妖狩りの侍と魔剣『斬妖丸』 : 「由井正雪と魔槍『妖滅丸』」(⑦漆)" 無念なり! 柳生家お庭番… "
ふふふ…
追って来おるわ
柳生の犬どもめらが…
『妖滅丸』よ
さっそく、先程手に入れし『野衾』の力を使うぞ!
出い、『野衾』よ!
某を宙へ飛ばせいっ!
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な、何じゃ!
あれはっ?
由井 正雪めが手槍で空中に円を描いたかと思えば
円の中から空飛ぶ化け物が出おったあ!
おおっ! なんと…
由井 正雪めが妖の背に乗って空を飛びおった!
皆の者、手裏剣を投げい!
あの妖を射落とすのじゃ!
俺は十兵衛様に報せる!
あの様な妖風情に後れを取るでないぞ!
我ら柳生家お庭番
柳生忍軍の力を見せるのじゃ!
抜かるな、者ども!
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はっははは!
貴様らのそんな手裏剣ごときで
某と我が『野衾』を射落とせると思うてか!
『野衾』よ、炎を吐け!
あの柳生の犬どもを焼き殺せいっ!
********
うおお!
妖が火炎を吐きおったあ!
お、俺の仲間が…
柳生の庄の仲間達があ…!
くっ…
許せ…
俺は十兵衛様に
この事を報せねばならぬ…
くううっ…!
********
ふふふ…
『妖滅丸』よ
『野衾』の妖力は素晴らしいぞ
これで某は自在に飛べる様になった
空をも手に入れたぞ!
幕府を転覆させる大いなる力となろう
『青龍』も柳生十兵衛も恐れるに足らずじゃ!
むっ…
柳生の犬が一匹逃げおったか…
事の仔細を十兵衛に報せに奔ったか
まあよい…
某の恐ろしさを
詳細に十兵衛に伝えるがよい
いかに十兵衛が世に並ぶ者無き剣豪と言えど
所詮は人間よ…
貴様如き、最早怖くは無いわ!
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ん…?
おお、茂吉!
首尾はどうであった?
由井 正雪めはいかが…
む…?
茂吉!
他の者はどうしたのじゃ?
なぜ、お前が一人…
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十兵衛様…
わ、私の仲間達は…
ううっ…
皆、由井めに…
由井 正雪とヤツの妖めに…
焼き殺されました…
わ、私以外は… 全滅です…
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そうか…
茂吉よ…
お前は俺に報せるために
身を切るような思いで一人帰って参ったのだな…
それで良い…
お前だけでも、よう戻った…
さぞ、辛かったであろう…
死んだ者達は俺にとっても
柳生の庄で幼少より兄弟の様に育った連中…
共に柳生新陰流の剣を学びし兄弟弟子どもじゃ
俺も身を切られるより辛い…
おのれ…由井 正雪め…
この恨み、晴らさで置くまいぞ…
茂吉っ!
泣くな!
この柳生十兵衛三厳が
由井 正雪の幕府転覆の企てを防ぎ
ヤツを地獄へと送り込み
殺された者どもの無念を必ずや晴らしてくれる…
茂吉!
お前は他の者どもを集め
殺された仲間の遺体を回収してまいれ!
ねんごろに葬ってやろう…
俺か…?
俺は沢庵和尚の元へ急ぐ!
由井 正雪めの魔槍を一刻も早く封じるためじゃ!
泣いている場合ではない!
急げ!