スイス・ドイツ漫遊記 2日目 グリンデルワルド~ユングフラウヨッホ
昨晩は夜更けに到着したので、街の名前がインターラーケンということ以外、自分がどこにいるのかも解りませんでした。さて、ビル街なのか草原なのか、明かりの漏れる窓のカーテンをドキドキしながら開けてみると、朝焼けでピンク色に染まった雪山が森の向こうに見えるじゃあありませんか。
これこれ! ガイドブックに載ってる感じの風景がいきなり目に飛び込んできました。ザ・アルプスといった景色に感動で打ち震えます。ああ、スイスに居るのだなぁと絵画のような景色に見とれておりましたが、すでに朝食の時間が迫っていたので、急ぎ身支度をして7時に朝食会場へ。朝食はバイキング形式です。
テーブルにはハムやらチーズやらが所狭しと置かれております。シリアルコーナーは充実しており、当然ながらお粥やみそ汁はありません。まさにスイスの朝食を実感します。
スイスチーズとハムとソーセージを皿に乗せ、さあ優雅に朝食をと思っていたら、添乗員のK藤さんが「8時にはバスが出ますよ急いでください」と叫んでいます。それを合図にツアー客8人が駅そば並みのスピードでハムとソーセージを掻き込みます。そう、今日は忙しいのです。バスとロープウェイと登山鉄道を乗り継いで、ユングフラウヨッホまで行くのです。アイガー・メンヒ・ユングフラウの3山が連なる風景はここスイスの見どころの一つです。ヨッホとは鞍部という意味で、ユングフラウヨッホはユングフラウとメンヒの間にあります。今日はそのヨッホにあるスフィンクス展望台まで行く予定です。
本日の山頂は氷点下ですとの情報があったので、ダウンジャケットを抱えてバスに乗ること1時間、アイガー麓のグリンデルワルドに到着しました。そこからアイガーエクスプレスというロープウエイで一気に2320mのアイガーグレッチャー駅まで登ります。
その間、わずか15分。
そして、アイガーを刳り貫いてトンネルを通した登山鉄道にここで乗り換え。途中、3160mのアイスメアという駅に止まります。そこの展望窓からはアイガー氷河が一望できるのですが、停車時間が5分間だけなので人波をかき分けて2-3枚写真を撮っておわり。忙しないことこの上なしです。
終点のユングフラウヨッホ駅までは30分。あっという間に標高3454mに到着です。ヨーロッパで一番高い駅、Top of Europeと壁に書かれております。
そこからエレベータでスフィンクス展望台まで登ると3571mとなり、ほぼ富士山9合目。流石に歩くと息が切れます。
メインの展望台からは大きな山が正面に見えております。
ユングフラウヨッホの看板もあり、見ず知らずの外人にスマホを渡して写真を撮ってもらい、ほくほくして写真撮影を済ませて階下へ。矢印通りに進むとアイスパレスという氷の宮殿。世界遺産のアレッチ氷河の一部をくり抜いて作った施設は壁も床も氷むき出しです。
アイスパレスを出ると、土産物屋のあるフロアに戻る階段とプラトーテラスという雪原に出るエレベータの2択を迫られます。よく解らないけど、折角なのでエレベータに乗ってプラトーテラスへ。すると、あれ、ここにも目の前に大きな山があるじゃあないの。調べてみると、こちらがユングフラウで先ほど一生懸命撮っていたのはメンヒという山でした。危うくユングフラウを見逃すところでした。
急いで山を写真に収めて左に目をやると、クッキリとした2筋の黒いモレーンとともに世界遺産のアレッチ氷河がきれいに見えます。
予報では雨雪とのことでしたが、なんと快晴。もっともっと見たかったのですが、この旅の特徴のひとつである厳しい制限時間のため早期撤収、滞在時間はわずか40分です。
お土産を物色する暇もなく、ユングフラウヨッホからアイガーグレッチャー駅まで登山鉄道で下山して、ここからクライネシャイデックまでハイキングです。といってもすべて下りですけど。前日まで雪が3日間降っていたとのことで、景色はほぼ雪原。目が焼けて白内障のリスクが上がるけれども、二度と見られないのでサングラスは使わず肉眼で目に焼き付けます。
途中、アイガー北壁を正面に見えるスポットも通りながら、無事クライネシャイデックに到着してここで昼食。皮の硬い巨大なソーセージが供されました。
ツアーなので食事は決まっていますが、飲み物は各自でオーダー。食事が終わるころに財布を持った店員さんが集金にやってくるシステムです。これはツアーの全工程で共通事項でした。
食後はクライネシャイデックからグリンデルワルドに電車で移動して、この旅唯一と言っていい自由時間になりました。グリンデルワルドはアイガー地方観光の拠点となっており観光客で賑わっております。夕食の時間まで2時間半。カフェで時間を潰すのはもったいないと、街の散策をすることにしました。端から端まで歩いても30分程度の小さな街です。あちこちのドイツ語の看板をスマホで撮ってグーグルで翻訳して、「やるやんグーグル先生」と驚きながらの街歩き。途中、ポケモンGoを嗜みながらスイスを満喫です。
さて、夕食前に晩酌のウイスキーと水でも買おうかと駅前のCO-OPへ立ち寄ります。
ここで事件が発覚しました。レジの列に並んで、さあお会計をと思ったら、なんとショルダーバッグのファスナが2個とも全開! 一瞬で血の気が引きました。「やられたっ!」恐る恐るバッグ中を見てみると、あるはずの財布がない……。さあ、大変! 財布の中身は20スイスフランとホテルのカードキーとクレジットカードが入っていました。幸い、パスポートはホテルのセキュリティーボックスに入れていたので大丈夫でした。しかしながら、カードはまずい。たまたま同じレジに並んでいた添乗員のK藤さんに相談。カード会社に連絡することになったのですが、これが一筋縄ではいないのです。非常に電波状態がよくない。スマホで楽天のカード紛失対応を検索しても動かないのです。よく見ると、電波表示のところに見たことのないH+の表示が。後で調べるとどうやら電波の質の問題で、4Gよりも遅い通信速度の電波だったのです。スマホを再起動してもネットも電話もつながりません。
仕方がないので警察へ行くことにしたのですが現地の派出所は5時前だというのにすでに閉まっております。ピンポンしても一向に返事がなく、緊急呼び出しの赤いボタンを押して事情を説明すると、そんなものは明日来てくれとのつれない返事。容赦なく通話は切られます。緊急呼び出しスピーカーに一通り日本語で毒づいて、焦る気持ちを抑えながら街中をウロウロして電波状態の良いところを探します。街中を歩きながらも、道行く人全員が犯人に見えます。動く疑心暗鬼です。その時、突然スマホがコールセンターにつながりました。しかし、様子がおかしい。番号表示の186をつけて電話してくれとの自動アナウンスが流れるのです。厭な汗をかきながら国番号の後に186を入れるのですが今度は電話自体がつながりません。当たり前です。外国からの電話なので基本的に非通知になるのです。その後、また一切繋がらなくなりました。
この時点で、午後6時少し前。ツアー添乗員のK藤さんは残る6人のツアー客の夕食の案内のために一旦我々から離脱しないといけないのですが、我々もどうせ電波を探して街を歩かないといけないので食事会場のレストランに同行しました。
食事する気も起きなかったので、店に入らず店の前の幹線道路で日本に電話をかけてみました。すると、人生何が起こるか解りません。なんと夕食会場のレストランの前の道路が一番通信状態が良かったのです。まさに塞翁が馬、グリム童話の「青い鳥」です。でも、楽天のカード盗難ヘルプデスクは、何度かけても186をつけて電話してくれの一点張りです。
これで万事休すかと思いましたが、少し前に妙なSMSメールが届いていたことを思い出しました。街中を歩いているとき、まさか財布をすられているなどと露ほども思っていなかったとき。「カード利用に関して確認したいことがあります。下記へアクセスしてください」というSMSが届いていたのです。ですが、アクセスしろというサイトがrk10という楽天をもじったどう考えても怪しいアドレスだったので速攻で無視していたのです。もしかしてあれはスリグループがカードを使ったために来たメールなのかしらんと思いSMSを開きましたが受信箱にはありません。やはり削除済でした。しかし、もうこれしか頼るものがないので、SMSのごみ箱を検索して慎重に文書を復活。
その怪しいメールに一縷の望みをかけてアクセスすると、新たな電話番号が表示されました。番号をメモする手が震えます。祈るような気持ちで電話すると、「はい、お待たせしました」という日本語。地獄に仏とはこのことです。急ぎ事情を説明すると、そうですねこの1時間のあいだにルーマニアから8件のアクセスがありました。60万相当の自転車部品とか110万相当のビル清掃会社の商品とかです。お買い求めに心当たりはございませんかと聞かれたのですが、もちろんそんなものはございません。食い気味に「無いです」と答えると、それらはセキュリティーで全部ブロックされておりますが、1件だけ24,000円相当の品だけがセキュリティー通過しておりますと。でもそれも保険で何とかなりそうなので、書類を送りますねとのことでした。その後、報告書に必要と思われる、現場の詳細や状況、カバンや財布の形などなどを事細かく説明し、これで盗難に関してはすべて終了ですというありがたい言葉が。「ありがとうございます。助かりました」とお礼を述べると、この電話で新しいカードを作成できますがいかがいたしますかと。しばらくカードは見たくもない気分でしたが、今後ないと困るので作成することに。いやあ、日本の会社の親切さには頭が下がりました。現地時間午後5時すぎということは日本の午前1時すぎです。楽天カード様様です。帰国後、このエピソードを披露して楽天カードの伝道師になったことは当然の成り行きです。
そして、この旅行記。#楽天 つけてます。
なんだかんだでカードの処理が終わったら午後6時、夕食はのどを通らず失意のうちにバスでインターラーケンに戻ります。そしてこの日から、私のショルダーバッグには安全ピンが付きました。
明日は、シャモニーからモンブラン観光に行きます。