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「あれはいいものだ!」こざかしいマクベの凛とした最期~機動戦士ガンダム 第37話「テキサスの攻防」感想

「ドズルにしてもっともなことであるよ」

ナレーター「ソロモンの攻略戦が終わった。ドズル中将旗下の宇宙攻撃軍は事実上壊滅した。ジオン公国にとっては予想だにしなかった敗北であった。デギン・ザビ公王は、ドズルにしてもっともなことであるよ、とギレンに答えたという。ギレンはその公王に怒りを覚えつつも、綺羅星のごとく居並ぶ高官達の前で叫んだ。ア・バオア・クーを最終防衛線として連邦を撃つ、と」

ソロモン攻略戦の敗北を受けて、ギレンが高官達の前で演説をしている。ギレンの演説が描かれるのは2回目だ(1回目は第12話「ジオンの脅威」)。今回はセリフなしのナレーション処理である。

デギンの「ドズルにしてもっともなことであるよ」とはどういうことだろう。そして、これに対しギレンが怒りを覚えるのはなぜだろうか。

前回、前々回とドズルは「ジオンの栄光、この俺のプライド、やらせはせん、やらせはせん!やらせはせんぞーっ!」といって戦場で散っていった。「私は軍人だ」という言葉の通り、まさに軍人として最期の最期まで戦っていた。こうしたドズルの気質をよく理解していたデギンは、ドズルならこういう最期を選ぶだろうと考えたのだろう。

しかし、この発言だけをみればデギンには危機感が足りていない。

これまで戦争を有利に遂行していたジオン軍、宇宙空間はルナツーを除いて完全にジオンが掌握していた。その原動力となったのはモビルスーツである。

連邦軍もガンダムをはじめとしてモビルスーツを多数開発し、運用を開始している。戦艦による戦闘ではなくモビルスーツ同士の戦闘に時代は完全に移行した。

ソロモン戦は、ジオン軍、連邦軍ともに多数のモビルスーツで部隊編成し正面からぶつかった初めての戦闘である。その戦闘でジオンは大敗を喫してしまった。モビルスーツを先行して開発運用していたというアドバンテージはもう存在しない。

オデッサの戦いで敗北し、連邦軍の宇宙での反撃が開始された。その緒戦というべきソロモン攻略戦でも敗北したジオン軍。地球のみならず宇宙空間でのパワーバランスも動きつつある。

それ以上に大きいのはドズルに死亡による兵士、ジオン国民の士気への影響だ。すでにジオン軍内には厭戦気分が蔓延しており、それはいずれザビ家への不満・反発という形で噴出するはずだ。

ギレンは絶大な人気を誇るガルマの国葬を盛大に行うことで戦意高揚につなげようとしていた。しかし、それはジオン国民の憤懣を連邦政府に向けさせ、ザビ家への批判が表出しないようにする対症療法に過ぎない。

こうした状況にあってソロモンが陥落し、ドズルも戦死した。「この戦争、本当に勝てるのか?」という不安感がジオン国民の中醸成されたはずだ。

こうしたジオンの置かれた状況に対する危機感がデギンからは感じられない。ギレンはそのことに苛立っているのだ。

「いつか話せるようになったら話すよ」

アムロ「フラウ・ボゥもいろんな事やらされて大変だね」
フラウ「アムロに比べたら楽なものよ」
アムロ「いつからだっけ?」
フラウ「何が?」
アムロ「僕ら、話しなくなって」
フラウ「そうね、無我夢中だったからね」
アムロ「うん」
フラウ「コンピュータの内診は異常なしよ。アムロって恐いくらいたくましくなったのね」
アムロ「え?」
フラウ「あたしなんかには届かなくなっちゃったのね。でもいいのよ。弱虫のアムロなんて見たくもないし、みんなこうして大人になっていくんでしょ?」
アムロ「ご、ごめん。フラウ・ボゥ、なにも僕」
フラウ「いいんだってば。でも、サイド6で何かあったの?アムロ、変わったみたい」
アムロ「そ、そうかい?べ、別に。・・・いつか話せるようになったら話すよ。いろんなことがあったんだ」
フラウ「そう」

ソロモン攻略戦の直後のホワイトベース内。ブライトも就寝中である。ただ、寝ている場所がブリッジだし、マーカーも稼働中であるところを見ると、ジオン軍の残党にまだ油断できない状況ということだろう。

医務室でフラウボウがアムロの血圧を測る。ここでアムロがフラウボウに「いつからだっけ?」「僕ら、話しなくなって」と訊ねるのは第33話「コンスコン強襲」でのセイラの発言が伏線となっている。

セイラ「ねえアムロ、あなたフラウ・ボゥのことどう思ってるの?」
アムロ「え?な、なぜですか?」
セイラ「なぜって、あなた最近フラウ・ボゥに冷たいでしょ?」
アムロ「そんなことないですよ」
セイラ「そうかしら?こんな時だからこそ友情って大切よ」
アムロ「別に嫌いになってるわけじゃあ。」

第33話「コンスコン強襲」

フラウボウの「サイド6で何かあったの?」という問いに対し、アムロは「そ、そうかい?べ、別に」と一旦は言葉を呑み込んだ。しかし、そのあと「・・・いつか話せるようになったら話すよ。いろんなことがあったんだ」と答える。

アムロはサイド6で色々なことを経験した。父親テム・レイとの再会と惜別。ララァ、シャアとの出会いもあった。こうしたことをアムロ自身どのように整理すればいいのかよくわかっていないはずだ。ちなみに私もまだよくわかっていない。

しかし、そうした自分の感情を説明できないからと言って「別に」とか「なんでもない」などと言って話をはぐらかすのではなく「話せる時がきたら話す」と答えるのは態度として誠実だ。

自分で整理しきれていないものがあるということをアムロ自身が認識できているということでもある。こうしたところにアムロの成長を見てとることができる。

テキサスコロニー

ナレーター「ソロモンを抜け出した敵艦の掃討作戦に就くホワイトベースはテキサスゾーンに入った。暗礁空域である。レジャーと牧畜業を専門に造られたこのコロニーはテキサスと名付けられ、軍事的にはなんの重要性も持たぬ為に取り残されている。それを囲むように岩とコロニーの残骸が浮かぶ」

描かれているのは月だ。テキサスコロニーは月の近くにあるようだ。月にはキシリアの拠点であるグラナダがある。前回、ソロモンの援軍としてグラナダから出撃したマクベ隊だが結局間に合わなかった。

マクベ「どうだろう?大佐はこのグワジンでゼナ様をグラナダへお届けしろ。私はチベに移り、今後の連邦の動きを見届けたいのだ」

第36話「恐怖!機動ビグ・ザム」

戦闘後、マクベはチベに移り、情報収集と脱出者救助活動を行なっている。今回はマクベとテキサス周辺でぶつかりそうだ。

シャア「まだテキサスには着いておらんのか?エルメスとビットは」
マリガン「整備が遅れているようです」
シャア「まあいい、私のゲルググが届いているだけでもな。テキサスには人はいるのか?」
マリガン「さあ、昔の従業員とコロニーの管理省の役人がわずかにいるようですが」
シャア「無人コロニーみたいなものか」
マリガン「はい。木馬はどうします?」
シャア「近くにマ・クベがいるだろ?」
マリガン「はい」
シャア「こちらは手持ちの武器がないのだ、奴にやらせろ。ザンジバルはテキサスに入港する」

こちらはザンジバル。前々回、援軍としてソロモンに向かうよう指示を受けたシャアだが、結局戦闘には一切参加することはなかった。そのザンジバルもテキサスを目指して航行中である。

シャアのセリフからテキサスにエルメスとビット、ゲルググというモビルスーツが届く予定のようだが、ゲルググ以外はまだ届いていない。後ほど判明するがエルメスはララァのためのモビルスーツである。それがまだ届いていないということはララァの出番は今回もないということだ。どこまでももったいぶる展開である。

シャアはホワイトベースの接近も捕捉しているがマクベに任せろといってさっさとテキサスに入港する。ただ手持ちの武器がないというのであれば、ソロモンへのザンジバルが駆けつけたとしてもなんの役にも立たなかったのではないか。それとも一度テキサスコロニーへ寄ってエルメスとゲルググを回収してソロモンへ向かう手はずだったのか。いずれにせよザンジバルは援軍としては何の役にも立ちそうにない。

マクベ出撃

マ「フフ、予定通りだな。木馬をキャッチできたか。ウラガン、私のギャンの整備はどうかな?」
ウラガン「はい、いつでも」
マ「ようし、エリア2まで進んでリック・ドム発進、私もギャンで出動する」
ウラガン「しかし、マ・クベ大佐みずからお出になることはないと」
マ「あるのだな」
ウラガン「は?」
マ「ギャンは私用に開発していただいたモビルスーツだ。キシリア少将へ男としての面子がある。それにシャアには例のモビルスーツが届いていないという話だ。きゃつの前で木馬とガンダムを仕留めてみせるよ」

今回はマクベがギャンというモビルスーツで出撃するようだ。

マクベは、何やら陶器を愛でながらウラガンに指示する。ここでマクベが手にしているのは第16話「セイラ出撃」に登場したものとは形状が異なる。これもマクベがオデッサの戦いで敗走した際に宇宙へ持ち出したものだろう。

第16話

ところで、今回マクベ自らが出撃する理由はなんだろうか。マクベが語ったところを確認すると、(1)キシリアに対する男としての面子、(2)シャアへのあてつけ、の2つである。ろくな理由ではない。

戦術的な理由が一切語られていない。前回のドズルと比較してマクベは戦争下手ということなのか。それともただのストーリー上の都合か。

ジオン兵A「ポイント3AAに木馬キャッチ。各員戦闘配置に就け。リック・ドムは敵戦闘爆撃機に対して先制攻撃を掛ける」
マ「ガンダムが現れたらテキサスへ誘いこめ。このギャンにはその方がやりやすい」
ジオン兵B「は、心得ております」
マ「よーし、ゆけ」

他みんなかっこいいのにギャンだけギャン

モビルスーツギャンは西洋騎士の甲冑を思わせる造形だ。骨董品好きのマクベの趣味がよく表れている。はたしてその性能は?そしてマクベの操縦技術は?

ガンダムを倒せば二階級特進

マ「ウラガン、木馬の足を止めるのは任せたぞ。相手は1隻だが油断はするなよ」
ウラガン「了解であります。出撃なさってください」
マ「作戦通りやれ。テキサス近くで私は仕掛けを作る。ガンダムを倒せば二階級特進ものだということを忘れるな」

第32話「強行突破作戦」でドムやムサイをバッサバッサと薙ぎ倒し、伝説となったガンダム。「ガンダムを倒せば二階級特進」というのは、ジオン軍の中でガンダムの存在がそれだけ大きいものになっていることの裏返しである。

マクベはテキサス近くで「仕掛け」を作ると言っているが、それは後ほど明らかになる。さぁ、いよいよ戦闘開始だ。

ニュータイプの戦闘

セイラ「来るわ、アムロ。見えて?アムロ。モビルスーツ4、5機かしら?」
アムロ「ミノフスキー粒子と岩のおかげで判別つきませんね!」
セイラ「見えたわ。アムロ、狙えて?」
アムロ「やってみます・・・。ボルトアウト、急ぎます!」
セイラ「了解」
アムロ「来るな。うわーっ!!どこだ?」
セイラ「ドム」

第33話「コンスコン強襲」では「ボトルアウト」と言っていたが、今回は正しく「ボルトアウト」と言っている。やはり第33話の「ボトルアウト」は単純ミスであろう。

ここでもガンダムの動きが素晴らしい。

遠方からのミサイル攻撃も、ミサイルが発射される前に「来るな」と敵の攻撃を予測しつつ、必要最小限度の動きでかわしている。

まだ発射されていないのに「来るな」と予測
で、やってくるミサイル
回避行動も必要最小限

ドムのサーベルでの攻撃をスレスレでかわしたかと思えば、ドムの腹を蹴り上げ、ビームライフルで一撃撃破。

ギリギリでかわし
ドムの腹を足蹴り
ちゅどーん

動きにまったく無駄がない。ニュータイプの戦闘とはこういうものかと思わせる動きである。

「病人の格好っていうのだってあるのさ」

ハヤト「サンマロ軍曹、また戦いが始まってんですか?」
サンマロ「ハヤトは体を治すことだけを考えるんだ。それも任務だぞ」
ハヤト「それはわかりますが、僕の傷は思ったほどひどくないんですよ」
サンマロ「あと1日2日したら起きられるんだから今はこらえるんだ」
ハヤト「格好良くいかんもんですね」
サンマロ「病人の格好っていうのだってあるのさ。手間をかけさせるなよ」

ソロモンの攻防戦で負傷したハヤトは今回はお留守番である。第35話で悔し涙を流したハヤト、今回も出撃したいという思いが見え隠れする。

それに対するサンマロの返しが秀逸だ。「病人の格好っていうのだってあるのさ」と諭す。ただ、今は体を治すことだけを考えるんだというだけでなく、「病人の格好」と返すことでハヤトにも受けれやすくなっている。

物語前半のぎすぎすして余裕のなかった頃のホワイトベースでは考えられないやりとりである。

フラナガン

シャア「ミラーの調節も利かないコロニーはひどいものだな、カラカラだ。フラナガン、どうだ?」
フラナガン「順調です。ララァはテストターゲットを70パーセントの確率で当てました」
シャア「うむ、ザンジバルに戻るか」

ナレーター「牧畜とレジャーの為のこのテキサスも、戦争の余波でミラーが動かなくなり八ヶ月あまり夕暮れのままである。その為砂漠化が進み、人も住まない」

シャアとララァの他に髭のおっさんが一人一緒に馬車で移動している。このおっさん、フラナガンというらしい。フラナガンといえば第34話「宿命の出会い」で名前だけ登場していた。

レポーター「何度も繰り返すようですがこれは本当の戦争です。サイド6のすぐ外で行われている戦いなのです。連邦のホワイトベースは1隻でジオンの3隻に対して果敢な攻撃を行っています」
シャア「フラナガンはやさしくしてくれたか?」
ララァ「はい」
シャア「よく見ておくのだな。実戦というのはドラマのように格好のよいものではない」

シャアとフラナガンとの会話から察するに、フラナガンはララァのニュータイプの能力を科学的にテストし軍事利用するための研究を行なっているのだろう。「テストターゲットを70パーセントの確率で当てました」という意味はよくわからないが、研究は順調なようだ。

テキサスコロニーは戦争の余波でミラーが動かなくなっている。第13話「再会、母よ・・・」でも書いたが、機動戦士ガンダムの世界で採用されているコロニーはシリンダー型のもので3枚のミラーで太陽光を取り込み昼夜を再現する。

テキサスコロニーではミラーが動かなくなってしまい、ずっと夕暮れのままだ。その結果、太陽光でコロニー内がカラカラに乾いてしまい、砂漠化している。

テキサスは牧畜のためのコロニーであるから、本来ならあたり一面豊かな牧草地が広がっていたのだろう。それが現状は樹木や草などはすべて枯れ、ひどい砂ぼこりが舞っている。

「あたしと同じ人がいるのかしら?」

ララァ「なにかしら?来るわ」
シャア「来る?何がだ?」
ララァ「なにかしら、なにかしら、これ?何かが来るわ」
シャア「フラナガン、なんだ?」
フラナガン「テストターゲットではありません。今までこんな脳波の共振を示したことはありません」
ララァ「あたしと同じ人がいるのかしら?」
シャア「ララァ、今なんと言った?」
ララァ「フフフ、大佐があたしの心を触った感じなんです」
シャア「私が?ララァ、冗談はやめにしてくれないか」
ララァ「はい(なんだったんだろう?今の、あの痺れるような感覚は?)」

ここでララァが「痺れるような感覚」を覚え、「あたしと同じ人がいるのかしら?」と訝しがる。フラナガンも「今までこんな脳波の共振を示したことはありません」という。

何か不思議なことが起きているようだが、このシーンのラスト、ララァの顔とアムロの顔がオーバーラップするので、この不思議な現象の発生源がアムロだということがわかるようになっている。

ララァのアップから・・・
アムロのアップへオーバーラップ

そして、そのアムロはドムとの戦闘の中で次第にテキサスコロニーに接近してきている。その接近してきているアムロの存在に敏感にララァが反応したということだろう。

2人ともニュータイプであり、同じ能力を持つ者同士何か共鳴するところがあるのか。

ところで、第34話「宿命の出会い」の記事で「アムロのことを見て自分と同じニュータイプだということを見抜いている様子だ」と書いたが、どうやらそうではないようだ。ララァ自身、自分以外にこの不思議な力を持っている者がいるのかどうかわからないし、ニュータイプ同士が出会った場合、どういう反応が起こるのかわかっていない。

今回ニュータイプの能力を持つ者が再び接近する。果たして今度はどんなことが起こるのか。

アムロvsマクベ

アムロ「最後の1機。なに!?こいつの所へ誘い込む為の作戦だったのか」
マ「さて、来てもらおうか、ガンダム」
アムロ「こいつ、こざかしいと、思う!」

さて、先ほども述べたように、ドムとの戦闘の中で知らず知らずのうちにマクベの待ち受けるテキサスエリアにおびき寄せられていた。

マクベは宇宙に浮かぶ岩の上に立ち、ガンダムを迎え撃つ。背後にはテキサスコロニーも描かれている。状況が非常にわかりやすい上に、この後テキサスコロニーに戦場が移り、ララァとアムロの邂逅があるのだろうと予感させる。

アムロは会ったこともないマクベとギャンを見て「こざかしいと思う」といっているが、これもニュータイプの能力のなせるワザだ。そして、実際マクベは何やら小細工を弄してガンダムを待ち受けている。なるほどこざかしい。

さて、マクベの小細工はどんなものだろうか、見ていこう。

ガンダムがギャンに突撃する。

すると、ギャンは立っていた岩から後方へジャンプ。岩には何かアンテナのようなものが設置されており、それが発光する。

ガンダムが岩に接近すると、大爆発。なるほど、こざかしい。

マ「ははは、や、やった。フフ、戦いをまともにやろうとするからこういう目に遭うのだよ、ガンダム!」

こんなセリフを吐いてはいけない。こんなセリフもはや「あいつは助かっています」という説明台詞に等しい。

と思っていたら、案の定ガンダムが反撃のビームを発射する。思いがけない反撃を受け狼狽えるマクベ。お約束の展開である。

しかし、マクベもさる者、さっとテキサスコロニーに撤退し、ガンダムをおびき寄せる。ここまで想定通りであろう。

なお、この一連のシーン、ガンダムが助かったのは偶然ではないし、ストーリー上の都合でもない。映像をよく見ればガンダムが撃破されなかった理由がわかる。

ガンダムが岩に接近すると岩に設置されたアンテナのようなものが発光し、大爆発を起こした。その大爆発の直前、一瞬アムロの表情のカットになりアムロの顔に稲妻のようなエフェクトが走る。ニュータイプの能力でアムロは危険を察知したのだ。

次の大爆発のシーン、画面左上隅にガンダムが描かれている。大爆発の衝撃をかわすように上方へ回避行動をとっている。

ガンダムの装甲の優秀さに救われた面ももちろんあるのだろうが、それでも直前で危険を察知し、瞬間的に回避行動をとるアムロはパロットとしての戦闘センスが抜群である。

逆にいえば並みのパイロットであればマクベの策にはまりここで撃破されていたのかもしれない。

ここで繰り広げられたのは、ガンダムを撃破するためにはどういう作戦でいけばよいかを考え実行したマクベと、さらにその一枚上をいったニュータイプアムロとのギリギリの攻防である。

テキサスコロニー侵入

作戦が失敗したマクベはテキサスコロニーに退避する。ギャンを追ってガンダムもテキサスコロニーに侵入する。

太陽の光を後方から受けてガンダムの影が地面に長く伸びている。奥は薄暗く何も見えない。明るい入り口から薄暗い奥へ少しずつ進むガンダム。何かが待ち受けているかのような不気味な雰囲気を醸している。ホラー映画のワンシーンのようだ。

途中ネズミが漂う描写があるが、これもホラー映画などでよく見られる長らく人の管理がなされていないことを表現する演出だ。とはいうものの宇宙空間に浮かぶコロニーでもネズミを描くという演出で果たして良いのだろうかという気がしないでもない。

なお、ガンダムが取っ手をひねるシーンは、第1話でデニム、ジーン、スレンダーがサイド7に侵入するシーンと対をなすものである。ガンダムが出入り口の扉を操作するシーンも第1話と同じだ。

「ララァはすぐに私以上のパイロットになれる」

シャア「何を見ているのだ?」
ララァ「大佐を。いけませんか?」
シャア「構わんよ」
ララァ「あたしにエルメスを操縦できるのでしょうか?」
シャア「恐いのか?」
ララァ「はい」
シャア「それは慣れるしかないな。私がいつもついていてあげる。そうしたらララァはすぐに私以上のパイロットになれる」
ララァ「私が?赤い彗星以上に?」
シャア「当たり前だ。そうでなければ、みなしごだったララァをフラナガン機関に預けたりはしない。サイド6ではさびしい思いをさせてすまなかったな」

シャアのララァに対する思い入れは並ではない。シャアはララァのことを大事に大事に接しているし、「ララァはすぐに私以上のパイロットになれる」と絶大な期待を抱いている。ララァもシャアのことを心底信頼しており、疑っている様子は全くない。

第35話「ソロモン攻略戦」

ララァのことを「妹」と言ったり、そっと肩で手を重ねたり、その関係は単なる上官と部下の関係を超えている。

エレベーターでシャアを見つめるララァもそうだし、「サイド6ではさびしい思いをさせてすまなかったな」というセリフもそうだ。すでにこの2人恋人関係にあるのではないかと思わせるものである。

シャアはそのララァを実戦に導入しようと準備を着々と進めている。このことを併せ考えると、シャアはララァのニュータイプの能力で戦局の巻き返しを図ろうとしており、そのためにはララァの恋心すらも利用しようとしているとも考えられなくもない。もともとシャアはそういう狡猾な人物だ。上記の「サイド6ではさびしい思いをさせてすまなかったな」というセリフもララァの目を見ることなく無表情で言うあたり、本心でそういっているのかあやしさも残る。

しかし、そういう面が否定できないにしても、それだけではなさそうな雰囲気もある。このあたりはもう少し様子見が必要なようだ。

シャア出撃

マリガン「大佐、マ・クベ大佐がモビルスーツでテキサスに潜入したそうです」
シャア「マ・クベがか?物好きな。マ・クベにそんなとこがあったとはな」
マリガン「ご自分用のモビルスーツを開発させて、打倒木馬と常日頃おっしゃっておられたようですから、自信があるのでしょう」
シャア「私へのあてつけだよ。そうでなければ彼がそんな軽率なことをする訳がない。しかし、黙って見ている訳にもいかんな」
マリガン「ゲルググの装備は終わっています。プロトタイプですので完全とはいえませんが」
シャア「なら、テストを兼ねてマ・クベの様子を見るか」

マクベのギャンがテキサスに潜入したとの報を受けて、シャアもゲルググで出撃する。

これはともにキシリア旗下にある者として放ってはおけないということか、それともマクベへの当てつけの仕返しか。

一方そのころ、ギャンとガンダム。ギャンは見えないところから小さなミサイルらしきものを発射したり、小型爆弾を用いたり、こんなものでガンダムを倒せるというものでもかろう。なるほど、こざかしい。

こうしたギャンの攻撃をガンダムはすべて回避。ニュータイプのアムロにはこの手の小細工は通用しないのだ。

アムロvsシャア(8戦目)

シャア「あれか?」
マ「カンがいいのか?それともあの新しいタイプの奴なのか?ん、味方のモビルスーツか?」
アムロ「やるな!赤いモビルスーツ?シャアなのか?」

ギャンのこざかしい攻撃をことごとくかわすガンダムに対してマクベが「カンがいいのか?それともあの新しいタイプの奴なのか?」とつぶやく。

マクベの言っている「あの新しいタイプの奴」とはニュータイプのことである。ジオン軍内でニュータイプの存在を知っているのはシャアを含めごく一部の者だけと思われるが、マクベもなんとなくは知っていたのだろう。

ただ、ここでマクベが連邦軍内にもニュータイプがいるのではないか、そして連邦軍はニュータイプをすでに実戦投入しているのではないかと考えた点はマクベの聡明さの表れである。

第29話「ジャブローに散る!」以来、8回目の対決である。今回はコロニー内の空中での撃ち合いだ。両者ともに高速で移動しながらビームを撃ちまくるが、いずれも命中しない。

勝負の行方は!?と思っていたらマクベがゲルググとガンダムの間に割って入る。

マ「シャアーッ、引けい!今の貴様の任務はガンダムを倒すことではないはずだ!」
シャア「味方が苦戦しているのを見逃す訳にはいかんのでな」
マ「私なりの戦い方があるからこそガンダムを引き込んだのだ」
シャア「任せたよ、マ・クベ大佐。来るぞ!」

マ「フフ、今までのデータで確かめてある。シャアとの小競り合いでビームを使いすぎたのだよ」

マクベは過去の戦闘から得られたガンダムの性能データをよく分析し、ガンダムがゲルググとの戦闘でビームライフルのエネルギーを使い果たしてることを見抜いている。なるほど、男のメンツにかけてガンダムを倒そうというのはマクベの本心なのかもしれない。

マリガン「ご自分用のモビルスーツを開発させて、打倒木馬と常日頃おっしゃっておられたようですから、自信があるのでしょう」

マリガンのこのセリフからしても、マクベのホワイトベース、ガンダム打倒にかける思いは本物だ。マクベがそこまでガンダムに入れ込むのはなぜか。

鉱山基地を奇襲されアッザムリーダーを撃破されたからか、そのことでキシリアにこっぴどく叱られたからか。それともオデッサで条約違反を犯してまで発射した水素爆弾を破壊されたからか。

マクベの性格からしてホワイトベースやガンダムという特定の敵にここまで敵意を向けるのはあまりイメージしにくい。ここはよくわからなかった。

ギャンがガンダムに突撃する。このシーン、体を斜めに剣を構える姿はモビルスーツながら凛々しさを感じさせる。マクベのモビルスーツ操縦能力もなかなかではないかと思わせるシーンだ。

ガンダムも2本目のビームサーベルを取り、反撃のチャンスをうかがう。

「あれはいいものだ!」

アムロ「もう剣を引け!汚い手しか使えないお前はもうパワー負けしている!」
マ「シャアを図に乗らせない為にはガンダムを倒さねばならんのだよ!」
ララァ「ああっ!(もうおやめなさい、終わったのよ)」
アムロ「え?なに?」
マ「おお・・・おお、ウラガン、あの壺をキシリア様に届けてくれよ、あれはいいものだ!」

アムロに「汚い手しか使えない」と言われるマクベ。こざかしい手はいろいろ使っているが、汚い手とまでは思えない。

軍事作戦はえてしてだましあいであり、相手をいかに出し抜くかで勝負が決まる。その意味でマクベの行動は「普通」である。また、ラスト、ガンダムと剣術で正面から対峙している点は汚いと評価されるところは見られない。

しかし、マクベに勝ち目がなくなっているのは間違いない。ガンダムと正面から交戦して勝ち目がないことはマクベなら理解しているはずだ。だからこそマクベはこざかしい作戦をいくつもいくつも重ねガンダムを撃破しようとしてきた。

そのすべてが失敗に終わり直接剣を交えるに至っている。マクベの敗北は確実だ。

それでもマクベは剣を引かない。「シャアを図に乗らせない為にはガンダムを倒さねばならんのだよ!」と自分のプライドにかけて最期まであきらめない。もはやマクベに残されたのは意地だけだ。

ガンダムのビームサーベルがギャンをとらえた。これで勝負ありである。その瞬間「もうおやめなさい、終わったのよ」とアムロに話しかける声がする。

この声にアムロは一瞬躊躇するが、ギャンの腹部を切り裂く。

最期、「ウラガン、あの壺をキシリア様に届けてくれよ、あれはいいものだ!」といって散っていくマクベ。いかにもマクベらしい最期である。

アムロ「誰だ?誰かが僕を見ている。これは?シャアじゃない?」
ララァ「こ、これは?ア、ム、ロ?」
アムロ「ラ、ラ?」

アムロとララァがお互いの存在に気付く。気付くといってもテレパシーのような不思議な力でお互いを認識している。何が起きているのか、ニュータイプの力とはどういうものなのか、そもそもニュータイプとは何のか。

今後の展開も目が離せない。

第37話の感想

今回はマクベの最期を描いた回である。アムロはマクベのことを「こざかしい」とか「汚い手を使う」などと評しており、その言葉を額面通りうけとればマクベは正面から正々堂々と戦うことを避ける卑怯者という印象になるだろう。

しかし、マクベはそういう人物ではなさそうだ。いろいろこざかしい手は使っているが、それはガンダムを撃破するための軍事作戦であり決して「汚い手」でも「卑怯な手」でもない。

全ての作戦が失敗に終わったら、正面からガンダムと対峙し剣と剣で勝負している。こうした行動からしてもマクベは卑怯者ではない。

そして何よりガンダム打倒の動機である。マクベは「男のメンツ」にかけてホワイトベースとガンダムの打倒を企図し続けていた。なかなか純粋な動機である。マクベにもこんな一面があったのかと思わせる演出だった。

第22話「マ・クベ包囲網を破れ!」第25話「オデッサの激戦」では完全に悪役として描かれていたマクベ。ジオンの悪性を強調する演出のだしに使われた感が否めない損な役回りだった。

今回、マクベの人間性により深く触れることができたのではないだろうか。そしてマクベはそこまで悪い奴ではなさそうである。

また、第34話「宿命の出会い」以来のアムロとララァの邂逅も描かれていた。そのララァだがそろそろ出撃するころであろう。

その際、一つ気になる点がある。ララァは人を殺すことができるのかという点だ。

ララァはシャアに「すぐに私以上のパイロットになれる」と言われ有頂天になっているが、まだ15~16歳の実戦経験のないただの人である。人を殺したことなどないはずだし、戦場がどういうものか想像すらできていないだろう。

それに今回マクベにとどめをさそうとしたアムロに対し「もうおやめなさい、終わったのよ」と制止している。ララァが「もう勝負がついたのだから何も殺すことはない」と考えているとすれば、それが戦場での命取りになる可能性がある。

アムロとの違いは、シャアやフラナガンの指導のもと軍事訓練を受けているという点だが、それでも上記の危うさは否めない。

果たしてララァの初戦はどうなるのか。そもそもそれはいつになるのか。ニュータイプ同士の戦闘がどう描かれるのか、そろそろ見てみたいものである。

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