ねえ、マスカレード… 君の素顔が見たいんだ ④「絶望から希望へ…? 正体を見せた電脳世界の魔女」
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♂:せ、聖子さん…
あなたっていったい…
どういう人なんですか…?
今のって、何がどうなって?
僕は頭が変になりそう…
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僕は今、目の前で起こった現象の訳が分からなくて、正直言って頭が混乱していたんだ。
聖子さんは自分がやったって言うけど、いったいどうやって…?
彼女は魔女か何かだって言うのか?
いや、そんな事は有り得ない… でも、危ない人なんじゃ…
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♀:ごめんごめん、驚かせちゃったわね。
今のを私がやったっていうのは本当の話。
でも、魔法じゃないわよ😉
ネットの回線を使って
私があなたのスマホに命令を送ったのよ。
私はスマホだけじゃなくてパソコンでも
こういう事が出来るの。
私は、いわゆるハッカーって言われてる人達の一人…
電脳空間を自由に行き来して情報に触れたり
機械を遠隔で操作したりする事が出来るわ。
ちょっと変わってるわよね…😅
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いや、ちょっとどころじゃないだろう…
ハッカーが現実にいるなんて、思いもしなかった…
しかも、僕のこんな身近に…
よく分からないけど凄い人なんだな、聖子さんって…
僕は聖子さんの事を感心したのは間違いないけど、ちょっと怖くなったのも否定出来ない。彼女って犯罪者じゃないんだろうな…?
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♀:邦彦君、驚いているようね。
まあ、普通はそうよね。
ハッカーなんて現実の世界で出会うはずが無いものね。
でも、私の様に実在するのも否定出来ない現実なのよ。
で、今のあなたならどう考えるの?
『seclusion』を退会したマスカレードちゃんと
連絡を取る事の出来ない現在の状況で
私というハッカーのお姉さんが
知り合いにいるっていうこの現実を…
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僕は聖子さんが何を言いたいのか次第に理解出来てきた。
何とかなるって事か…?
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♂:神です! いや女神様です!
天使かも知れない…
ごめんなさい、さっきはボー然としてて
返信が出来なかった…
でも、本当に出来るんですか?
『マスカレード』と連絡を付ける事が…
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さっき聖子さんに不思議な現象を見せられてもなお、僕はまだ半信半疑だった。
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♀:あら、見くびられたものね。
お姉さん、悲しいわ…😢
私はその気になれば、アメリカのペンタゴンだって
中国やロシアの国家規模の機密情報だって盗み出して見せるわよ。
もっとも、必要があればという事で
あんまりやらないけどね…
パソコンが一台あれば、情報だけじゃなく
軍隊や最終兵器だって乗っ取って支配して見せるわ…😈
だから、あなたの心配は無用よ。
必要なのは、あなたの決心だけ…
私は、あなたをそそのかす魔女という訳ね😘
さあ、どうするの?
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何か途方も無い事を聖子さんは言っている気がするけど、現実に僕のスマホに彼女がした事を思えば実際には会った事も無いこの女性を、僕は信じてもいい気が…いや、信じたくなってきたんだ。
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♂:分かりました、聖子さん。
あなたに、今の状況に手を貸してもらいたいです。
僕を助けて下さい…
『マスカレード』との途切れてしまった糸を
繋いでもらえませんか…?
僕は、彼女にちゃんと謝りたい…
そして、出来れば…
彼女のマスクを外させてあげたいんだ
マスク無しで心から笑って欲しいんです!
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僕は今、心の底から願う事を聖子さんにDMで伝えた。
すると、すぐに聖子さんから返信が来た。
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♀:分かったわ、邦彦君。
本当を言うとね…
私は、あなたのその言葉を待ってたのよ。
いいわ、私が手伝ってあげる。
でも、その先はあなたがやるのよ。
彼女が外せないマスクを
心のマスクごと取り去ってあげて…
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僕は今の聖子さんの言葉に感動した…
勇気づけられた…
『マスカレード』の心に掛けたマスクを、僕が…
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♀:ええ、聖子さん!
僕、やります。
『マスカレード』の顔だけじゃなく
心を覆ったマスクを外してあげたい!
仮面舞踏会じゃなく
素顔で踊らせたあげたいんだ
彼女の人生を!
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しばらく聖子さんからのDMが返って来なかった…
どうしたんだろう…?
数分経っただろうか…? すると、
「ブーン…ブブ…ブーン…」
僕の左手に持っていたスマホが、突然リズミカルな振動を始めた。
そして次に、」今度は液晶画面が淡いピンク色の発光で優しいリズムの点滅を始めたんだ。スマホの振動とピンクの点滅は、あるメロディを奏でていた…
「この曲は…」
それは数年前、コロナ禍で家に閉じ籠り気味だった人々の間に、動画配信サイトから発信され瞬く間に爆発的なヒットを叩き出した歌…『ねえ、君の笑顔を見せてよ…』だった。
ヒットした当時、まだ小学生だった僕も大好きで、今でも口ずさむ事の出来るメロディーだ。幅広い人達に親しまれていた令和の時代の大ヒット曲の一つなんだ…
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♀:邦彦君、ごめんなさいね…
あなたの言葉に感動して泣いちゃった…
さすがは詩人だわ。
やっぱり、あなたは詩を続けるべきよ。
そのためにも、私も協力するわ。
この数年前に大ヒットした歌みたいに
あなたと私で『マスカレード』ちゃんを
マスクなんて無しで笑える女性に
してあげましょう!
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僕は『マスカレード』に対して絶望していた気持ちが、少し希望に変わってきたように思えた。
もちろん… 僕一人じゃ絶対に不可能だったけど、この風祭 聖子さんという人が味方に付いてくれた事で、何だか出来そうな…そんな気がしてきたんだ。
よし、出来なくてもいいなんて考えは捨てるぞ。やるからには必ず『マスカレード』の顔と心のマスクを彼女自身に外させて見せる。
それまでは、僕も『seclusion』に詩の投稿はしない。
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♂:はい、聖子さん。
ぼくに出来る事なら何でもやります。
よろしくお願いします。
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♀:ええ、頑張りましょう。
とにかく、マスカレードちゃんの事は
まず私の方で当たって見る。
あなたは取りあえず通常通りの生活を
しててちょうだい。
必ず私から連絡するわ!😉
それじゃあ、これで切るわね…😘
返信はいらないからね⛔
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聖子さんからのDMは、今のが最後だった。
風祭 聖子さんって、あんな不思議な人だったんだ…
僕は、彼女とは『seclusion』の詩アカで知り合ったんだ。
言っちゃ悪いんだけど、聖子さんの詩はどう贔屓目に見ても…ヘタクソだった。頭は抜群にいい彼女だけど…詩のセンスが無いんだ。
でも、詩は大好きらしくて僕と数人くらいしか『いいね』をくれなくても、書くのを止める気なんてまったく無いようだった。
詩はお粗末だけど、パソコンなんかのIT技術の才能は天才的なんだろうか…? さっき彼女が自分について言ってた事が全部真実だったら、僕は恐ろしい人と知り合いになってしまった事になるけど…果たして大丈夫なんだろうか?
でも、ヘタクソだけど…僕はあの風祭 聖子さんが書く詩がなぜか好きなんだ。
なぜだろう…?
自分の気持ちを正直に表現してるところかな…?
年は僕よりだいぶ上だけど彼女の書いた詩は読むと、なんか純粋な子供が素直な気持ちのまま書いた詩のようで、思わず笑顔が浮かんでしまう…そんな不思議な詩を彼女はいつも書くんだ。
それって、大人の上手な詩を書く人には真似したくても出来ない事だと僕は思う。
だから、僕は今回の『マスカレード』の件でも、聖子さんの事を信頼して任せても大丈夫な気がするんだ。子供みたいな純粋な詩を書ける人に悪い人はいないって僕は思う。
さあ、聖子さんから連絡が来たら次は僕の番だ。
大学入試の時よりも緊張するけど、精一杯頑張らなきゃ…
なんか初恋の人に告白するときの気持ちみたいだ…
心臓がドキドキしてる…
【次回に続く…】
(※)風祭 聖子…
幻田恋人著:風俗探偵 千寿 理(せんじゅ おさむ):第3話「スーパー秘書・風祭聖子」 参照
幻田恋人著:風俗探偵 千寿 理(せんじゅ おさむ):第8話「探偵の危機! 装甲戦闘RV『ロシナンテ』緊急発進!」 参照
幻田恋人著:風俗探偵 千寿 理(せんじゅ おさむ) 番外編:天馬計画、暗号名『黒鉄の翼』 参照