キトサンとゲル
人工イクラや「つかめる水」で使われるアルギン酸ナトリウム。
海藻由来の多糖類です。
人工イクラ作りでは、アルギン酸ナトリウムの水溶液を、乳酸カルシウム水溶液中に滴下することでゲル化させます。
こんなふうに、球状の綺麗なゲルができます。
カルシウムイオンが、アルギン酸ナトリウムのカルボン酸を橋架けして網目構造を作り、ゲル化させます。
つかめる水も同じ原理です。
薄いゲル膜に水を閉じ込めた、不思議な食感の材料を作る事ができます。
今回は、キトサンを使ったゲル化についてご紹介します。
キトサンはキチンから作られます。
キチンは、海老やカニなどの甲殻類の外骨格から取れる多糖類です。
このキチンをアルカリ処理し、脱アセチル化するとキトサンになります。
水に不溶のキチンに対して、キトサンは酸性の水に溶けます(中性付近の水には溶けません)。
キトサンの用途は幅広く、食品添加物や化粧品、医療材料や土壌改良剤などに使われています。
加工がし易く、フィルムや繊維にして使われることも多いです。
また、原料となる甲殻類の外骨格は殆どが廃棄されているため、枯渇する可能性の低い資源から作っていると言えます。
今回使用したのは、細かい粉末に加工されたキトサンです。
見た目は他の多糖類とほぼ同じです。
1%の水溶液を作ります。
ただ、ほぼ中性の水道水には加熱しても溶けません。
ここに、クエン酸を加えて酸性の水溶液にします。
すると、キトサンが溶けて濁りが少なくなりました。
若干溶け残りましたが、これだけ溶ければ十分です。
アルギン酸ナトリウムの方は、1%の水溶液をペットボトルで作ります。
粉末を入れた後、ぬるま湯を加えてよく振り混ぜます。
完全には溶けないので、このまま一晩、冷蔵庫に入れます。
すると、粉のカタマリに水が浸透し、溶け易くなります。
綺麗に溶けていますね。
この1%のアルギン酸ナトリウム水溶液に、キトサン水溶液を加えて混ぜます。
すると、少し濁ります。
アルギン酸とキトサンがネットワークを作り、ゲル化しているんです。
こんな風になります。
とても柔らかいゲルです。
次に、食品の増粘剤・増粘安定剤として使われる、キサンタンガムをゲル化させます。
まず、1%のキサンタンガム水溶液を作ります。
キサンタンガムは冷水にも溶けるため、室温の水に溶かします。
溶かすのに少し時間がかかります。
自動で攪拌してくれるスターラーを持っていれば楽ですが、なくても一晩冷蔵庫に入れておけば溶けやすくなっています。
アルギン酸ナトリウムを溶かす時と同じです。
綺麗に溶けたら、キトサン水溶液を加えて混ぜます。
こちらも同じようなゲルになりました。
ゲル化の仕組みはシンプルです。
正の電荷を持つアミノ基と、負の電荷を持つカルボン酸によるものです。
キトサンはこのような構造をしています。
そして、カルボン酸を持つ多糖類と混ぜると、以下のようになります。
分かり易くするため、簡略化した構造にしています。
アミノ基とカルボキシル基が静電的引力によって分子鎖を橋架けし、ネットワークを作ります。
*実際はこんなにシンプルではないです。
また、pHによってはゲル化しません。
キトサンは健康食品やサプリとして販売されていますが、ただの食物繊維です (^^;)
健康維持には十分な睡眠、適度な運動、バランスの取れた食事が欠かせません。
特に睡眠ですね。
健康食品やサプリに使うお金は、他の事に使った方が良いです。