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今月は蒟蒻のゲル化に関する重要な情報を知り、その謎解明に向け、一歩前進しました。 ゲルロボットの研究も少しずつ進んでいます。
シリコーンゴムは、その安全性の高さと耐熱・耐薬品性の高さから、様々な産業に使われ、日常生活にも広く浸透している材料です。 今回はシリコーンゴムについて詳しく説明します。 1. シリコーンゴムの歴史・20世紀初頭:フレデリック・キッピングがグリニャール試薬の研究過程でシリコーンを生成。 ・1934年: コーニング社が透明シリコーン樹脂を発明し特許を取得。 ・1940年: GE社で直接法開発により軍需産業で利用が拡大。 ・1943年: コーニング社とダウ・ケミカル社がダウ
曇りガラス(くもりガラス)は、光を拡散させる効果を持つガラスで、プライバシーの保護や装飾目的で広く使用されています。 そして、化学実験に欠かせないものです。磨りガラス(すりガラス)の栓が無ければ成り立たない分野もあります。 今回は、そんな曇りガラスの歴史について解説します。 ※曇りガラスは不透明なガラスの総称で、曇りガラスには磨りガラスやフロストガラス、型板ガラスなどがあります。 曇りガラスの起源と発展ガラスの発明: 紀元前3000年頃の古代メソポタミアやエジプトで最初の
世の中の排熱(100℃以下)の多くは活用されていません。 そこで、今回は廃棄されている熱で温度応答性ゲルを活用できないか考えます。 エネルギーの再利用は持続可能社会という観点でとても重要です。 1. 廃熱を利用した温度応答性ゲルの原理 温度応答性ゲルは、特定の温度で物理的・化学的性質(体積変化や親水性・疎水性、色など)を変化させるため、廃熱(100℃以下)をトリガーとして利用することで、様々な機能を引き出すことができます。 廃熱の温度帯(50~100℃)に適したゲルの選
温度応答性ゲルの研究を趣味で始めた頃、頭の中に2つのプランがありました。 1つは、よく知られている温度応答性の高分子を使うこと。 もう一つは、複数の材料を組み合わせる事です。 最初に試したのは、よく知られている温度応答性高分子です。 ただ、何をやっても上手くいきません。 結局諦め、複数材料の組み合わせを試しました。 そして、それも上手く行かずに数年が経過し…
僕は化学メーカーに勤めながら、自宅でゲルの研究を15年続けています。 複数の研究テーマを同時に進め、発見したことを毎年学会で発表しています。 実験や学会発表の準備は仕事から帰宅後、土日・祝日にやっています。 「どうしたら続けられるの?」 とよく聞かれるので、僕が実践しているノウハウをお伝えします。 これからお話する方法は、特別なことは何もありません。誰もが今日から実践出来ます。 ①面倒、大変というイメージを持たない 何言ってるんだ、と思われたかもしれません。 でも、これが続
今回は、温度センサーとしての温度応答性ゲルの用途について考えてみます。 まず、センサーについて考えます。 センサーとは、物理的な量(温度、圧力、光など)や化学的な量(ガス濃度、pHなど)を検出し、それを電気信号などの別の形式に変換するデバイスです。 センサーは、 人が直接感知できないような微細な変化や、危険な環境下での情報を感知することによく使われます。 一般的に、センサーは次の要素から構成されます。 * 感知要素: 物理量や化学量を直接感知する部分。 * 変換要素: 感
実用化例の乏しい温度応答性ゲルですが、 自分の研究している温度応答性ゲルが何に使えるのか、考えてみました。 ある特定の温度を境に、色や大きさなどが変わる温度応答性ゲル。 かつて盛んに研究されていたのが人工筋肉です。 水温が変化するとゲルが収縮する様子は見ているだけでも面白いです。 人工筋肉と言っても、ゲルは密度が低く柔らかいため、大きなパワーを出せません。応答速度も遅く、ゆっくり動きます。 多くの研究者が強く・速くを目指しました。
深海の熱水噴出口(hydrothermal vent)は、海底でプレートの裂け目や火山活動の影響で高温の水が噴き出している場所です。主にプレートの境界付近や海底山脈に見られます。熱水噴出口は科学的にも非常に興味深い環境で、生命の起源や極限環境での生命の適応についての研究対象となっています。 熱水噴出口の仕組み 1.発生メカニズム: 海水が地殻の隙間を通って地下深くに浸透。 地下のマグマによって加熱され、温度が300〜400°Cに達する。 高温高圧下の海水は岩石中の金属や鉱
アメーバは30億年以上前から存在する原生生物です。今回はアメーバについて詳しく見てます。 アメーバ(amoeba, ameba, amœba)は、単細胞の原生生物で、分類学的にはアメーボゾア(Amoebozoa)というグループに属します。 形態と運動 アメーバは一定の形を持たず、柔軟な細胞膜を持つため、形を変えながら移動します。この移動方法は「偽足(ぎそく)」と呼ばれる一時的な細胞突起を作ることで行います。 偽足(仮足とも呼ぶ)は以下の役割を果たします: ●移動: 偽
化学研究において、ガラス器具は実験の精度を左右する重要なツールです。 (更新11/17, 13:13 有料部分に写真を一枚追加しました) 研究に使われるガラス器具の多くは、ホウケイ酸ガラス(通常のガラスよりホウ酸の含有率が高い)で作られており、様々な化学薬品や高温に対して高い耐性を持ちます。 そして欠かせないのが透明性です。反応の様子を確認できるため、実験の過程を細かく観察できます。 また、不活性であることも重要です。容器が化学反応に影響を及ぼすと実験は台無しです。化学反応
2024年10月、東北大学の研究チームは、体温付近で接着力が変わる新しいタイプのハイドロゲル接着剤を発表しました。この接着剤は、体温(約35度)を超えると強力に接着し、温度が低いと接着力が大きく低下し、簡単にはがれる特性を持っています 。このアイデアは、海に生息するムラサキイガイ(ムール貝)が、潮の満ち引きのある岩にしっかりとくっつく性質から着想を得たものだそうです。 このゲルの素材には、体内にもある神経伝達物質のドーパミンが使われています。また、水中で使用できるため、体内
墨汁(ぼくじゅう)は、主に漢字や書道に用いられる黒い液体のインクで、古くから日本、中国、韓国などの東アジア地域で広く使われてきました。今回は、墨汁の歴史や作り方などについて詳しく解説します。また、墨汁の特徴を科学的見地から解説します。 墨汁の歴史 墨汁や墨の歴史は古く、紀元前3000年ごろにまでさかのぼります。初期の墨は、植物の煤(すす)や骨を焼いて得た炭素を主成分とし、水や膠(にかわ:動物性の接着剤)で練り上げて固めたものでした。この技法は中国で生まれ、後に東アジア全域
ガラスは古くから世界中で使われている馴染み深い材料ですが、 実はよくわからない事の多い材料です。 ガラスの構造と性質について、多くの研究者の努力のおかげで基本的な理解は進んでいますが、いまだに解明されていない事もあります。 その未解明の課題について、解説します。 1.ガラスの「ガラス転移」のメカニズム ガラスの形成過程で、液体が冷却されていくとある温度で突然流動性を失い、固体のように振る舞う状態(ガラス状態)に遷移します。これを「ガラス転移」といいます。しかし、この転移の