合宿で“電撃”が走った理由とは?GENDA新組織・経営戦略室のこれから
GENDAは、アミューズメント施設「GiGO」やカラオケチェーン「カラオケBanBan」、などエンターテイメントで幅広く事業を展開しています。2024年9月、新たな組織として「経営戦略室」を経営直下に設置しました。
30社以上のグループ会社を持つGENDAにおいて、経営戦略室は企業を横断したマーケティング・プロダクト・DX・組織構築などのグロース支援が期待されています。では、具体的には、どのような価値をどのように提供していくのでしょうか。その方向性を定めるため、メンバー全員で合宿を実施しました。
今回のGENDA noteではHRBPの萩原美緒が聞き手となり、合宿の企画・運用を行った松沼雄祐、重村裕紀、田中慎一、そして参加者として関わった千葉俊輝の4名に合宿の様子や成果を聞いていきます。
プロフィール
専門性の異なるメンバーが、同じ方向性を向くために
ー萩原: まずは、経営戦略室の構成と、今回の合宿が計画された経緯を教えてください。
重村: 経営戦略室は、プロダクトマーケティング部から体制を変更した組織です。体制変更前から、デザイナー、マーケター、プロダクトマネージャーなど多様な専門性を持つメンバーが集まっています。
ー萩原: 「経営戦略室」という名前ながら、プロダクトに携わるメンバーが多く所属しているんですね。
松沼:立ち上げ当初、組織の一体感や職種を問わずメンバーの当事者意識をどう醸成するかが課題でした。職種に関係なく、メンバー全員で経営戦略の視点からデザインやプロダクト開発ができれば、GENDAはもっと大きな成果が出せるはず。そのためには、メンバー一人ひとりが「経営戦略室」という名称の組織にいる意味や、経営戦略室として目指す方向性を、メンバー全員が納得する形で共有する必要があります。それを実現できるのが、合宿だと考えて企画しました。
ー萩原: 合宿の具体的な内容を教えてください。
松沼: メインは経営戦略室のVMV(ビジョン、ミッション、バリュー)作りです。今回の合宿では、特にミッションについて各自の考えを発表し、グループに分かれてブラッシュアップを行いました。
ー萩原: 合宿を効果的に進めるために、どんな工夫をしましたか。
松沼: 当日私は司会を担当したのですが、あえてミッションの作成とは関係のない、アイスブレイクの時間を設けました。ミッションを話し合うだけだと堅くなりがちですが、近況報告や好きなエンタメコンテンツを共有する時間を作ったことで、お互いの人となりが分かり、「この人ならではのビジョン」として共感できる。そんな良い流れが生み出せました。
ー萩原: 司会進行の流れは事前に打ち合わせをされていたのでしょうか。
松沼: 完全な即興でした。だから、発表内容を汲んだアドリブが多く、漫才のようでそれが良いアクセントになっていたかと(笑)。
田中: そうそう。また、発表自体は真剣に行うのですが、松沼さんが「おっ!」「なるほど!」と合いの手を入れるから、自然と笑いが生まれる。そんな和気あいあいとした雰囲気でした。
「レバレッジ」という言葉に電撃が走ったわけ
ー萩原: 合宿を通して、経営戦略室のミッション「GENDAレバレッジを最大化し、:) (スマイル)を増やす」が決定したと聞きました。(「:)」はGENDAのコーポレートロゴに使用されているシンボル)その経緯を聞かせていただけますか。
重村: 実は、合宿時点では「GENDAのHubとなり、スマイルの総量を増やす」というミッションに決まりかけていたんですよ。でも、悪くはないんだけれど、いまひとつ決め手に欠ける感じが拭えなくて……。私だけでなく他のメンバーも同じように感じていたので、なぜしっくりこないのか、どんな言葉ならしっくりくるのかを再度考え直すことにしたんです。
その過程で、「GENDAレバレッジ」という言葉が降りてきました。このフレーズに出会えた瞬間、本当に電撃が走りましたね。レバレッジという言葉を軸にすれば、最高のミッションができると直感しました。
そこで、合宿の延長線として、マネージャー陣とのオフライン飲み会を実施しました。経営戦略室として大切な行動指針を再び議論し、「GENDAレバレッジを最大化し、:)を増やす」というミッションが生まれました。
千葉: 元の案も、「GENDAスマイルを増やす」という方向性自体は良かったんです。ただ、増やし方に課題を感じていました。特に「Hub」という表現では、介在価値を十分に表現できていない。それが「レバレッジ」に変わることで、「介在することで効果的な価値を生む」という意味合いが生まれました。この表現なら、私たちがやるべきことを的確に表していると自信が持てましたね。
GENDAの“3つのレバレッジ”で実現する、新たな価値創造
ー萩原: 「GENDAレバレッジを最大化し、:)を増やす」は、紆余曲折を経てできた経営戦略室のミッションだったのですね。では、具体的にはどのような価値をどのように提供していくためのミッションなのか教えてください。
重村: 経営戦略室ができる前は「GENDA、グループ各社のHubとなり、非連続成長を創り続ける」というミッションを掲げていました。これには、GENDAがグループ内を横断的に関わるからこそ出せる価値を表現し、グループ会社単体ではできないことをサポートする意味合いがありました。
しかし、その当時とはフェーズも変わり、メンバーも増えてきた。今の私たちの大きな強みは、高い専門性を持った多様なメンバーがいることです。少数精鋭でスピーディーにコラボレーションできる。この強みを際立たせる表現が「GENDAレバレッジ」です。
また、「事業成長を作る」「売り上げや利益を増やす」といったビジネス目標よりも、世の中にどんなインパクトを与えられるか。この視点を主軸に置いた方が、ミッションとして共感しやすいと考えました。「:)(スマイル)を増やす」という表現なら、私たちが作り出す価値がより伝わり、新しく入ってくるメンバーも共感しやすいはずですからね。
ー萩原: 具体的には、どのようなレバレッジを指すのでしょう。
重村: 「人材のレバレッジ」「アセットのレバレッジ」「ファイナンスレバレッジ」の3つです。
まず「人材のレバレッジ」は、グループ会社では採用が難しい、突出した人材を採用すること。一人ひとりが楽しく、協力し、成長することで生産性を高めていきます。
「アセットのレバレッジ」は、GENDAが持つ様々な事業アセットの活用です。グループ内にあるアミューズメント・ゲームセンター、カラオケ店舗、フードコンテンツなど、様々なアセットを掛け合わせて生み出せる価値もありますし、GENDA IDを通じて、それぞれのドメインの顧客基盤を共有し、より多くの人にエンターテイメントを提供していきます。
「ファイナンスレバレッジ」は、経営戦略室のアプローチは、収益性の向上や、事業成長の再現性を確立し、投資機会を最大化することです。結果的に、従来の資金調達、M&A、IRの強みをさらに最大化することができます。また、経営戦略やガバナンスを強化するだけでなく、DXやマーケティングを通じて、ラストワンマイルのアウトカムを創出まで推進できることが強みです。
ー萩原: 新しいミッションについて、千葉さんと田中さんはどのように感じましたか?
千葉: 以前のミッション「GENDA、グループ各社のHubとなり、非連続成長を創り続ける」は、どちらかというと社内向けの表現でした。それが「GENDAスマイルを増やす」となり、社会への価値提供という方向に変わった。それはもちろん、消費者だけでなくグループ会社の従業員の方々にも当てはまりますよね。そういった点で、バランスの良いミッションだな、と感じています。
私はプロダクトマネージャーとして、顧客価値の提供を特に重視しています。その要素が加わったことは、大きな意味がありますよね。
田中: 実は、最初の頃は「ミッションなんて要らないんじゃないか」と思っていたんです。それでも会議を重ねていくと、メンバーは大体同じ方向を向いているのに、それぞれが大切にしているところが微妙に違うことに気がついて。そんな中でも誰もが大切にしている思いが、「:)」マークに込められているんです。
このミッションなら、違和感なく目指していける。しかもチームが目指すべきものでもある。これから新しくメンバーが入ってきた時の指針にもなる。新しい経営戦略室のあり方として、この定義ができたことは次のステップへの大きな一歩になると思っています。
グループの新たな組織文化を、経営戦略室から創造していく
ー萩原: このミッションを掲げて、来期以降どんな挑戦をしていきたいか、それぞれ聞かせてください。
田中: デザインチームでは事業やプロダクトに対してレバレッジを最大化できるようなデザインを提供していければと思います。経営戦略室とGENDA全体に貢献できるよう、デザインチーム一丸となって頑張りたいですね。
直近ではGiGOとカラオケBanBanの複合店がオープンしました。お互いの事業のシナジーを合わせて発展させる、まさにGENDAならではの取り組みで、経営戦略室のメンバーもワクワクしながらオープンを見守っていました。デザイナーも特定領域にとどまらず、様々なことにチャレンジしていければと思います。
千葉: プロダクトマネージャーとして、組織の魅力と強さを引き上げていきたいですね。各プロダクト、各事業に一定の人材がいる今、そこをバリューアップすることで、まだ生まれていないシナジーを引き出せる可能性があります。来期はその部分を特に強化したい。
そのために重要なのは、レバレッジをただ配置するだけでなく、きちんと“効かせる”こと。実現のためにも、プロダクトのビジョンをより明確に定義し、Bizサイドと協業しながらポートフォリオを整備していきます。
ー萩原: Bizのマネージャーである松沼さんは、来期どのようなチャレンジをしたいですか?
松沼: 少ない人数でも、インパクトの大きな施策にチャレンジします。例えるなら、鰯ではなく鯨を釣ることにチャレンジしていきたい。これまでも個人的にはレバレッジの考え方で仕事に取り組んできましたが、これが組織のビジョンとして明文化されたことが素直に嬉しいですね。
ソフトバンクの孫さんが「1兆2兆で数えられる会社になりたい」とよく話すように、私たちも1億2億という数字がポンポンと出てくる事業インパクトのスケールを目指したい。その実現のためにも、施策やナレッジを共有し、組織や会社を超えてお互いの大きな成果を喜び合える組織にしたい。
アセットのレバレッジを活かし、新規事業と既存事業で良い意味での競争を生み出すことも考えています。既存事業での利益創出と、新規事業でのコストメリット。これらを競い合える組織になれば面白いですよね。
ー萩原: グループ会社間の協業と競争をバランス良く両立させる、ということでしょうか。
松沼: そうですね。ナレッジシェアや事例の横展開をしっかり行い、評価の尺度を揃えていけば、お互い刺激を受けながら成長できるはずです。
ー萩原: では、経営戦略室室長として、重村さんが大切にしていきたいことはありますか。
重村: GENDAのサービス群で利用できる共通IDである「GENDA ID」は非常に重要ですよね。顧客基盤を増やし、相互送客や共通機能を滑らかにしていく。これはDXやマーケティングの改善にも深く関わってきます。
また、採用基準を高め続け、それに見合うキャリアパスと魅力的なチーム作りも強化したいですね。メンバー間の情報共有が特に重要で、各社の状況やノウハウを共有し、グループ全体で高め合う文化を作っていきたい。その大前提として、お互いを尊敬・信頼し、プロとして振る舞えるチームワークもより大切にしていきます。
千葉: 情報共有については、プロダクト開発部も巻き込んで、経営戦略室に閉じない会議の開催を予定していますよね。
ー萩原: すでに動き出していることもあるのですね。
松沼: はい。色々な施策が動き出しましたが、これだけ多種多様な職種、バックグラウンドのメンバーが同じ方向を向けているからこそで、それを確認できたのは合宿だったな、と。これからも定期的に合宿を実施する予定です。コンセンサスを取り、士気を高める良い機会になりますから。いずれは、他部署やグループ会社も交えて、異業種交流会のような形式で開催しても面白いかもしれないな、と思っています。
千葉: 他部署でも、何か大事なことを決めるときは合宿、という流れができつつありますよね。経営戦略室の動きが、隣接組織に良い影響を与えているのは嬉しいですね。
松沼: 今後も経営戦略室が、GENDAの文化づくりのエバンジェリストになっていけたら良いですね。