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妖狩りの侍と魔剣『斬妖丸』 : 「赤い雨と蜘蛛の糸…」
ぬ…?
雨が降ってきたか…?
いや、この赤い色は…
血!
『斬妖丸』よ、感じるか…?
この降りし赤い血の雨は
まさしく妖の起こせし仕業…
むう?
あの大木の張り出した大枝に
吊るされしは
若き娘の裸身か…?
白き肌が血にまみれておる
惨い事を…
「むんっ!」
拙者は小柄を放ち
娘の遺体を枝に繫ぎ止めし綱を
断ち切った
落下する娘の遺体を
拙者は地上にて受け止める
「南無…」
娘の身体に巻き付きし綱は
粘つく白き糸の束…?
どうやら蜘蛛の妖と見た
気を付けよ『斬妖丸』…
この夜の帳の中
夜目の利く妖に有利…
拙者よりもお前が頼りだ…
「シュバッ!」
闇より飛来せし蜘蛛の糸…
拙者に触れし寸前に
『斬妖丸』が斬り捨てた
蜘蛛の糸か!
よくやった『斬妖丸』
危うき所であった…
あの糸に絡め取られたら
如何に拙者と言えど…
よし…
拙者は目を瞑る
どの道、この新月の夜陰の中…
拙者の目は当てにはならぬ
『斬妖丸』よ
ヤツの居場所を探れ
その方が拙者の目となるのじゃ…
頼んだぞ…
*********
そこかっ!
拙者の投げた小柄が
うなりを上げて飛んで行く
「ぎゃああああっ!」
手応えあり…
『斬妖丸』の指示通り放った小柄は
見事ヤツに突き刺さったようだ
ふ…
ヤツの血の匂いだ
禍々しい人食い妖の血の匂い…
匂うぞ…
これで拙者にもヤツの位置が掴める
妖よ… 聞くがよい
その小柄には妖怪や鬼にのみ効く
ありがたい毒が塗ってある…
貴様らにとっては痺れ薬じゃ…
間もなく
貴様は身体が痺れて来よう
もう逃れる事は叶わんと思え
貴様に喰われし
罪もない村人達の
無念の想いを知るがよい…
貴様は…
恐怖にのたうち回りながら
自分が犯した罪の深さを
己が身で思い知るのだ
楽には死なさん…
貴様の八本の脚を一本ずつ
叩き斬ってくれよう
じわりじわりと死ぬるがよい…
行くぞ!
蜘蛛の妖よ、覚悟致せいっ!
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