【お知らせ】『一万年生きた子ども――統合失調症の母をもって』単行本化のお知らせ
ウェブ連載『一万年生きた子ども――統合失調症の母をもって』がこのたび小社より単行本化されることとなりました!
現在公開中の第1~15話に、2~3万字の書き下ろしを加え、11月ごろに発売となります。
現在、単行本化を記念して、全15話を一挙に公開しております。
(1~10回までの転載をお許しくださった『REDDY』さんに感謝申し上げます)
本書は、漫画家・エッセイストのナガノハルさんが、子ども時代~現在までを描いた私小説です。
ナガノさんのお母様は、ナガノさんが小学校2年生のときに統合失調症を発病しました。
最近では、子ども時代に子どもらしく生きることを奪われた方たちを「アダルトチルドレン」と呼んだり、家族のケアを担う未成年のことを「ヤングケアラー」と呼び、実態の把握や支援体制の構築が急がれています。
ナガノさんもそのお一人でしたが、本書では「アダルト・チルドレン」「ヤングケアラー」という固有名詞は使わず、「一万年生きた子ども」と表現しています。
この言葉は、わずか8歳で誰よりも大人の役割を引き受けなければならず、「一万年生きてきたかのような大人の心」で物事を俯瞰し、世間と母との間に起こるトラブルを調整しなければならなかったことを表す、ナガノさんオリジナルの言葉です。
ナガノさんのこれまではとても過酷ではあるのですが、不思議と温かみのある「一万年生きた子ども」という言葉で表現した点に、その感受性の深さが光っています。
本書は事実を描いていながら、巧みに練り上げられた物語でもあり、誰もが楽しめる一冊です。
また、本書では、子ども時代の困難だけでなく、青年期・成人後の苦悩(リストカットや自殺未遂、不登校、職場での人間関係)も描かれている点もポイントです。
「ヤングケアラー=子どもの問題」と思われがちですが、成人後も苦悩は続きます。「子ども時代を子どもとして生きることを奪われ、誰よりも大人して生きることは、永遠に子どもであるということ」、つまり大人として成長できないということでもあります(「」内はナガノさんの言葉)。
今、精神疾患の患者は400万人を超えると言われています。統合失調症は100人に1人。その家族については支援が進まず、今も過酷な状況が続いていると思われます。
『一万年生きた子ども』は、精神疾患のある親をもつ子どもの経験を可視化し、社会的議論を呼び起こすための一書にもなるでしょう。
・発売時期 11月中旬
・予定価格 2000円+税
・判型 四六判
・ページ数 200頁
・目次
はじめに
1 黄金の体と一万年の心が目覚めるとき
2 墓で息をする
3 誰も来ない運動会
4 初恋と不法侵入
5 みちこ姉さん
6 毒
7 李典教と幽霊
8 震える唇
9 霊感といじめと授業参観
10 一万年の子どもでなくなるとき
11 人生すべて後遺症
12 母と仕事
13 女の子の友だち
14 留年
15 女性嫌悪(ミソジニー)
16 私は病者
17 やっぱり助けてくれないんだ
18 魔の三三歳
19 母、薬をやめる
20 現在の私
21 一人じゃ無理
おわりに
予約の方法などについては、また追ってお知らせいたします。