温泉ソムリエの温泉漫遊記 有馬温泉 その2
みなさん、温泉はお好きですか。
有馬温泉編、その2です。
温泉街で時間を潰して、ようやく亀の井ホテル有馬にチェックインできました。
フロントでチェックインした際、受付の人が若干不思議そうに「バリアフリーのお部屋のご予約ですね」と言っていたのですが、部屋の前に立つとその意味が解りました。
慌ててネット予約したので、「バリアフリーの部屋、すなわち段差のない部屋なのね」という程度の認識でポチッとしていたのですが、これが痛恨のミスでした。
部屋の前に着くと。ん?なにかいつもと趣が違う……。ドアが引き戸でした。何故引戸……?。不思議に思いながらカラカラとドアを開けると一瞬で謎が解けました。広い入口に広いスペース、入口脇のトイレのドアも引き戸。そして奥には低すぎず高すぎずの腰掛けやすい小上がり席。
そうです、ここは車椅子など要介護専用の部屋だったのです。したがって、ベッドは本気の介護ベッド……。
ふかふかベッドを期待していたのに、体が沈まなく起き上がりやすいカチカチ仕様。
気分は入院……。
テンションだだ下がりです。
もしやと思ってトイレを見てみると、こちらも本気の介護仕様。なんと天井には介護者吊り下げ用のレールまで付いています。
しかし、自分で予約してしまったものは仕方がない。ふかふかベッドはお預けとしたものの、リクライニング機能を活用してテレビを見る事にしました。
しかーし、今回の目的はふかふかベッドではないのです。温泉です。なんと、この亀の井ホテルは有馬でも数少ない自家泉源を所有しているのです。
有馬温泉全体の湧出量は、日々変化するのですが一般には900リットル/分と言われております。そして金泉と呼ばれる高温の塩化物塩泉はその一部であり、自家泉源を持たない各宿泊施設では、割り当てられた少ないお湯を循環濾過して消毒し、加水加温して調整した上で再利用せざるを得ない状況にあります。
そんな厳しい有馬温泉にあって、亀の井ホテルは自家泉源を有している数少ない宿泊施設なのです。
ホテルの3階に愛宕山泉源があります。湧出量は自噴の58リットル/分。湯船の大きさを考えると充分です。源泉が96度あるので加水はしているものの循環濾過はなし。
そしていざ入浴。大浴場は4階にあります。廊下を進むと、明らかに昭和の香り漂う大浴場のゲートがあります。泉源の有り難さを知らずにやってくると、オシャレ感ゼロの赤のれん装着の入口にげんなりするかもですが、温泉ソムリエ的にはここの廊下は見どころ満載です。泉源の説明あり、有馬温泉の成り立ちの説明あり、そして入口の右側には自慢げに上掲の温泉成分分析表が貼られています。
廊下の説明書きで満腹になって、いざ入浴。
脱衣所は比較的綺麗です。
肝心の湯船は残念ながら内湯のみ。かなり濃いお湯で湯あたりしやすいのでサウナは不要かと思いますが、露天は欲しかった所です。しかし、長湯による湯あたり予防には内風呂だけの方が良いのかも。循環濾過はしていないので吐出口からのお湯を舐めてみましたが、非常にしょっぱかったです。
湯あたり予防のため5分ほど浸かったらいったん出て休憩。そしてまた浸かるという教科書的な入浴法をしていても20分程度で疲れてきたので上がりました。
夕食は食堂で。最近では脂物に滅法弱くなり、簡素な料理で良かったのですが、年末だからなのか一番安いコースでも脂満載の薄切り神戸牛の陶板焼き付き。2枚しか食べていないのに胸やけ確定。そして慌てて予約したせいか、何故かカニの食べ放題も付けてしまっていた様なのですが、先日日本海に行ったところなので、お代わりはせず。
食事をしていると、車椅子のおばあちゃんを連れた一行がやってきてました。ああ、我々がバリアフリー部屋を占拠したため迷惑かけたかなと思っていたのですが、その一行は席に着くなり脂身たっぷりの厚切り神戸牛をジュージュー焼き始め、高校生の様にガッツいていました。多分、迷惑かかっていないと思います。
知らずに泊まるとレトロな設備にげんなり。予備知識を入れてから泊まるとお宝ホテル。
御所坊、月光園、古泉閣など泉源自慢の超高級旅館に比べると、施設はしょっぱいし料理も肉任せですが、温泉は負けていないと思います。
やるやん、亀の井ホテル。