私の村上春樹
イタリアでのこと。
アッシジに向かう電車で本を読んでいた。一息ついて、表紙の村上春樹という字を眺めていたら、うれし涙が出てきた。急に村上春樹への愛が溢れてきたのだ。
本当に、この世に村上春樹がいてよかった。
同じ時代に生まれてよかった。
親しい友達よりも身近で、個人的な、私の村上春樹。
たくさんの人が村上春樹を知っているけど、みんなそれぞれ違う村上春樹なんだろう。それぞれの中で形成された、個人的な、村上春樹。
村上春樹の小説はもちろん不変だけど、読む側の人生、経験があって、それがプラスされて、その人独自の小説になっていく。
私は私の『スプートニクの恋人』が好き。『ねじまき鳥クロニクル』が好き。
村上春樹の文章を圧倒的に信頼していて、それに自分の世界がプラスされて、自分まで高められる。自分に対する卑下が、緩和される。自分がうまく言い表せないことを完璧に表してくれるから、自分が賢くなった気がする。
なんかずるいけどこれが読書だな。
と、2004年7月12日の日記に書いてあった。
この時の感動の涙をまだ覚えている。
なんで急にスイッチが入ったんだろ?
疲れてたのかな。
旅先で日本語が足りなかったからかな。
村上春樹と同じ時代に生まれたことは本当に嬉しいことです。