年内最後のジャーナルレビュー
最近の報告を中心に総合アレルギー診療関連の論文要旨をお届けします。
年の暮れは何かと御多用とは存じますが、何卒お気をつけて年末をお過ごしください。
<Major一般誌(NEJM、Lancet、JAMA、BMJ)とその関連誌>
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34879449/
小児のコントロール不良中等症・重症喘息患児を対象にデュピルマブの有効性をみた研究:デュピルマブ群はプラセボ群に比べて喘息増悪が少なく(リスク59.3%減,95%CI,39.5~72.6,P<0.001),肺機能および喘息コントロールが良好であった(Liberty Asthma VOYAGE試験)
N Engl J Med. 2021 Dec 9
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34901915/
小児・若年者の喘息に対するアレルゲン免疫療法(AIT)について長期的有効性の後方視的検証。AIT群は対照群と比較して喘息増悪が少なく、治療強度のステップダウンの可能性が有意に高かった。抗菌薬処方が必要な肺炎や入院も少なかった。
Lancet Reg Health Eur. 2021 Nov 30
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34843665/
成人期における肺機能を規定するの幼少期の危険因子特定の試み:胎児期の発育不良、小児期の低体重、11歳時でBMIが10パーセンタイル以下であることが、成人期での肺機能異常と関連した
Lancet Respir Med. 2021 Nov 26
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34861180/
最近入院したことがある、または経口ステロイドを2コース以上処方されたことがある喘息の学童は、COVID-19入院のリスクが高く、予防接種の優先順位を検討すべきである(英国)
Lancet Respir Med. 2021 Nov 30
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34874404/
若年者の喘息アウトカムを改善するための仲間同士での喘息自己管理プログラムの無作為化臨床試験:仲間同士の喘息自己管理教育は,成人の管理者が主導するプログラムよりも改善効果が高く,効果が最長 15 ヵ月間持続した
JAMA Netw Open. 2021 Dec 1
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34893481/
ドライアイと喘息の関係のシステマティックレビュー。 6つの研究の45215人の喘息患者と232864人の対照の解析ではドライアイの有病率は対照群よりも喘息群で高く(OR 1.29、95%CI 1.20〜1.38)。民族別のサブグループ解析では、オーストラリア人、白人、アジア人の喘息患者でリスクが高かった。
BMJ Open. 2021 Dec 10
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34732517/
新規にメポリズマブが導入された患者の特性や使用状況等を調査した米国からの3496例を対象とした保険データベース研究:導入前の喘息薬の主な使用状況はICSが22%、ICS/LABAが46% 、LTRAが72.6%、LAMAが38%、オマリズマブが18%。70%にアレルギー性鼻炎、32%にCOPD、17%に好酸球増多症、3%にEGPAなどの併存症あり。メポリズマブの1年間の投与率は70%であった。
BMJ Open Respir Res. 2021 Nov
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34887317/
中等症・重症喘息患者へのレリーバとしてアルブテロール/ブデソニド併用とアルブテロールの比較試験のプロトコル論文:年1回以上の重度の増悪があり、開始前に3カ月以上維持療法を受けた者を対象。主要評価項目は最初の重症喘息増悪までの期間。
BMJ Open Respir Res. 2021 Dec
<Majorアレルギー・免疫関連誌(JACI, JACI in Practice, Allergy, JI, WAOJ, CEA, AI, AAAI>
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34848381/
250μgのピーナッツ蛋白を含むパッチ(Viaskin™ Peanut 250μg [VP250])による経皮的免疫療法の第Ⅲ相多施設共同試験:VP250(n=294)またはプラセボ(n=99)を 6 ヶ月間投与したところ、過去の試験と同様に良好な忍容性が示された
J Allergy Clin Immunol Pract. 2021 Nov 27
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34800705/
2017年にハイリスク乳児への鶏卵の早期導入が推奨されたことを受けて、2018~2019年に日本で鶏卵FPIES(Food protein induced enterocolitis)の症例が劇的に増加した。原因食品の摂取時期、量、頻度の評価がなく、リコールバイアスや医師のFPIESに対する認識が患者数に影響を与えている可能性があり、本研究のみで鶏卵の早期導入と鶏卵性FPIESの増加との因果関係を証明するものではないため、関連性を明確に示すためにはさらなる前向きな研究が必要。
J Allergy Clin Immunol Pract. 2021 Nov 17
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33675818/
重症喘息患者20人の気管支肺胞洗浄液と生検検体を熱形成術の前後で比較:熱形成術により上皮と気管支肺胞洗浄液の熱ショックタンパク質(HSP)の発現が有意に増加し、このHSPが上皮機能の改善と気道平滑筋細胞リモデリングの阻害もたらした
J Allergy Clin Immunol. 2021 Nov
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34333192/
米国の成人食物アレルギー(FA)患者および小児患者の親/介護者を対象にした経口免疫療法(OIT)への認知度調査:95%がOITを以上を受けたことはなく、72%が調査前にOITを知らず、その認知は裕福で高学歴の回答者に偏っていた
J Allergy Clin Immunol Pract. 2021 Nov
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34464635/
アスピリン増悪気道疾患(AERD)についてのレビュー:治療としてアスピリン/NSAIDsの回避、基礎疾患(喘息と鼻茸・慢性副鼻腔炎)の内科/外科的治療(アスピリン脱感作を含む)、重症例への生物学的製剤が検討される
J Allergy Clin Immunol. 2021 Nov
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34872649/
一部の地域では食物アレルギーの有病率が増加している。以前のガイドラインでは、妊娠中・授乳中はアレルゲンを避け、1-3歳にはアレルゲンとなる食物の導入を遅らせることが推奨されていたが、最近のガイドラインでは多様な食事が推奨される
J Allergy Clin Immunol. 2021 Dec
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34862158/
食物アレルギーによる食生活の制限が、食糧不安(食糧を得るための資金や資源の不足)に与える影響の調査:調査参加者の大多数は、自分の患者を対象とした食糧不安を把握していなかった
J Allergy Clin Immunol Pract. 2021 Nov 30
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34848210/
重症喘息患者を対象としたPrecision medicineの第II相試験の計画:バイオマーカーで定義されたサブグループの被験者を対象に、最大6つの治療法を同時に評価し、喘息のサブタイプに対する理解を深め、重症喘息の治療薬開発を促進する
J Allergy Clin Immunol. 2021 Nov 27
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34839541/
喘息患者87人を治療反応性に応じて、コルチコステロイドコントロール(ICS)、免疫療法コントロール(IT)、生物学的製剤コントロール(BIO)、非コントロール(UC)の4群に分類し、血清サンプルをメタボロミクスとプロテオミクスで分析:UC群では炎症経路に関連するリゾリン脂質が増加していた。UC群ではICS群と比較して、いくつかのタンパク質合成が上昇(CCL13、ARG1、IL15、TNFRSF12A)または減少(sCD4、CCL19、IFNγ)していた
Allergy. 2021 Nov 28
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34028057/
アレルゲン曝露室についての説明:寸法と構造 (ii) スタッフ (iii) 気流、空気処理、運転条件 (iv) 粒子分散 (v) 花粉・粒子計測 (vi) 安全・非汚染対策 (vii) 症状評価の手順 (viii) 試験アレルゲン/物質と検証手順
Allergy. 2021 Dec
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34820049/
医療保険データベースを用いて喘息抗体製剤4剤(オマリズマブ,メポリズマブ,ベンラリズマブ,デュピルマブ)投与中の355人のリアルワールドデータを解析:薬剤導入前と比較して増悪、入院は2/3に、全身性ステロイド総投与量は1/4になった
(NHO東京病院)
World Allergy Organ J. 2021 Nov 5
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34862257/
RNA結合タンパク質HuR(ELAVL1)はアレルゲンと非アレルゲンによる気道炎症の両方に作用しており、その阻害が新たな喘息治療法になる可能性が示唆された。
J Immunol. 2021 Dec 3
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34854146/
乳児期から成人期初期までの湿疹の出現調査結果:無症候性/一過性(男性78%、女性73%)、部分的遅発性(男性8%、女性4%)、遅発性(男性5%、女性10%)、早期発症持続型(男性9%、女性5%)。女性では早期発症早期解消型(8%)もあり。男性ではフィラグリン遺伝子(FLG)の変異(RR=2.45)が早期発症持続型と関連し、女性では高出生体重(2.25)などが早期発症持続型と関連した。
Clin Exp Allergy. 2021 Dec 1
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34863953/
アスピリンで増悪した呼吸器疾患患者の手術補助としてのデュピルマブ:ケースシリーズ
Ann Allergy Asthma Immunol. 2021 Dec 1
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34861366/
吸入手技を向上させることで、吸入薬の治療効果を最大限に高めることができ、小児喘息の罹患率を下げられる可能性がある。吸入手技の習得に最も重要なステップを特定し、手技の向上が与える影響を明らかにするための大規模な研究が求められる。特に小児に対しての教育形態と介入方法を特定する必要がある。
Ann Allergy Asthma Immunol. 2021 Nov 30
<その他の雑誌より>
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34172470/
3年以上メポリズマブを継続した重症喘息患者に対して投与を中断した際の影響を調べたCOMET Studyのデータを用いた解析:メポリズマブの継続治療は増悪までの期間や喘息コントロールなどに関連した。
Eur Respir J. 2021 Jul 15
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34649978/
難治性慢性咳嗽成人患者に対するシボピキサント(選択的P2X3受容体拮抗薬)の第2a相ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー多施設共同試験:シボピキサントは2週間後の咳嗽回数をプラセボよりも3割減少させ、健康関連QOLを改善した
Eur Respir J. 2021 Oct 14
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34860143/
喘息のリスクアレルであるP2Y13 receptor(P2Y13-R)はアラーミンであるIL-33とHMGB1の放出を制御している。
Am J Respir Crit Care Med. 2021 Dec 3
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34699773/
世界204の国と地域における、1990-2019年の間の喘息罹患、死亡、障害調整生存年(DALY)の調査: 2019年の喘息の年齢標準化点有病率と死亡率は、10万人あたり3415.5人と5.8人で、1990年からそれぞれ24%と51.3%減少した。
Chest. 2021 Oct 23
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33558205/
喘息生物学的製剤の処方数に対する使用割合(PDC)は、開始後6ヶ月で0.76であり、吸入ステロイドのPDC(約0.4)よりも高かった。
Chest. 2021 Mar
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34886880/
ブタクサ花粉へのアレルギー性鼻炎・結膜炎を有する小児・青少年へのブタクサ舌下免疫療法(SLIT)錠の有効性・安全性の検証:ブタクサSLIT錠は臨床症状の改善をもたらし、症状緩和のための薬の使用が減少し、忍容性も良好であった
Allergy Asthma Clin Immunol. 2021 Dec 9
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34628561/
EGPA50例の臨床的特徴、治療、転帰をANCAの有無別に比較検討:陰性群では診断年齢が若く、鼻茸がある。陽性群では血管炎の活動性(BVAS)が高く、腎病変や末梢神経障害が多く見られた。生物学的製剤使用患者の40%に再燃がみられたがANCAの陰性・陽性による差はなかった。IgEの上昇が再燃の予測因子となった
Intern Emerg Med. 2021 Oct 10
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34875122/
食事摂取後の過敏症症状に対する解説:最も多いのは、IgEを介した食物アレルギー(有病率5~10%)だが、その他の疾患として好酸球性食道炎、セリアック病、食物タンパク質誘発性腸炎症候群、乳糖不耐症など、IgEを介さない反応もある。
J Intern Med. 2021 Dec 7
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34863283/
ルパタジンの投与により,舌下免疫療法(SLIT)錠の投与に伴う局所のアレルギー反応が解消・緩和された5症例の解説。ルパタジンはSLITの忍容性を改善することで、治療継続性を高める可能性がある
Allergy Asthma Clin Immunol. 2021 Dec 4
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34863299/
心膜炎による心タンポナーデを生じた多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の14歳男児症例:呼吸器症状や腎症状に先行して心臓や消化器の合併症を発症した。炎症性腸疾患のように発熱と血便が持続する患者では、ANCAの連続的な測定を検討する
Allergy Asthma Clin Immunol. 2021 Dec 4
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34871152/
鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎のレビュー:デュピルマブが推奨され、喘息合併時はオマリズマブ、メポリズマブ、レスリズマブも選択肢となる。アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎では抗真菌薬、抗ロイコトリエン薬、アレルゲン免疫療法、オマリズマブも
Allergy Asthma Proc. 2021 Nov 1
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34320686/
就学前児童の喘息診断の予測指数(API)の研究:母親の肥満度,母親の教育,過去の経口避妊薬使用,出生時体重,胎盤重量,18ヶ月時の急性中耳炎,気管支炎,クループ、肺炎,臍帯血アディポネクチンなどがその後の喘息診断に関連した
Pediatr Pulmonol. 2021 Oct
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34305932/
NSAIDs増悪気道疾患(N-ERD)のレビュー:長期的なアスピリン維持療法(脱感作)は、N-ERD患者の鼻ポリープの再発率を低下させるが、N-ERDを誘発・抑制する正確なメカニズムは、まだ十分に解明されていない。
Front Immunol. 2021 Jun 25
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34847965/
標準治療に反応しなかった喘息急性増悪時に標準的な治療法にケタミンと硫酸マグネシウムの静脈内投与を組み合わせるとピークフローが改善された(統計学的な有意差なし)
Asthma Res Pract. 2021 Nov 30
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34819723/
成人アレルギー性鼻炎(AR)患者724人と、小児AR患児の介護者665人を対象とに舌下免疫療法の錠剤(SLIT-tablet)と月1回/週1回の皮下免疫療法(SCIT)への嗜好を調査したところ、アレルゲン免疫療法の投与経路としてSLIT-tablesのほうが好まれた
Patient Prefer Adherence. 2021 Nov 18
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34232411/
抗がん剤に対する過敏症反応(HSR)のレビュー:HSR後に抗がん剤の再導入を可能にする迅速な薬剤減感作療法(RDD)の安全性と有効性。好塩基球活性化試験、総IgE、BRCAジェノタイピング、血清IL-6などの臨床検査などについて記載
Curr Allergy Asthma Rep. 2021 Jul 7
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34832562/
喘息へのアレルゲン免疫療法(AIT)のレビュー:AITには皮下免疫療法(SCIT)と舌下免疫療法(SLIT)があり、喘息ではダニ(HDM)を用いたAITにより、臨床症状が緩和され、気道過敏反応や投薬量が減少する。AITの効果は、治療終了後も少なくとも数年間は維持され、小児の喘息の寛解率を高め、新たなアレルゲンに対する感作を抑制する可能性がある。花粉症にAITを導入すると、喘息の発症を予防できる可能性がある。さらに、AITはアレルギー性鼻炎など、喘息に合併する他のアレルギー疾患をコントロールし、喘息自体のコントロールも改善する。喘息に対するHDM-SCITの適応は、呼吸機能が正常な患者の軽度から中等度のHDM感作性アレルギー性喘息。現在のところ、日本ではHDM-SLITはアレルギー性鼻炎のみの適応であり喘息には適用されていないが、SLITの喘息への効果は国際的に確認されており、日本でもアレルギー性鼻炎を併発していれば喘息にSLITを使用することが可能。
(埼玉医大)
Pathogens. 2021 Oct 29
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34804031/
アルテルナリア誘発喘息モデルマウスにおいて、リコンビナントAlt a 1を皮下投与することで喘息の進行が緩和され、さらにTfh細胞およびBreg細胞の制御効果がみられた
Front Immunol. 2021 Nov 5
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