大局観とゲルの研究
*前半無料です
将棋や囲碁、チェスなどのボードゲームで使われる大局観という言葉。
特に将棋でよく使われているように感じます。
検索すると、圧倒的に将棋関連の記事やニュースが出てきます。
大局観とは
「全体を把握して進行状態、形勢等を判断し、方針、作戦を立てる能力。」
日本囲碁連盟(https://www.ntkr.co.jp/igoyogo/yogo_538.html)
「物事の全体の動き・形勢についての見方・判断」
三省堂 大辞林 第三版
全体を見て考え、判断する。
シンプルですが、実行するにはある程度の経験と先を読む力が必要です。
将棋棋士の羽生善治さんが自身の著書やインタビューなどで大局観によく触れています。経験を積むことで、短時間で状況を判断し、最善の手を見つけられるようになる。
経験が少ないうち、特に若い時は無駄に多くのパターンを読んだり、リスクの高い手でも思い切って指す傾向があるようです。
逆に、経験を積むことで思い切った手を指せなくなるデメリットもある...
とはいえ、よく考えずに勢いで指すのは良くないと、羽生さんは著書で述べています。
将棋以外にも当てはまりそうですね。
しかし、最近2つのタイトルを獲得した藤井聡太さんはどうでしょうか?
話題になったのは、棋聖戦第2局で打った一手が、コンピュータ将棋選手権で優勝したソフトが6億手も読んで導き出した最善手だったということです。
藤井さんがそんな膨大な手数を読んだのではなく、現状を見て形勢を判断し、良いと思える手順を短時間で絞り込んだのでしょう。
普段の研究や得意の詰将棋で、他の棋士を圧倒するほどのパターンを読んできたことで、優れた大局観を身に着けたのでしょうか?
この辺りは、後半で再考してみます。
実は、4年前に羽生さんの著書を読んでいたとき、自分の研究にも当てはまることが多いなと感じました。
考えてみると、気付いていないだけで普段から「大局観」を使っていたんです。
例えば「こんな強度と性質を持ったゲルを作りたい」となったとき、瞬時に適切な材料や溶かす溶媒・溶かし方などが数パターン思い浮かびます。
その時点で不適切だと判断し、多くの材料や作製方法を除外しているんですね。それは積み上げた経験や知識からくるもので、まさしく大局観だなと思いました。
時には、一瞬で最適な材料と方法を一つに絞り込むこともあります。
ほとんど知見の無い実験でも、
「まず、この材料と方法(プランA)でやってみて、その結果が目的と違えばプランBとCを試してみよう」
というふうに、ある程度の方針を立てることが出来ます。
一方で、初期に選択肢を大幅に狭めることはデメリットにもなります。
想定外や常識外の可能性を排除してしまっているかもしれないんですね。
これは羽生さんも著書で指摘しています。
そのデメリットを知り、意識した上で大局観を使いこなす必要があると思います。
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