見出し画像

『島とクジラと女をめぐる断片』アントニオ・タブッキ

読了後から私の意識はギリシャに飛んでしまって、なかなか戻ってこない。

しかしこの本の舞台はギリシャではない。ポルトガルの西にあるアソーレス諸島だ。
それは承知なのだけど。その意識の流れは以下のとおりです。

まずこの本の衝撃を受けた箇所。主人公が旅行中に、村人のブラスバンドの隊列に遭遇する。その隊列はある青い窓の家の前で止まり、出てきた老人と指揮者が握手をし、少女がキスをする。何の儀式かは分からないが、その楽隊が演奏していたのが何と、ワ・ル・ツ。哀愁たっぷり。たちまち映画のような情景が浮かぶ。その景色から私が思い出したのは村上春樹の『スプートニクの恋人』です。これはうろ覚えですが、主人公が愛する人を助けに訪れたギリシャで、しかし会うこともできず帰国が迫ったある真夜中、山の方から流れてくる音楽を耳にする。
かすかに、でも確かに聞こえてくる音楽。ブラスバンド。主人公は意を決して山に向かう。すると音楽は消える。
これを思い出した。
そしてギリシャといえばゾルバ、「その男ゾルバ」。ちなみにゾルバ系はタイプです。

そんなわけで私はもう異国情緒の中でほわわんと夢遊している。

ついでにこの本の主人公は私の想像ではフィリップ・ヴィンター、ヴィム・ヴェンダース監督の映画「都会のアリス」の主人公なので、ドイツとオランダの空気も混じっている。

ギリシャ行ってみたい。港に面したレストランで、屋外の席でレモネード飲みたい。
レモネードはそんなに好きではないです。