〈詩〉半夏生の声
せせらぎがベースのように響く葦原に
オオヨシキリがバスの音色を響かせる
そっと混じる虫たちの涼しげなカルテット
突然、茜色の空を切り裂くように
森の奥から短調の音色が響きわたり
僕を不安にさせる
半夏生だというのに、空気を晩夏に染めて
「夏やすみはもう終わり」と現実をつきつけ
「何か忘れてはいませんか?」と問いただす
半夏生のヒグラシに僕は訴える
疾く過ぎゆくなよ
もう少し僕に夏のうつろいを味あわせて
物悲しげな音色が答える
そう思うのなら、「今、ここ」を楽しめと
不安に怯えている時間などないのではないか?
頷くしかない彼の正論
僕は立ち上がり、歩き出した
茜色の空気の中へと
※半夏生(はんげしょう)=夏至から11日目。現在の暦では7月2日頃
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