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ジャパンタクシーの改善点(UD)

タクシー車両として、現在の導入メイン車種であるトヨタのジャパンタクシー。

セダン系と比べて車内が広く、お客様からは好評な車両です。

一方で、全てがユニバーサルデザインであるために、車いす対応車両としては未熟な部分が多く、タクシー会社からもタクシードライバーからも批判されるという残念な事態。

現役タクシードライバーとして、また元福祉施設勤務で多くの福祉車両の運転を経験&社会福祉士&介護福祉士として、UD部分の問題点や改善点を書いてみたいと思います。


端的に言えば、車いすの方の乗降に時間がかかることや、安全面の問題ですね。

まずは、車内のセッティング。
後席を跳ね上げ、助手席を前方に倒して格納。
スロープを組み立てて設置して、固定具の準備。
工程が多すぎます。

それらセッティングに関しては少しずつマイナーチェンジで改善してきているとはいえ、根本的な「横のスライドドア部分で乗降する」ということが問題です。
現在、多くの福祉車両では「後方から乗降する」のが基本です。
車両によって違いますが、据え付けスロープタイプのものと、リフトタイプのものがあります。
しかし、JPNは横から乗車で、かつ、スロープが据え付けタイプではなく、乗降時に乗務員が設置しなければなりません。

横から乗降という事は、車両の左方に「スロープ設置」と「車いすの方と乗務員」のスペースが必要になります。
大きな病院の玄関などなら心配ありませんが、狭い路上では乗降場所を探すのも大変ですし、後続車両の邪魔にもなりかねません。
また、左方が歩道等であれば、縁石やガードパイプがあったり、段差があることもあります。

また、スロープを乗務員が設置するという事で、その設置ミスで事故を起こす危険性もありますし、後退防止ベルトなどの補助機能も無いので乗降時に利用者や介助者が転倒や転覆する危険もあります。
後方から乗降するタイプであればハッチバックが屋根代わりとなりますが、横からではそういうものも無いため、雨の日などはスロープも滑ってとても危険です。(もちろん、利用者や介助者も雨に濡れます。)

スロープを使って乗車後は、車内で90度方向転換をしなければなりません。
これも大ごとです。
狭い車内ですからね。
利用者が大柄の方だと、大変さも増します。

そして、車いすの固定。

全て(4か所)にフックを取り付け、動かないように締め付け、シートベルトも付けて完了。
狭い車内で、車いすの下部4か所にフックを取り付ける作業も、地味に大変です。
また、全てて作業で、締め付け強度なども「感覚」頼みですから、安全面の不安があります。

そして、最後にスロープを取り外し、収納したら出発です。

文字で書いただけですが、作業を想像しながら読み進めてもらうと、工程の多さや安全面での心配があることを理解していただけるかと思います。

比較という意味で、一般的な福祉車両の乗降方法も書いてみましょう。

まずは、車両を安全な場所に止めます。
後方から乗降するので、左端に止めればOKです。
後部のハッチバックを開けます。(屋根代わりになります。)
車両に据え付けられているスロープを引き出します。
後席を前方に倒し、車いす乗車スペースを作ります。(多くの車種で、ワンタッチで簡単に収納出来ます。)
スロープの下に、利用者の車いすを移動します。
車内に据え付けられている前輪用固定具のついたワイヤーロープを引き出し、車いすの前輪に引っ掛けます。
ワイヤーロープは電動で格納出来るタイプが多く、リモコンで巻き上げて利用者を乗車させます。(電動でなくても、後退防止機能が付いているので、手動で押し上げる時でも後退して転倒することはありません。)
乗車したら、車いす後部の固定具を引っ掛けて、ロックを掛けます。(このロックも自動のものが多いです。)
スロープを格納し、後部ドアを閉めたら終了です。
文字で書くと複雑に見えますが、実際にやってみるとJPNとは比較にならないほど簡便で、安全でもあります。

私の会社ではどちらのタイプのUDもありますが、JPNは出発まで10分以上かかりますが、別車種では3分以内で終わります。


さて、ここまで書いてきましたが、では何故JPNは横から乗降なのか???

それは、燃料がLPGだからです。
どうしてもガスタンクを積載する場所の関係上、後部から乗降ということが出来ないんです。
それを無理やりユニバーサルデザイン車両にするために、横から乗降で車いす固定を考えたということですね。
ですから、解決策の一つは、ガソリン車(ガソリンハイブリッド)にすることかなと思います。
LPGからガソリン車にすることにも、もちろん問題はあるんですが、、、。


国として、タクシーをユニバーサルデザイン化したいという事であれば、タクシー会社やドライバーが満足できる車両でなければなりません。

例えば路線バスでも、低床バスが出始めた頃の車いすスペースや固定具は複雑で時間がかかるものでした。
しかし今はずいぶんと改善され、それによって全国で広く走るようになっています。

タクシーに関しては、まだUDが導入されて数年です。
これからブラッシュアップされ、日本のタクシーが普通にUD車両となることを私は望みます。

何故なら、タクシーはドアtoドアだから。
電車の駅まで行けない人、バス停まで行けない人、電車やバスが走っていない場所でも、タクシーなら使える人は沢山います。

タクシーが未来を見るときに、そういう公共性を考えるときに、絶対にUD化は避けられません。

皆さんはどう考えますか???

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