喜歌劇《美しきエレーヌ》本作の基となっている、ギリシャ神話「パリスの審判」
《美しきエレーヌ》は、古代ギリシャの詩人ホメロスの『イーリアス』で有名なトロイア戦争の発端となった、「パリスの審判」のエピソードが基になっている。ここでは、その内容を簡単にご紹介しよう。
――神々の結婚式に招かれなかったことに憤慨した女神エリスは、その宴席に黄金のリンゴを投げ入れる。「最も美しい女神へ」贈られたこのリンゴを巡って、ヘラ(ジュノー)、アテナ(ミネルヴァ)、アプロディテ(ヴィーナス)の三美神が争いを起こす。そこで白羽の矢が立ったのが、トロイアの王子パリスである。彼は三美神のうち誰が一番美しいかを決めることになったのである。三美神はそれぞれ、支配の力(ヘラ)、勝利の力(アテナ)、最も美しい女性(アプロディテ)を見返りとしてパリスに与えると約束する。パリスが選んだのはアプロディテ、愛と美の女神ヴィーナスであった(ここまでの話は、第1幕の〈パリスの審判〉で語られる。また、第1幕フィナーレでパリスの真の姿が明らかになったとき、エレーヌが「リンゴのお方」と叫ぶのは、エリスが投げ入れた黄金のリンゴの話を踏まえている)。
そうして「最も美しい女性」を手に入れるためにパリスはスパルタに向かう。しかし、その女性はスパルタの王メネラオスの妃ヘレネ(エレーヌ)、つまり、人妻だったのだ。パリスはヘレネを誘惑し、ついに彼女をトロイアへと連れ帰ってしまうのであった――
と、ここまでが今回の《美しきエレーヌ》のなかでも描かれるお話。その後、ヘレネを誘拐されたことに憤慨したメネラオスは、ギリシャの王たちとともに、ヘレネ奪還のためにトロイアへと向かう。かの有名な「トロイア戦争」はこうして始まるのである。
木内 涼(東京藝術大学/音楽学)
【公演情報】
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東京芸術劇場コンサートオペラ vol.9
オッフェンバック/喜歌劇『美しきエレーヌ』
演奏会形式/全3幕/フランス語上演/日本語字幕付
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日時:2024年2月17日(土)14:00開演
会場:東京芸術劇場コンサートホール