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クラゲの化学

英語でJelly fish(漢字で水母、海月)。
透明で柔かい見た目は、まさにゼリーという感じです。
実際、その体はゼラチン質なんです。

クラゲの成分は95%以上が水で、その他の固形分は5%以下です。
固形分はタンパク質が30%程度、糖質と脂質が2%程度含まれています。
残りは灰分(ナトリウムやカルシウムなどの無機物)です。
寒天などのハイドロゲルの多くは95%以上が水なので、ハイドロゲルが生き物になったような存在ですね。

クラゲはサンゴやイソギンチャクと同じ刺胞動物に含まれます。
そして、なんとプランクトンの一種でもあります。
プランクトンは浮遊生物なので、遊泳能力を持たず、水中を漂っているだけです。
つまり、クラゲは遊泳能力を持っていません。
沈みそうになると反射的に傘を動かして泳ぎますが、水の流れに逆らうことは出来ませんし、あまり長続きしません。
若干の遊泳能力を持っているとも言えますが、無いに等しいです。

代表的なクラゲはミズクラゲですね。
写真や水族館でよくみかけます。
ちなみに、盆になって大量発生するのはアンドンクラゲです。

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ミズクラゲ(日本で最もよく見られ、ヨツメクラゲとも呼ばれます)

浮遊生物で脳も心臓も無いクラゲは、本当に海の中を漂っているだけなんです。
針で刺すのはクラゲの意思ではなく、異物に接触すると自動的に針が出るようになっているためです。
クラゲのように神経細胞が体全体に張り巡らされている神経系を、散在神経系と呼びます。
イソギンチャクも同じで、脳を持たない散在神経系の生き物です。

水族館でクラゲの水槽をよく見ると、水流が作られています。
水流がないとクラゲは沈み、そのまま衰弱して死んでしまうんですね。

また、クラゲにはオスとメスがあります。
卵から孵化した幼生はポリプと呼ばれるイソギンチャクのようなものになり、
分裂してエフィラ幼生になります(この幼生は泳ぎます)。

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すみだ水族館HPより引用(http://www.sumida-aquarium.com/column/animal/20170410/74/)

成長すると大人のクラゲになります。

クラゲは3000種類以上いると言われており、
中には前述した特徴が当てはまらないクラゲもいます。
クシクラゲ類がそれに当たります。
刺胞動物のクラゲと違い、針を持ちません。
しかも、雌雄同体でポリプの時期が無く、触手を持たないものが多いです。
オビクラゲやフウセンクラゲ、ウリクラゲ、カブトクラゲがそうで、水族館で見ることが出来ます。

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ウリクラゲ(新江ノ島水族館HPより引用:http://www.enosui.com/diaryentry.php?eid=04151)

また、サカサクラゲという変わったクラゲも居ます。
その名の通り、逆さまです。笑

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ペットナビHPから引用(https://petraku.com/sakasakurage-9631.html)

このサカサクラゲ、褐虫藻という藻類の仲間が体内に居て共生しています。
褐虫藻はサカサクラゲの出した二酸化炭素で光合成を行い、光合成で出来た栄養をサカサクラゲにあげています。
実は多くの水族館で見ることが出来るので、機会があったら探してみて下さい。

そして、2008年度のノーベル化学賞で話題になったオワンクラゲ。
刺激を与えると発光します(お椀の形をしているのでオワンクラゲです)。

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緑色蛍光タンパク質を持っていて、これによってオワンクラゲは光ります。
このたんぱく質を分離精製し、遺伝子の働きを調べる事などに応用した成果がノーベル化学賞となりました。
(下村脩、マーティン・チャルフィー、ロジャー・Y・チエンの3氏が受賞)

最後に、食べられるクラゲについて。
食用とされているクラゲは極めて少なく、10種類以下です。
ビゼンクラゲ、ヒゼンクラゲ、エチゼンクラゲなどが代表的です。
エチゼンクラゲは稀に大量発生して漁業に被害を与える大型のクラゲです。
一方で、エチゼンクラゲを好んで食べる魚介類も居て、豊漁となることもあるそうです。

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エチゼンクラゲ:Wikipedia


食べるときは主に塩漬けにするそうですが、食感はともかく、クラゲの種類で味に違いはあるんでしょうか?

ゲル生命体と言っても過言ではないクラゲ。
その種類の多さと変わった生体には驚かされます。

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Gelate(ジェレイト)
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