ベニクラゲの不思議な生態
ベニクラゲ。
透明な体の中に赤い消化器官をもつため、そう呼ばれます。
体長は3mm~10mm程度と小さく、温帯~熱帯の海域に生息しています。
広範囲に生息しているため、全国各地の沿岸で見ることができます。
と言っても、かなり小さいので、よく見ないと分かりません。
水族館でも見られますが、注意してみないと見逃してしまいます。
ベニクラゲ(海遊館HP : https://www.kaiyukan.com/connect/news/201209_post-16.html)
このベニクラゲ、なんとも不思議な性質を持っています。
なんと、寿命を迎えると若返るんです。
傷ついて死にそうになったときも、若返ります。
こんな事が出来る生き物は、現在確認されている生物の中ではベニクラゲだけです。
ベニクラゲは寿命を迎えるとポリプに戻ります。
簡単に言うと、幼生体に戻るんです。
そのため、不老不死のクラゲと呼ばれたりします。
具体的には、寿命を迎えると団子状になり、そこから枝のようなものが伸びます。これがポリプの状態です。
伸びた枝には複数の実がつきます。
この実がベニクラゲに成長します。
つまり、若返ったあとにクローンをつくるわけです。
ただ、ベニクラゲは小さく、多くの生き物の捕食対象です。
食べられてしまえば、若返ることは出来ません。
また、水温や水の汚れが原因で、若返ることが出来ないケースもあるそうです。
そのため、ベニクラゲが無限に増えるということはありません。
捕獲したベニクラゲを若返らせる実験も試みられており、京都大学の久保田教授は10回若返らせることに成功したそうです。
しかし、若返りのメカニズムは分かっていません。
もちろん、いくつかの仮説はあり、研究も進められています。
興味深いのは、ベニクラゲの細胞が用途にあわせて変化することができる点です。
私たち人間の身体は、1個の受精卵が様々な細胞に変化していくことで作られます。
しかし、いちど筋肉などの特定の細胞に変化したら、他の細胞になることは出来ません。
ところが、ベニクラゲの細胞はその変化を行う事ができます(分化転換と呼びます)。
前述したように、ベニクラゲは若返るときに団子状態になりますが、
これによって細胞の変化が可能になっているのではないか、と考えられています。
団子状になることで、細胞が変化可能なものに変わっているのかもしれません。
ベニクラゲはなぜこのような能力を獲得したんでしょうか?
とても不思議ですね。
ベニクラゲは以下の加茂水族館公式YouTubeチャンネルで見ることができます。