![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/59095993/rectangle_large_type_2_77e4f28423ce1ad49e33db89c7a966f0.jpeg?width=1200)
117_緑黄色社会「ずっとずっとずっと」
サステナ女子という言葉がある。最近、どこもかしこもSDG'sなのである。ファッションやライフスタイルにおいても、環境への配慮がさなれてサステナブルであるものを重視していこうというのが、今のトレンドである。
あらゆるニュースや雑誌においても、さかんにそういったキーワードが叫ばれている。今、ファッション業界最大のテーマとして、この「サステナビリティ (持続可能性)」が浮上しており、我々の担当する女性誌でも決して無視できないものとなっている。そして環境への配慮や意識の高いものにプライオリティを置いてセレクトする女性層には、サステナ女子という新たな名前がついたのだった。
最近のコレクションにおいても、オーガニック素材、バイオ素材や天然素材が途端に目につくようになった。業界をあげての動きであると同時に、この流れはよくある流行廃りの類いと言い切れない要素がある。それは歴史的な大型台風や洪水に大規模山火事など、目に見えて気候変動に起因した災害の続発を私たちは身をもって体験している。
我々、ファッションに携わる者も問題認識を持ち、地球環境を考える当事者としてこれに向きあう必要があるからだ。自分の身近なところから少しでもいいから、できることをはじめる。そんな環境に優しく、そして同時にセンスのよい大人の女性をテーマにしたサステナ女子の特集を来月号で大々的に取り扱うことで、昨日のオンライン会議でもメンバーと方向性をすりあわせた。
「最近の若い子は、社会問題や環境問題に目を向けていて、SNSでよく発信なんかしてるのよね、私らが学生の時なんて、「あの子なんか意識高い系よね」なんて揶揄してたもんだけど。そういう○系だとかで、狭いひとつの枠でとらえようすること自体が、今じゃ恥ずかしいっていうか、ダサいことみたい」
「そうですよね、それこそ多様化っていうんですかね。3ヶ月前に入った亜美ちゃんでしたっけ、ツイッタ一見てても、若い社会活動家とか起業家の言葉とかよくリツイートしてて、ほえーって感じですもん。私なんて彼女の年齢だったら、イケメン俳優の画像とか集めて、ひとりでずっと悦にひたってましたけどねえ」
「まあそれは、今でもあると思うけど。 もう物心あるときから、ネットとSNSがあると、社会に発信していくことは恥ずかしくないんだ、それを言うことが自分たちの権利なんだって、ナチュラルに身についてるんだろうね。はー、年食ったなあ、 私も」
「なんかいろいろついて行けてない部分あるけどね、 私なんて女子高生の頃からずっと渋谷に行って、 ファ ッションとか音楽とか最先端の流行追うのがすべてだったから。 よくそんなこと考えられる余地があるよなあーって思う。最近の若い子なんて」
「そうそう。 情報量だけは多いですけどね。みんながみんな、それをどこまでとらえきれてるんだろうって気がするけど」
ランチを取りながら、大沢さんと笑う。 気づけばチームの中でも、周りの子と比べて、大沢さんと私がひとつ上の年代となっていることについて、いつも自虐的にネタにしている。でもやっぱり若い子の感性は刺激になる。ファッションだけじゃない部分でも。さっきの亜実ちゃんのツイッターのように、こういったサステナブルを念頭に置いた姿勢とか。
「あ、あとね、これも、なんかツイッターではあったみたいんなだけど、これ見てみて」
「えーっと、あなたのサステナ女子度をチェックしようか・・・。 クイズみたいなのかしら。やってみる?」
大沢さんから見せられたスマホの画面には、イルカをコミカルにデフォルメしたようなゆるキャラが映っている。これも、うまく次の特集にも活かせるかもしれない。 私は大沢さんからリンクを送ってもらい、自分のスマホでもタップして、早速やってみることにした。
【問題1】
「未着用のまま捨てられる服の焼却によって生じる有害物質の発生によって、発展途上国の環境汚染が進んでいる。 ○か×か」
「ええっと、これはホントそうなのよね、 ファストファッションの工場が発展途上国にあって、大量の服を製造するのもそうだけど、捨てる過程の中においても周辺の環境汚染をものすごく悪化させるんだって。確か何年か前のドキュメンタリー映画で見たわ」
→正解は○。解説:衣服を買い足せば捨てる衣服も当然多くなり、 一年間で約100万トンもの衣類品が廃棄されています。一度も着ていない未使用の服も同様です。
(これはファストファッション安くてよく買っている私も、身につまされる問題だ)
【問題2】
「ファッション業界は、水を多く使用する世界で二番目の産業である ○か×か
(○なのかな?どうなんだろう。確かに服を洗濯したりするから、そこで出てくる汚れた水が環境にも悪い気がするな。 アフリカの子供にはきれいな水が足りません、みたいなACのCMを見た気がする。)
⇒ 正解は○。解説: 毎日衣類を着ることにより洗濯をしますが、その洗濯によって年間で約50万トンのマイクロファイバーを海に排出していることになります。マイクロファイバーとはいわゆるポリエステルのことで、衣類の素材によく使われ、製造時にも二酸化炭素として排出されるとも言われています。
(水もいっぱい使うだけじゃなくて、化学繊維も出ちゃうんだ。日本だと水道からいくらでも出るかもしれないけど、 アフリカとか砂漠化が進んでいるところからしたら、飲み水が最優先だから、 貴重な水を服の洗濯なんかにそんな水使ってほしくないわよね )
【問題3】
「地球の環境破壊の要因となる産業活動のなかで、石油化学産業に次いでファッション・アパレル産業は第2位である。○か×か」
(え、これももしかして○なのかな? まさか、いや、でもまさか、服作ってるだけなんだから、石油の工場とかに比べてたら、そんなそこまでひどくないわよね。)
⇒正解は○。解説:ファッション業界は CO2 の排出量が全業界の10%を占め、 大量の水資源を消費することから、 “世界で2番目の環境汚染産業” (国連貿易開発会議調べ) となっています。
(え、マジで。げえ、そうなんだ。。。)
【問題4】
「毎シーズン新しいファッションを取り入れることは環境にやさしい ○か✖️か」
(…ということは、これは必然的に✖️になるのかしら)。
⇒正解は✖️ 解説:ファッション業界では、 1年を2分割に分けて、 S/S (春夏) と A/W (秋冬) の2シーズンで区分しており、全面的に入れ替わりますが、これにあわせて前述の服の製造と廃棄が繰り返されます。その際、一部の有名ブランドでは、ブランド価値を維持するため、セールで売れ残った服を秘密裏に大量に廃棄していたことが問題となりました。
(この業界で年がら年中、毎シーズンごとにこれは繰り返されることって、もうとんでもないことじゃないの。それが当たり前なんだと思ってやっているけど)
【問題5】
「地球に一番優しいのは、新しい服を買わずに古着を再利用することである ○か×か」
(となると、 これももう○しかないわよね…..)
⇒正解は○。解説:サスティナブルファッションには、 環境に優しい素材を選ぶだけではなく、リサイクルすることも含まれます。トレンドの移り変わりは早いので、その年に買ったものでも、次の年には着なくなるということも多いです。そんな時は捨てるのではなく、古着をリサイクルすることを考えてみましょう。
(いや、そりゃ、そうなんだけどさ)
【問題6】
「ファッションが楽しむことは、究極的に人間のエゴである ○か×か」
正解は○。解説:ショーウィンドーに並んでいる色とりどりのトレンドを取り入れた服が、二酸化炭素を排出することによって、森林を破壊したり、川や海を汚す原因となっていることについて、なかなか消費者の立場からは想像しづらいことかもしれません。しかし、一度立ち止まって、その服を買うこと、目先のファッションの流行を追うことが、自分にとって本当に必要なのか、地球にとってサステナブルなことなのか、胸に手を当ててよく考えてみましょう。
「もうなんなのよ、これー。 こんなんやってたら、新しい服とか買えなくなるじゃん。 私らにずっと同じ古着のままでいろってことじゃないのよ」
「でも、もうまさしくそうしろって言ってるってことよね、サステナブルって」
「私たちファッションが楽しくて楽しくて、いっつも一日中服のことばかり考えてホントに夢中だったから、この業界入ったのに。じゃあ、楽しいことも、しょうがない、地球のために、全部我慢してねって、つまりそういうことになっちゃうわよねえ」
「そうそう、そうなっちゃう。もうこんなのホントいやんなっちゃうわよねえ」
「今の若い子って、そこまで考えて、サステナブルが大事!とか、サステナ女子って言ってるのかしらね」
「まあ少なくとも、 私たちはそこまで考えてなかったわね」
「確かに…」
私たちは揃って頭を抱えた。