セイラとリュウの何でもない会話がいちいち気になってしまっている。イライラがピークに達しているようだ。

シャアの本音

シャア「ガルマが苦戦して当然さ。我々が2度ならず機密取りに失敗した理由を彼が証明してくれている。しかも我々以上の戦力でな。ドズル将軍も決して私の力不足ではなかったことを認識することになる」
シャア「(彼がガンダムと戦って死ぬもよし、危うい所を私が出て救うもよしと思っていたが)」

ガルマとの旧交を温めていると思ったら、本心はこれである。

シャアはホワイトベースを撃退することができなかった。しかし、それは自分たちの実力不足が原因ではない。ガルマが自分たち以上の戦力でホワイトベースを攻撃しているが苦戦している。そのことがなによりの証拠だ。上司であるドズルもそのことを理解してくれるだろう。

これを部下であるドレンにはっきりと言ってしまうところにシャアの冷徹さ、無慈悲さが見て取れる。

もう1つ、シャアはガルマが死ぬこともなんとも思っていない、むしろそうなった方が自分の評価が上がるとでも考えているようだ。士官学校の同期であろうが友人であろうが気にしない。むしろ、ガルマというザビ家の人間をとことん利用してやろうという感じだ。シャアの狡猾さを表している。

この部分はドレンにも秘密にしているシャアの本音である。

重力下の初出撃

アムロ「行きます。うっ、お、落ちる」

地球の重力下での初のガンダム出撃。今回は、ホワイトベース内やアムロの心情、ガルマとシャアの関係など、盛りだくさんの内容にもかかわらず、重力の影響を丁寧に描いている。細かい部分だが、こうした描写が物語のリアリティを醸し出している。

アムロ「リュウさん、うしろ、うしろ!」

これは「8時だョ!全員集合」へのオマージュである(異論は認めない)。

一時危機的な状況に陥りつつも、鬼気迫る形相でザクとドップ、マゼラアタックを破壊していくアムロ。

今回連邦軍が勝てたのはアムロの働きによるものだろうか、それともガンダムの性能か、はたまたガンタンク、コアファイター、ホワイトベースとの連携がうまくいったからか。そのあたりはよくわからない。

あえてはっきり描いていないのではないかとさえ感じる。

今回の戦闘シーンはもっぱらアムロの視点から描かれており、戦況全体が把握できるようにはなっていない。アムロに焦点を絞ることでその心情の推移を綿密に描こうとしているのだろう。

ブライトにかかる重責

ミライ「ブライト」
ブライト「うん、山沿いに大陸に入るしかないな」
ミライ「そうね。ガルマ・ザビに占領されたといっても、まだ大陸には連邦軍の地下組織が抵抗を続けているはずよ」
ブライト「どうやって接触するかだが」
ミライ「ブライト、今はみんながあなたをあてにしているのよ」
ブライト「わかっているミライ。さあ、ガンダムの戦士を迎えよう」

ブリッジではブライトとミライが今後のホワイトベースの進路を相談中である。ここにリードが入っていないところがホワイトベースの指揮系統の不明瞭さを物語っている。

他方、ブライトにも重責がのしかかっている。ミライの言う通り、今ホワイトベース内の空気を作っているのはブライトだ。

クルーも、リードのようなぽっと出の指揮官よりも、これまでともに戦局を乗り切ってきたブライトの方を信頼している。

ブライトにもその自覚があるからこそつらい部分もある。

暖かい出迎えを無視するアムロ

フラウボウ「アムロ、お疲れさま。アムロ」

フラウボウにすら何も言葉を返さないアムロ。体力的に疲れ切っているという以上に人間関係に疲れたという印象だ。

第2話、第3話では、意気揚々とブリッジに戻ったらブライトからお小言が返ってくるだけだった。

今回はそれとは真逆で、ブライトも「ガンダムの戦士を迎えよう」と言っているし、リュウ、カイ、ハヤト、セイラが出迎えてくれている。実際にアムロを労う言葉もかけてくれている。

しかしそれらをすべて無視して自室に戻ってしまうアムロ。

キッカ「アムロ、キッカ達お祝いのパイ大急ぎで作ったのよ」
レツ「シャンペンも持ってきたからさ、アムロ」
カツ「パイで乾杯しようよ」
ハロ「アムロ、カンペー、アムロ、カンペー」
アムロ「一人にしてくれよ、な」
キッカ「なによアムロ、いーだ」

前半リードがキッカ達を怒鳴りつけたのと対をなすシーンである。

リードのように怒鳴りつけてこそいないが、アムロもそっけない態度をとって部屋に籠ってしまう。アムロの精神的な疲弊、余裕のなさを表現している。

シャアの企み

ガルマ「シャア」
シャア「ガルマか」
ガルマ「なぜあの機密のすごさを教えてくれなかったのだ?」
シャア「言ったさ、ジオン十字勲章ものだとな。次のチャンスを狙っているんだろ?」
ガルマ「ああ、抜かりはない」
シャア「俺も協力する。君の手助けができるのはうれしいものだ」
ガルマ「助かる、君の力を得れば百人力だ。これでキシリア姉さんにも実力を示すことができる」
シャア「キシリア殿は君の直接の上司だったな?」
ガルマ「シャア」
シャア「なんだ?」
ガルマ「私はよい友を持った」
シャア「水臭いな、今更。はははは!」

やはりガルマはシャアとの友情に何の疑問も感じていない。

他方、シャアはガルマのことなどなんとも思っていないようだ。むしろ、ガルマをどう利用してやろうかとさえ考えている節がある。

このシーンのラスト、片目がきらりと光り、ニヤリとするシャア。ガルマに口では協力するといいながら、腹では何か別のことを企んでいる。

第6話の感想

ガルマの攻撃を何とか凌いだホワイトベース。しかし、ジオンの勢力圏内にあることは変わらない。ガルマも二の矢三の矢を用意している口ぶりである。

他方、アムロは連戦につぐ連戦の疲労もあるだろうが、ホワイトベース内の人間関係に疲れた様子で、全てをシャットアウト。

リードとブライトとの軋轢も解消されないホワイトベース。

果たして、ガルマの追撃を振り切ることはできるのか?

今回は戦闘よりも人間ドラマに重点を置いた回だった。ホワイトベース内のぎすぎすした人間関係とアムロの疲弊していく様を丁寧に描いていた。

ガルマの人物像の考察

ここでガルマのキャラについて考えてみたい。今回、シャアとの会話からガルマのキャラについても分かったことが沢山ある。

コンプレックスの塊であること、手柄を立てて一人前になりたいと考えていること、シャアとの関係に何の疑問も持っていないことなどである。

ガルマの立ち位置について「同族会社の社長の息子が若くして重役に就任している」と表現した。

こうした場合、一般的には他の社員から「あいつはザビ家のおぼっちゃんだから大佐なだけで、何も手柄を立てていないじゃないか」とか「何の実力もないくせに出世しやがって」的な目で見られがちである。現実の社会でもそういう人間はいるだろうし、映画やアニメ、小説、漫画などでもよく描かれるパターンである。

ガルマをそういうおぼっちゃんキャラで描こうとするのであれば、そうしたシーンが必ず入るはずであるが、「機動戦士ガンダム」のアニメを見る限りそういう描写はない。

だとすると、実はガルマはいわゆる「おぼっちゃんキャラ」ではなく、部下からの信頼も勝ち得ているそれなりに実力の伴う人物なのではないか。

実際、ドップでホワイトベースを空から攻撃し、ホワイトベースが山を盾に防御態勢に入ったらすかさず地上部隊を展開している。的確にホワイトベースを追い詰めている。

また、ガンダムを見て「この大戦の戦略を塗り替える戦力だ」と即座に見抜いている。

前回第5話の感想で、「ガルマは小物」と述べたが、その認識を変更する必要があるかもしれない。

いずれにせよ、ガルマそして何か企んでいるシャアから目が離せない展開である。

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