Z世代のアメリカ
本書はZ世代という切り口からアメリカを描いている。Z世代とは1997年から2012年の間に生まれた若者たちで、アメリカの人口の約2割を占めている。いまアメリカが直面している大きな変動も、Z世代を抜きに語ることはできない。
Z世代の姿勢や考え方は、上の世代のアメリカ人と大きく異なっている。たとえば、Z世代はアメリカの対外介入に否定的だ。ある調査で「中東・アフガニスタンでの戦争は時間、人命、税金の無駄遣いであり、自国の安全には何の役にも立たなかった」と回答したZ世代は7割に達した(本書103頁)。彼らはアメリカによく見られる万能感と一線を画しており、アメリカ人であることを「非常に誇りに思う」と回答したのは、18歳から29歳までの世代では20%にすぎなかった(45頁)。
対中感情も興味深い。65歳以上の91%が「中国を好ましくない」と回答する一方、18歳から29歳では74%まで下がる。「米中は貿易や経済政策についても協力できない」と回答した人の割合も、65歳以上だと51%にのぼるが、18歳から29歳では27%となっている(95頁)。
最も顕著なのはやはり中絶をめぐる姿勢だろう。18歳から29歳の48%が「いかなる状況でも中絶は合法であるべきだ」と回答し、「中絶は違法であるべきだ」と回答した11%を完全に凌駕している(207頁)。
昨年の中間選挙で共和党が大勝すると見られる中、民主党が善戦したのも、Z世代の投票によるところが大きい。18歳から29歳の投票率は30%前後で、歴史上の中間選挙で2位の高さだった。この世代は他の世代と比べて圧倒的に民主党支持である。ペンシルベニア州の上院選で民主党候補が共和党候補に僅差で勝利したが、18歳から29歳の若者の7割超が民主党候補を支持していた(215頁)。
Z世代が社会の中心になるころには、アメリカは現在とまったく違う姿になっているだろう。今後のアメリカとどう付き合うべきかを考える上でも、本書は必読書と言えよう。(編集長 中村友哉)
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書 籍:Z世代のアメリカ
著 者:三牧聖子
出版社:NHK出版