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ソフトロボティクスについて考える②

割引あり

前回はソフトロボティクスの歴史について、1960年頃までをお話ししました。

今回は、1960年以降のソフトロボティクスの歴史を簡単にお話しした後、
ソフトロボティクスに使うゲルについて考えてみます。

まずは歴史について簡単に見て行きます。前回は生体工学まででした。

  • 1960年代~1980年代:
    生物の動きを模倣しようとする試みは古くからありましたが、
    初期のロボット研究は剛性のある金属製のアームなどが中心で、ソフトな材料を用いたロボットはほとんど存在しませんでした。
    しかし、筋肉の代わりになるゴム人工筋肉の研究や、空気圧を使用したアクチュエータなど、柔らかい材料を用いた駆動力の研究は行われていました。

  • 1990年代:
    バイオミメティクス(生体模倣技術)の発展により、柔らかい材料を用いたアクチュエータの研究が進みます。この頃、形状記憶合金ゲルを利用したロボットが一部の研究機関で試作され始めました。

  • 2000年代:
    シリコーンやエラストマー(ゴム)などの柔らかいポリマー材料を使用し、生物の動きをより自然に再現する試みが本格化します。

  • 2010年代:
    3Dプリンティング技術や新素材の開発が進み、柔軟で耐久性の高いロボットが登場。医療分野や災害救助用のソフトロボットが実験的に導入され始めました。

  • 2020年代~現在:
    2010年代後半から、大きな変化はありませんが、引き続き、人工筋肉や形状記憶ポリマー、刺激応答性ゲル(電場、光、温度)などの応用研究が進んでいます。農業や宇宙探査などさまざまな分野で応用が試みられています。

そして、今回はソフトロボティクスに使うゲルについて考えてみます。

まず、改めてゲルについて説明します。
ゲルは、高分子の鎖が形成するネットワーク(三次元網目構造体)が水などの液体を含んだもので、水を含んだものはヒドロゲル(ハイドロゲル)と呼ばれます(有機溶剤を含むものはオルガノゲルと呼びます)。身近なものだと、ゼリーがそうです。また、人の体もゲルで構成されていて、多量の水を含んだタンパク質の網目構造体から出来ています。人の体の約70%は水で出来ていると言われていますが、ゲルの中には99%以上が水で出来ているものもあります。例えば、寒天やコンニャクは97%以上が水です。

ゲルの多くは、高分子鎖のネットワークの中に、水などの液体を含んでいます。


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